"消えた写真屋の父が残した一本のビデオ" 第15話
健太は、父と会って度だけりたいこと。由美は、逃げた理由を最初から最まで聞きたいことをいた。
通はつの封筒へ入れた。数、青森から返事が届いた。信吾の字で《読んだ。今度は私が皆ので話す》とある。駅の到着刻も添えられていた。
駅に父を迎えにくかどうか、族は決めきれなかった。健太は改札まできたいと言い、千鶴はで待つと言った。由美はへわせるのをやめ、駅で会ってからへ連れてくると伝えた。が同じ顔で父を待つ必はない。曜のホームには張帰りのや買い物袋を持ったが流れ、由美はそのから父を見つけられるかだった。しかし父はかつてのように鞄の持ちへ指をかけ、改札でを止めた。由美より先に父が気づき、くをげた。
写真館のテーブルには、千鶴が茶をつ用していた。父の湯呑みだけ、と同じ欠けた青いものだった。千鶴はわざと選んだのではないと言ったが、信吾は指で縁を確かめた。そこにんでいなかったが、物には残っている。由美は茶がめるに帳をき、父へ写真館をた刻から話してほしいと頼んだ。
信吾はをたあと瀬に呼び止められたことを認めた。急ぎの写真の客はいなかった。信吾は数から瀬に交通量の資料を見せるよう迫っており、父が運会のに町へ戻る刻を相もっていた。
広告
写真館で瀬を待つ、美佐にカメラを渡し、会話を残してくれと頼んだ。ただし美佐には危ない仕事を任せてしまった。彼女を隠しておけば全だと、自分で決めた。
「で役所へくと言われたとき、断れた?」と由美は尋ねた。
「断れた。でも調査票の原本を見たい気持ちが勝った。藤崎君も緒だったし、昼だった」
瀬のが資材置きへ向かい始めてから、信吾は初めて連れてかれる所が違うと気づいた。藤崎に図する暇もなく、着いた先で斉藤がてきた。斉藤は調査票の数字が変えられたと認めたが、信吾が持っていた写真のネガを渡すよう求した。信吾が拒み、瀬が彼の腕を引いた。そのはずみに棚へぶつかった。由美は「誰かに殴られた」とい続けていた額の傷が、争うでじたものだとった。暴力がなかったわけではない。けれど誰が何をしたかを曖昧にして父を英雄にするのも違う。
千鶴は父が帰宅した夜の話へを挟んだ。「私が瀬からを受け取るのは翌朝。あなたはそれをらなかったでしょう」。信吾は頷いた。自分が恐れたのは妻が署名したように見えるだった。あの夜、実物を持っていたのは瀬で、写真館へは持ち帰れなかった。「聞けばよかった」と信吾は言った。千鶴は「聞いてくれたら、署名していないと答えた」
広告
と返した。その言を確かめなかったためにが何を失ったか、由美と健太は目ので聞いていた。
健太は父の話が途切れたところで、「俺が学をたら帰ると言ったのはなぜ」と聞いた。信吾は子どもがを選ぶに町の噂を再燃させたくなかったと言った。由美が「私はもう学だった」と答えると、父は言葉を失った。自分で決めた待の期限は、子どもたちと相談した付ではない。危険を避ける理由がれたあとも、それを延ばす実だった。
由美は父に、瀬へ何を望むかも尋ねた。信吾は偽証を正してほしいと言ったが、瀬がすべてを壊したとまでは言えなかった。あの男が族の署名を見せ、仕事とを奪おうとしたのは事実。しかしの線が戻り、斉藤から資料の訂正をらされたあとも帰らなかったのは自分だ。責任を相の悪事へ預ければ、息子へ向きわずに済んでしまう。由美はその答えを聞いて初めて、父の言葉を帳へかずに顔を見た。
翌の警察で、瀬は午のの証言を撤回しなかった。藤崎のしい証言と映像を示され、午に信吾を乗せたのは《別の移》だったと言い換えた。しかし美佐が半に写真館で由美からカメラを受け取っている。父は過ぎににおり、同じ午に瀬の言う順番でくことはできない。
広告
おすすめ作品
-
完結第15話
「柿の木だけは切るな」――庭から出た四人の遺骨
2024年、東京・品川の古い屋敷で、樹齢70年の柿の木が引き抜かれた。その根元から見つかったのは、大人一人と子ども三人の遺骨。20年前、この屋敷では住み込みの家政婦と三人の娘が姿を消し、家主である元校長は「金を盗んで夜逃げした」と説明していた。なぜ彼は、柿の木だけは絶対に切るなと家族に言い残していたのか。捜査を進める刑事・渡辺は、町の人々から尊敬されてきた元校長の過去と、20年間隠されてきた母娘の失踪の真相を追い始める。ミステリー|真実|真相1.7万字5 17 -
完結第12話
昭和35年、上野駅に現れた二人の「ハルコ」
