"消えた写真屋の父が残した一本のビデオ" 第13話
斉藤は失踪当夜に信吾を殴ったのではなく、から資料を受け取って計画を元へ戻したのかもしれない。由美は斉藤の退職の所を探し、ようやく会えた。斉藤は病気がちだったが、当のことを忘れていなかった。
「私が数字をき直したのは事実です。からの指示で、測った所をか所入れ替えた。瀬さんのを避けるためでした。ただ、あの夜、信吾さんを傷つけたのは私ではありません」
斉藤は、信吾がかに投函した資料を受け取った。封筒には測量写真と、き換えの調査票の写しが入り、《町民説会で原資料を示してください》とかれていた。斉藤は役所の司へし、度は握りつぶされたが、別の委員にも写しを送った。が元の案へ戻ったのは、複数のが同じ資料を持ったからだった。
「では、父が戻れなかった理由は、もうなかった」
「の件ではね。でも信吾さんは別の類を怖がっていた。瀬さんから族の署名入りで見せられた、の共同売却契約です」
由美は母の偽署名をいした。類自体は無効でも、信吾には族が自分を見限って売却に応じたように見えたのかもしれない。
斉藤の保管した会議資料から、由美は当の課の会議が度かれたことをった。最初の会議では交通量の表だけが示され、度目には写真と撮点を記した図が配られている。
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そのに父の資料が届いていた。斉藤は自分の正を認めたあと、議事録に訂正の理由を残すことを主張した。役所は「再確認により修正」とだけ記し、個名を伏せた。由美はその曖昧なを見て、が戻ったことだけで過がらかになったと父がっていたなら違う、とじた。
岡部さとは、町民説会の帰りに信吾の写真を枚もらったという。雑貨ので子どもたちが傘を振っている写真だった。「そのはれたのにね」とさとは笑った。役所がのに数えたことにした通量の調査票と、実際に子どもたちが歩いていたれた午。写真はさな飴の箱のにしまわれ、褪せていなかった。さとは説会でそれを掲げ、「写真を見てもまだだと言うの」と尋ねた。それが会議の空気を変えたと飯田は覚えている。
由美はさとに、父が今どこかできている能性がいとだけ話した。さとはんだあとで、「それなら私が渡したいものはつだけ」と言った。父が写真の裏にいた、商のから集めた異議申しての連絡先だ。の線が元へ戻ったのに、個々のの補償は宙に浮いたままだった。さとは父が帰ったら事を説してほしいとい、所をき直しながら待っていた。失踪したの帰還で終わらない約束が、この町にはいくつも残っていた。
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健太はビデオの最の秒を何度も聞いた。幼い自分の声は、記憶のよりく、父を責めてもいなかった。「帰ってきてね」と言った朝、母は父がもう戻らないかもしれないとっていたのか。千鶴に尋ねると、母はらなかったと言った。夜に会った信吾は、いうちに帰ると言った。だから息子の声を消したかったわけではなく、期待にすがる息子を見続けるのが怖くて、テープごと閉じたのだという。
「俺の声まで母さんのものじゃないよ」
健太はったまま、しかし母が座る隣で緒に映像を見た。千鶴は息子の声が入るまで父の暗の映像を度も再していなかったと告した。美佐から渡された翌朝、健太が械を触り、夜に片づけた。そのとき録画位置の末尾に声が入ったのだろう。初めて再したときには、暗の論と息子の声が同じテープに並んでいた。息子が父を待つことと、自分が夫を疑うことを度に引き受けられず、しまった。
由美は原本を持って野坂へき、テープの継ぎ目と音の位置を記録してもらった。野坂は運会、暗、翌朝のい録画が順になっていると説した。壁計の分だけでは当の証にならないが、美佐の証言、当使った現像液、乾燥の貸台帳、藤崎のガソリンの領収とねれば、暗の撮はに絞られる。
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