"消えた写真屋の父が残した一本のビデオ" 第12話
はっていた範囲以を言わなかった。その慎さに由美は救われた。父が恐れていたの持ち主は分からない。瀬の脅しが続いていた証拠もない。だから逃の始まりと、帰らなかったを同じ理由で塗りつぶすことはできない。
父のアルバムには、聞の切り抜きに混じって、由美が学を卒業したの写真館の広告があった。《入学記写真、予約承ります》。父は町のさな聞を取り寄せ、がいていることをっていた。千鶴が本当にの売却へ同したなら、を続けているのはなぜか。由美には、その矛盾を見ないようにした父ののほうが、初の逃より理解しがたかった。
斉藤を訪ねるに、由美は母へ広告を見せた。千鶴は自分が毎費用を払って載せたものだと気づいた。「をけていれば、いつか帰りに見つけてもらえるとってた」。由美は広告の余に印刷された父の鉛の丸を指した。父は見ていた。はい、同じのかりを別の所から見ていたのだ。
藤崎のを受け取ったあと、由美は美佐にも連絡した。彼女は信吾がきていた証拠を聞いて堵したが、の裏に隠れていた自分の映像が、この先どう使われるかそうだった。警察へ証言すれば、黙っていたについても尋ねられる。
広告
由美は、証言するか決めるのは美佐自だと伝え、原本の内容を事にらせた。
美佐は横浜のを休み、由美と緒に警察へった。映像を撮した事と、千鶴へ渡した経緯を、自分の言葉で話した。警察官から、なぜで持ってこなかったかと聞かれると、「がみんな自分の都で黙っていたから、私も黙っていいといたかった」と答えた。
そのの帰り、美佐は由美に、写真の仕事を続けた理由をかした。信吾ので教わったのは、に写す方法だけではない。見せたくないものが写っていても、勝に切り取らず、まず本へ確認することだった。なのに父の失踪に関わる映像では、自分も確認する役目から逃げた。その悔を仕事ので繰り返さないようにしているという。
由美は、自分も今同じ面で勇気をせるか分からないと返した。たとえば写真館の顧客が過を隠したいと望んだとき、記録をどう扱うべきか簡単には決められない。それでも今回、映像を見せる相を族だけで決めず、写ったの話を聞いたことは、と違う選択だった。
消印は神奈川県の川崎だった。古い所録を調べると、信吾が働いたらしい印刷会社が見つかった。千鶴の話とも致する。会社はすでに別の経営者へ渡っていたが、元従業員の帳には《沢》の名が残っていた。
広告
印刷会社で信吾を世話したは、かに姿を消したわけではないと話した。昭63のまで械の備を伝い、その、の写真館を紹介してもらったという。名は沢ではなく、旧姓を使っていた。事を詳しく聞けば仕事を失うとい、周囲には族とれて暮らしているとだけ話していた。
「奥さんと子どもに連絡したがっていた。けれど、誰かに見張られているとっていたんです。のにが何度もまり、娘さんが学をるまでは戻らない、と言うようになった」
由美の卒業を待つ理由は分からなかった。信吾が命を狙われていたのか、気持ちが折れて帰れなくなったのか。も判断できないと言う。彼は父が発に預けたアルバムを渡した。は写真館で撮った族写真ではなく、写真館のと周辺の変化を、毎聞の切り抜きで追った記録だった。
昭63、案は再び変更され、瀬計も予定に入った。瀬のは補償を受けて移転したが、写真館は残った。父が隠れているに、守ろうとしたがち退かずに済む能性がまれていた。それでも信吾は帰らなかった。
アルバムの最に、平成元の瀬の記事が貼られていた。の発事業に協力した商会として表彰を受けた記事である。
信吾はその横に、《斉藤へ渡した資料が役にったなら、それでいい》といていた。
広告
おすすめ作品
-
完結第15話
「柿の木だけは切るな」――庭から出た四人の遺骨
2024年、東京・品川の古い屋敷で、樹齢70年の柿の木が引き抜かれた。その根元から見つかったのは、大人一人と子ども三人の遺骨。20年前、この屋敷では住み込みの家政婦と三人の娘が姿を消し、家主である元校長は「金を盗んで夜逃げした」と説明していた。なぜ彼は、柿の木だけは絶対に切るなと家族に言い残していたのか。捜査を進める刑事・渡辺は、町の人々から尊敬されてきた元校長の過去と、20年間隠されてきた母娘の失踪の真相を追い始める。ミステリー|真実|真相1.7万字5 17 -
完結第12話
昭和35年、上野駅に現れた二人の「ハルコ」