昭和35年春。集団就職列車を迎えに上野駅へ来た食堂の主人は、「山本春子」と呼ばれた少女が二人同時に手を挙げたことに戸惑う。一人は店で働くために上京した春子。もう一人の晴子は、三年前に東京へ出た姉を捜していた。姉は故郷へ帰ったことになっているのに、家族は誰も会っていない。不審に思った主人が古い雇用通知書を調べると、晴子の帰郷を証明する書類に、自分の署名が残されていた。誰が少女たちの名前を使い、何を隠していたのか。集団就職の時代を背景に、書類一枚に翻弄された若者たちの人生を描く物語。時代|歴史|昭和|真相2.3万字5 0 -
完結第15話
「このおばあちゃん、危ない」六歳の孫が見たもの
六十八歳の静子は、夫を亡くしてから一人暮らしをしている。近所の蛇田さんは、毎日のようにお菓子を配って歩く親切なおばあさん。ところが、六歳の孫・小春だけは、なぜか彼女を避けていた。 ある日、三人でスーパーへ出かけると、小春が突然、静子の手を引いて言った。 「ばあば、このおばあちゃん、あぶない」 その直後、店員に呼び止められた蛇田さん。小春はいったい何に気づいたのか。お菓子に隠された秘密と、一人暮らしの老人たちが抱える寂しさを描く物語。人生逆転|祖父母と孫|真実|真相1.6万字5 65 -
完結第12話
卒業写真の空いた席
昭和40年、秋田県の山あいにある中学校。成績優秀な佐伯澄江は、家計を支えるため、高校進学を諦めて東京の縫製工場へ就職することになった。ところが卒業写真を撮る日、澄江は突然学校へ来なくなる。担任の女性教師が見つけたのは、少女が残した一枚の紙だった。そこには、紹介状に書かれた就職先と、母親が指定した送金先の住所が違うと記されていた。さらに、東京で結婚したはずの姉にも不可解な事情があるらしい。卒業証書を手に上京した教師は、少女たちの知られざる働き方と、家族の間に隠された事情を知っていく。時代|歴史|昭和2.3万字5 208 -
完結第12話
最後の伝書鳩
昭和19年、南方の山地。撤退を命じられた部隊は、谷に残された九人の兵士と連絡が取れなくなっていた。 通信兵の関谷清一伍長は、彼らが「未帰還」の一言で片づけられることに納得できない。しかし、無線は故障し、残された伝書鳩は最後の一羽だけ。報告書が敵の手に渡れば、百人以上の仲間まで危険にさらされる。 命令を守るか、九人の居場所を知らせるか。関谷は報告書の裏に、九人の名前と谷の場所を書き込んだ。 戦場で一枚の報告書と一羽の鳩に、九人の命を託した通信兵の物語。時代|歴史|昭和|真実2.3万字5 78 -
完結第15話
母ちゃんへの三千円
昭和39年春。十五歳の坂本吉雄は、母と幼いきょうだいたちの暮らしを支えるため、青森から集団就職列車に乗って東京へ向かった。大田区の小さな町工場で待っていたのは、厳しい親方と油まみれの仕事、六畳一間の共同生活。それでも先輩やおかみさんに励まされ、少しずつ仕事を覚えていく。やがて初めての給料を受け取った吉雄は、その大半を故郷の母へ送った。ところがその夜、青森から一通の電報が届く。東京オリンピックに沸く昭和の街で、十五歳の少年を待ち受けていた思いがけない知らせとは。時代|歴史|昭和2.2万字5 91 -
完結第12話
150万円を払わせたママ友、次は寿司300万円
夫の昇進祝いで家族とレストランを訪れたひまり。楽しい食事の最後に告げられた会計は、なんと150万円。原因は、顔見知り程度のママ友・ぽて子一家が大量の料理を注文し、勝手にひまりへ支払いを押しつけたことだった。仕方なく立て替えたものの、返金を求めると渡されたのは、まさかのポテトチップスの空袋。しかも数日後、ぽて子は高級寿司店で新たな計画を立て始める。「ママ友なんだから払って当然」と言い張る一家に、ひまりが取った行動とは?因果応報|夫婦|真相|親子関係|金銭問題|修羅場1.2万字5 1010 -
完結第12話
雪道を走る父の約束
昭和46年12月。東京の運送会社で働く健造は、青森まで荷物を届ける長距離便に出発する。小学二年生の息子・誠に「明後日の晩には帰る」と約束し、手作りのお守りを胸ポケットに入れて、国道4号を北へ向かった。高速道路がなく、休む間も惜しんで走る運転手が多かった時代。雪の峠道、重いハンドル、厳しい納期に追われる健造は、深夜、激しい眠気に襲われる。早く荷物を届けたい。でも、家では息子が待っている。時代|歴史|昭和|親子関係1.1万字5 90