"義母に逆らった妻を閉じ込めた夫が、翌朝失ったもの" 第11話
警察官の鋭いが廊に響き渡った。久美子は「私が母親です! 嫁が嫌がらせをしてるんです!」と泣き叫びながら警官に掴みかかろうとしたが、即座に腕を制圧された。
菜緒は静かに通話を切り、デスクの引きしから松田弁護士の名刺を取りした。
もはや、状酌量の余は完全に消えっていた。での領域に踏み込み、奪い取ることが当然だと信じ切っている者たちに対し、法がすべき鉄槌の準備は、すべてっていた。
警察署の講堂でわれた事聴取は、夜遅くまで及んだ。
松田弁護士のち会いのもと、菜緒は被害者として静に調の作成に応じた。方の久美子と直は、建造物侵入未遂および器物損壊未遂の容疑で厳な取り調べを受け、元引受として呼びされた浩司は、警察署の廊でを抱えて崩れ落ちていた。
夜、活全課の取調からてきた久美子は、数の猛々しさが嘘のように見るもなくやつれ果て、警察官に両脇を支えられながら歩いていた。
「……浩司、どうにかして頂戴……私、科者になっちゃうの……?」
泣き崩れる母親の姿を見ても、浩司にはもはや慰める気力すら残っていなかった。警察からは、連帯保証の類偽造に関する詐欺容疑についても厳しく追及され、会社の事部からは翌朝の緊急査問委員会へのを命じる話が鳴り響いていたからだ。
広告
翌週の曜、松田法律事務所の会議で、婚および損害賠償に関する最終調印の席が設けられた。
会議のテーブルを挟み、菜緒と松田弁護士が着席する。対面に現れた浩司は、わずか週のに頬がこけ、無精髭が伸び放題になった鬱な表で座った。その隣には、浩司が急遽依頼した私選弁護士が、バツの悪そうな顔で控えている。
「それでは、双方の事項について最終確認をいます」
松田弁護士がクリアファイルから公正証の原案を取りし、卓に滑らせた。
「第に、浩司氏と菜緒さんの協議婚の成。本付で婚届を提すること。 第に、浩司氏による菜緒さんへの法為——すなわち、自宅トイレへの法監禁、および菜緒さんの名義を冒用した連帯保証契約の偽造——に対する慰謝料として、300万円の支払い義務を認めること。 第に、族カードの私流用分、および直氏の債務保証によって菜緒さんにじた損害の補填として、150万円の即返還。 第に、ワンルームマンションの完全な所権確認と、関係者全員の接禁止に関する誓約」
箇条きにされた求を読みげられるたび、浩司の顔が苦痛に歪んだ。
「……慰謝料300万なんて、払えるわけがないだろ。俺、会社を諭旨解雇されることになったんだぞ……退職だって雀の涙だ……」
広告
浩司が掠れた声で願するように呟いた。
菜緒は徹な差しを夫に向け、静かにをいた。
「払えるかどうかは、私のったことではありません。あなたの名義の預残、それにあなたが乗っている輸入の売却益を差し押さえれば、全額の回収が能であることは松田先を通じて確認済みです」
「菜緒……頼むよ」浩司がテーブルに両をつき、涙を浮かべて懇願してきた。「13、緒に暮らしてきた仲じゃないか! 俺が悪かった! 母さんとも直とも縁を切る! おの言う通りにするから、やり直してくれ……!」
「やり直す?」
菜緒の唇から、乾いた笑いが零れ落ちた。
「浩司さん、あなたが今泣いているのは、私に申し訳ないからではありません。自分の勝な甘えのツケがすべて自分にね返ってきて、逃げを失ったから泣いているだけです」
菜緒はバッグから、あの夜のメモとスマートフォンの画面をプリントアウトしたを取りした。
「あなたが母さんに送ったメッセージを覚えていますか? 『しく言えば折れるよ』……あなたは最初から、私をとして尊していなかった。自分の母親の嫌を取り、弟を養うための、ただの『便利な具』として私を扱っていた。13のを盾に取れば、どんな理尽でも私が耐えるとを括っていた」
浩司は言葉を失い、喉を鳴らした。
広告
おすすめ作品
-
完結第14話
私の退職金を奪った家族に、私は何も言わず家を出た
妊娠中の麻衣が13年間勤めた会社を退職すると、夫の竜太は退職金420万円を無断で義母の口座へ送金した。「嫁の金は家のために使うもの」と言う義母。返金を求めた麻衣に、夫は「文句があるなら出ていけ」と告げる。 麻衣は実家へ戻り、保存していた送金記録を持って弁護士に相談する。返還を求められた義母は「預かっただけ」と主張するが、自ら提出した口座明細には、夫の奨学金を返すために動かした60万円の記録が残っていた。 420万円を取り戻しても、麻衣は壊れた信頼まで元に戻ったとは思えなかった。離婚後、娘を産み、かつての職場へ復帰する。誰に許可を求めることもなく、自分で稼いだお金の使い道を、自分の手帳に書き込んでいく。嫁姑|夫婦|金銭問題2.2万字5 45 -
完結第15話
18年間閉ざされた納屋
31歳の美咲は、博士課程を修了したその日、18年間会えずにいた兄・直のことを確かめるため実家へ向かった。両親からはずっと「兄は施設で暮らしている」「会えば不安定になる」と聞かされ、施設名も住所も教えられていなかった。ところが帰り道、近所の女性から思いがけない一言を聞く。「直君、まだ裏の納屋にいるんだと思ってた」。実家へ駆け戻ると、古い納屋の扉には外側から2つの南京錠。窓は布で覆われ、食器と電気コードには最近まで使われた痕跡が残っていた。そして美咲が「お兄ちゃん」と呼びかけると、扉の向こうから2度、確かな音が返ってきた。18年間、両親は何を隠してきたのか――。兄弟姉妹|親子関係2.2万字5 190 -
