"「お前には継がせない」と言った父が、最後まで守り続けたもの" 第7話
ただの【怠】だ!」
「だ、黙れ……! 若造が……親に向かって……!」 源が顔を真っ赤にして拳を振りげようとした。 しかし、激昂した臓が鳴をげ、元がガクリと崩れ落ちた。
「お父さんッ!」 「父さん!!」 健と郎が同にびし、倒れ込む源の体を抱き止めた。
に膝をついた郎の腕のに、父の痩せ細った体が収まる。 軽かった。にをたよりも、さらに回りさくなった父の骨の触。 荒い息を吐きながら、源は郎のスーツの襟元を、皺だらけので々しく掴んでいた。
「……いち……ろう……」 「喋るな、親父! 健、布団へ運ぶぞ!」
兄弟で父を抱えげ、奥の仏の布団へと寝かせた。 母のフミが借の当てがつかずに泣きながら帰宅したのは、それから分のことだった。
その夜、台所のちゃぶ台。 郎、健、そしてフミのが、苦しい沈黙ので向きっていた。 隣の部からは、父の規則な、だが苦しげな寝息が聞こえてくる。
「……郎」 フミが涙を拭いながら、擦り切れたがまの財布をいた。には、百円札が数枚入っているだけだった。 「今末の形が、万円りないの。これが落ちなければ、渡りになって……このも、このも、全部競売にかけられてしまうわ」
昭の万円。現の貨幣価値にして、数万円に相当するだった。
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方のさな商にとっては、致命な額だった。
郎は無言で内ポケットにを差し入れた。 そして、京のの預通帳と、実印をちゃぶ台のに置いた。
そこには、郎が京の卸問で血の滲むようないで貯め込んできた、万円の数字が記されていた。
「い、郎……これ……」 フミが目を丸くし、震えるで通帳を取りげた。
「俺が京で稼いだだ。……形の万円も、親父の薬代も、全部ここからせばいい」 郎は淡々と言った。
「兄さん……!」 健の目に、再び涙が溢れした。 「ありがとう……! これで、が助かるよ……!」
「勘違いするな、健」 郎の鋭い声が、弟の堵を瞬で断ち切った。 郎の目は、救世主のそれではなく、獲物を狙う徹な実業の目をしていた。
「このは、ただでくれてやるじゃない。……このの『経営権』を、俺が買い取る資だ」
「え……?」 健とフミが息を呑んだ。
郎は腕を組み、の顔をまっすぐに見据えた。 「親父の形を落とし、借を全額清算する。その代わり――から、このの全権は俺が握る。仕入れも、売りも、帳簿も、すべて俺の指図に従ってもらう」
「郎、そんな……お父さんが納得するはずがないわ」フミがおずおずとを挟む。 「お父さんは、自分のやり方に命を懸けてきたなのよ。それを、全部ひっくり返すような真似をしたら……」
「納得しなくて結構だ」
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郎は即座に切り捨てた。 「親父のやり方を続けていたから、形が落ちなくなって倒れ込んだんだろ。……俺は、親父の顔を窺うために戻ってきたんじゃない。このを、旭町商を、巨資本の津波からき残らせるために戻ってきたんだ」
郎はちがり、へとりた。 暗がりの、埃をかぶった噌樽のにつ。
「健。の朝番で、京の会社に退職届を報で打つ。……俺は、会社を辞めてここに残る」
「兄さん……本当にいいの? 京での世を、全部捨てちゃうことになるんだよ……!」 健が駆け寄ってくる。
郎は暗い裸球を見げた。 京の華やかなネオン、最のスーパーマーケット、倍々の料。 すべてが魅力だった。そのまま京にいれば、何自由ないエリートサラリーマンとしてのが約束されていただろう。
だが――。 今、さく縮こまり、それでも「の婆さん」のためにを張って倒れた父の姿を見た、郎の胸の奥底にあった「何か」が、決定に目覚めてしまったのだ。
父のやり方は古い。違っている。 しかし、父が守り続けてきた「ととの結びつき」そのものを、無質な巨スーパーの力で踏みにじらせるわけにはいかない。
(親父。……おが守りたかったものを、俺のやり方で、本物の武器に鍛え直してやる)
「健、の朝に起きろ」
郎は振り返り、鋭く命じた。 「まずは、この汚いの掃除からだ。……佐々商の、本当の戦いを始めるぞ」
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