昭和35年春。集団就職列車を迎えに上野駅へ来た食堂の主人は、「山本春子」と呼ばれた少女が二人同時に手を挙げたことに戸惑う。一人は店で働くために上京した春子。もう一人の晴子は、三年前に東京へ出た姉を捜していた。姉は故郷へ帰ったことになっているのに、家族は誰も会っていない。不審に思った主人が古い雇用通知書を調べると、晴子の帰郷を証明する書類に、自分の署名が残されていた。誰が少女たちの名前を使い、何を隠していたのか。集団就職の時代を背景に、書類一枚に翻弄された若者たちの人生を描く物語。時代|歴史|昭和|真相2.3万字5 0 -
完結第15話
「このおばあちゃん、危ない」六歳の孫が見たもの
六十八歳の静子は、夫を亡くしてから一人暮らしをしている。近所の蛇田さんは、毎日のようにお菓子を配って歩く親切なおばあさん。ところが、六歳の孫・小春だけは、なぜか彼女を避けていた。 ある日、三人でスーパーへ出かけると、小春が突然、静子の手を引いて言った。 「ばあば、このおばあちゃん、あぶない」 その直後、店員に呼び止められた蛇田さん。小春はいったい何に気づいたのか。お菓子に隠された秘密と、一人暮らしの老人たちが抱える寂しさを描く物語。人生逆転|祖父母と孫|真実|真相1.6万字5 65 -
完結第12話
卒業写真の空いた席
昭和40年、秋田県の山あいにある中学校。成績優秀な佐伯澄江は、家計を支えるため、高校進学を諦めて東京の縫製工場へ就職することになった。ところが卒業写真を撮る日、澄江は突然学校へ来なくなる。担任の女性教師が見つけたのは、少女が残した一枚の紙だった。そこには、紹介状に書かれた就職先と、母親が指定した送金先の住所が違うと記されていた。さらに、東京で結婚したはずの姉にも不可解な事情があるらしい。卒業証書を手に上京した教師は、少女たちの知られざる働き方と、家族の間に隠された事情を知っていく。時代|歴史|昭和2.3万字5 208 -
完結第12話
最後の伝書鳩
昭和19年、南方の山地。撤退を命じられた部隊は、谷に残された九人の兵士と連絡が取れなくなっていた。 通信兵の関谷清一伍長は、彼らが「未帰還」の一言で片づけられることに納得できない。しかし、無線は故障し、残された伝書鳩は最後の一羽だけ。報告書が敵の手に渡れば、百人以上の仲間まで危険にさらされる。 命令を守るか、九人の居場所を知らせるか。関谷は報告書の裏に、九人の名前と谷の場所を書き込んだ。 戦場で一枚の報告書と一羽の鳩に、九人の命を託した通信兵の物語。時代|歴史|昭和|真実2.3万字5 78 -
完結第15話
母ちゃんへの三千円
昭和39年春。十五歳の坂本吉雄は、母と幼いきょうだいたちの暮らしを支えるため、青森から集団就職列車に乗って東京へ向かった。大田区の小さな町工場で待っていたのは、厳しい親方と油まみれの仕事、六畳一間の共同生活。それでも先輩やおかみさんに励まされ、少しずつ仕事を覚えていく。やがて初めての給料を受け取った吉雄は、その大半を故郷の母へ送った。ところがその夜、青森から一通の電報が届く。東京オリンピックに沸く昭和の街で、十五歳の少年を待ち受けていた思いがけない知らせとは。時代|歴史|昭和2.2万字5 91 -
完結第12話
150万円を払わせたママ友、次は寿司300万円
夫の昇進祝いで家族とレストランを訪れたひまり。楽しい食事の最後に告げられた会計は、なんと150万円。原因は、顔見知り程度のママ友・ぽて子一家が大量の料理を注文し、勝手にひまりへ支払いを押しつけたことだった。仕方なく立て替えたものの、返金を求めると渡されたのは、まさかのポテトチップスの空袋。しかも数日後、ぽて子は高級寿司店で新たな計画を立て始める。「ママ友なんだから払って当然」と言い張る一家に、ひまりが取った行動とは?因果応報|夫婦|真相|親子関係|金銭問題|修羅場1.2万字5 1010 -
完結第12話
雪道を走る父の約束
昭和46年12月。東京の運送会社で働く健造は、青森まで荷物を届ける長距離便に出発する。小学二年生の息子・誠に「明後日の晩には帰る」と約束し、手作りのお守りを胸ポケットに入れて、国道4号を北へ向かった。高速道路がなく、休む間も惜しんで走る運転手が多かった時代。雪の峠道、重いハンドル、厳しい納期に追われる健造は、深夜、激しい眠気に襲われる。早く荷物を届けたい。でも、家では息子が待っている。時代|歴史|昭和|親子関係1.1万字5 90