完結第15話
妊娠中の娘が逃げ帰った夜、大富豪の母が動いた
妊娠8か月の娘・はるかが、顔に傷を負い、母エリコの家へ逃げ帰ってきた。病院では新しい肋骨の骨折に加え、以前の骨折痕も見つかる。夫・匠による暴力は、一度きりではなかった。 匠は巨大企業グループの創業家の一員。だがエリコはその地位にひるまず、娘の安全を確保し、診断書を残す。同時に信頼する会計士へ調査を頼むと、匠一家が関わる財団に巨額の不正な資金移動の疑いが浮かび上がった。 報道を受けても疑惑を否定し続けた匠は、緊急会見の最中、はるかへの傷害容疑で逮捕される。さらにグループの資金問題にも捜査が及び、権力を盾にしてきた一族は追い詰められていく。 母の行動が事態を動かす一方、すべての始まりにあったのは、はるかが自分とお腹の子を守るため、あの家から逃げ出した決断だった。因果応報|人生逆転|嫁姑|絶縁|親子関係|修羅場2.3万字5 800 -
完結第16話
「親呼んでみろ」新人の父を見た部長
新人歓迎会の席で、営業部長の佐藤は新入社員・健一を役立たずと罵り、頭からビールを浴びせた。さらに町工場で働く父親まで侮辱し、「悔しかったら親をここへ呼んでみろ」と嘲笑する。 健一は騒がず、父へ短い連絡を入れた。やがて現れたのは、佐藤の会社を買収した神崎ホールディングスの会長・神崎英治。健一は会長の息子であり、腐敗した子会社を調査するため、身分を伏せて現場へ入っていたのだ。 健一が密かに集めていたのは、佐藤が妻のダミー会社へ総額1億8,400万円を不正送金していた証拠だった。部下の由美へ罪を着せようとした偽造書類も暴かれ、後ろ盾だった役員も失脚。佐藤夫妻はその場で破滅へ追い込まれる。 横暴な部長がすべてを失う一方、長年苦しめられてきた由美は統括部長へ抜擢され、職場は再生していく。肩書や家柄ではなく、弱い立場の人へどう接するかが人間の本当の価値を決める――静かな証拠集めから始まる痛快な職場逆転物語。職場逆転|怒り|修羅場2.4万字5 665 -
完結第13話
黒い着物の誓い
「お前んち、ヤクザだっけ?w なら今すぐ呼んでみろよ」 同窓会の席で、私は昔のいじめ加害者に笑われました。 祖母の形見の黒い着物を見て、 「極道の真似事かよ」 そう言った男は、私の胸元に酒を浴びせたのです。 周囲は笑っていました。 10年前、教室で机に落書きをされた時と同じように。 私は怒りを抑え、ただ1本の電話をかけました。 「5分で来てください」 すると―― ホテルの前に現れたのは、30台の黒塗り高級車。 そして、誰もが知るはずのない私の本当の立場を前に、笑っていた同級生たちは凍りつきました。 しかし、そこで終わりではありませんでした。 床に這いつくばって謝罪する男の背後には、 母親が隠していた「400万円の借金」と、10年前の雨の日に繋がる秘密があったのです。 なぜ私は、私を傷つけた相手を救うことになったのか。 そして、あの日の1万円が、10年後に大きな運命の変化を起こすことになるとは――人生逆転|怒り|真実|修羅場1.9万字5 38 -
完結第15話
300億円の恩返し
結婚式当日、白いタキシードを着て新婦を待っていた琢磨に告げられたのは、「結婚は最初からドッキリだった」という言葉。銀行の創業家である新婦の家族は、彼を笑い者にし、その様子まで動画に撮っていた。 駆けつけた妹の未令は、兄を見下す銀行一家の前で財務担当者に電話をかける。彼女は世界各地で事業を営む企業グループの創業者で、その銀行には約300億円を預けていた。無名だった未令の夢を信じ、借入れの保証人になったのも琢磨だった。人生逆転|兄弟姉妹|真相|修羅場2.2万字5 80 -
完結第14話
臨月の私を追い出し、新居を売ろうとした義母
臨月を迎えた優香は、夫の出張中、義母から「里帰り出産なら、もう戻らなくていい」と実家へ追い出される。しかも自宅には義妹一家が住み着き、子ども部屋は勝手に美容サロンへ改装されようとしていた。 さらに、不動産会社が持参した資料から、共有名義の自宅が4,680万円で売りに出されていることが発覚。義母たちは優香夫妻の署名と印鑑を無断で使い、売却益を義妹夫婦の借金返済へ回そうとしていたのだ。 出張先から急きょ戻った夫・健太は、玄関で《売却物件》の内覧票と偽造された委任状を発見する。妻を守れなかった自分の甘さを認めた健太は、母と妹へ退去を命じ、優香とともに警察や弁護士、不動産会社へ相談。家と財産、そして生まれてくる娘の生活を取り戻していく。 「家族だから」という言葉で他人の人生を支配する義母たちに、明確な境界線を引いた夫婦。家とは、鍵や名義だけではなく、そこに住む人が自分の意思で未来を選べる場所なのだと描く、家族再生の物語。怒り|嫁姑|真相|修羅場2.1万字5 751