"昭和54年、消えた母の集金袋" 第3話
と言い、父の通帳をした。引きした付と額も千円とう。差の千円は誰が払ったことになっているのか。そのの欄には澄ではなく、の私印があった。
直子はへ会いにった。精肉には買い物客がいて、奥ではラジオから野球の録音番組が流れていた。は帳簿を見ると、もう済んだことを掘り返すなと言った。彼は正が全額を支払ったと調したが、直子が「そのに、りないを誰が数えたの」と聞くと答えを変えた。「枝の夫と俺だ。宮さんはそこにいなかった」。誰がを見つけ、誰が母を疑ったのか、初めて具体な順序が分かった。
が奥へ戻ると、妻の恵が釣り銭を渡すふりをしてさなメモを寄越した。《、午。駅裏の仕て》。そので話せない理由を直子は尋ねず、肉を包み買った。をると、恵は窓越しに直子を見ていた。母をっていたの目だった。
仕ては学の丈直しで忙しかった。恵は正面の扉から入らず、裏に来た。は町内のへ、妻はを悪くしての階段を登れないと言っている。だが恵は自分で急な階段をがった。「のいるところで話したかった」と言って、仕ての主が見える机に座った。
恵は昭、商会の会計を伝っていた。
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澄が集した封筒をのへ運び、会計印を押す。子どもを寝かせてから末の数字を写すのは、恵の仕事だった。夫が祭りの寄付を続ける方で、仕入れ代の支払いに窮していたこともっている。しかし会費からを取ったのではないかと聞かれると、恵は首を振った。「それを確かめるに、澄さんが消えたの」
恵が持ってきたのは、古い作業着の内ポケットだった。布をほどくと、つ折りにした受領が入っている。、夕方分、《商会集、万千円を受領》。受け取りの欄にはの印が押してあった。千円の差額と領収の組を母が発見した夜、集した全額をへ渡していたことになる。
「どうして、さなかったの?」
恵はを見つめた。澄が消えた翌朝、は「預かっていない」と言った。恵は夫が封筒を受け取るのを見ていないし、受領はにはない。数、洗濯の作業着を直そうとして内ポケットからを見つけた。当の彼女にはまだ学の子がいた。に問いただすと、彼は「澄さんが類を勝に作った」と返した。恵はその言葉を疑いながら、を処分することもに渡すこともできなかった。
直子は受領を受け取るに、恵の同を確かめた。
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「これをしたら、ご主も調べられます」。恵は「ってる」と答えた。仕ての主に受け渡しのをいてもらい、直子はを透な袋へ入れた。たって印の朱はい。それでもの帳簿に押されたの私印と、欠けた画まで致していた。
「父はっていたんでしょうか」直子が聞くと、恵はためらった。澄が消えた、正がのを訪ね、会計印を押した控えを見せてほしいと言った。は激し、正を追い返した。その夜、恵がへくと、正は「子どもが町できるから」と言い、これ以、商会で母の名をさないよう頼んだ。父は犯をっていたわけではない。だがが何かを隠していると疑いながら、て替えを選んでいた。
直子の最初の問いには答えがた。母は万千円を持ち逃げしていない。けれど受領をもらったあと、なぜ宿きの終へ乗ったのか。恵はその夜、澄から本の話を受けていた。「さんのには戻らないで。の帳面は、私が持っていく」。受話器の向こうからは、駅の発ベルが聞こえた。
直子は母の失踪のころ、駅の改札に掲げられていた先板をよく覚えていた。切符を買うが列を作り、発刻がづくと駅員が窓を閉めて改札へ回った。
へ直接話できる携帯話はなく、先かららせるには公衆話の貨かテレホンカードがった。母が遅くなると伝えなかったからといって、初めから帰らないつもりだったとは言えない。
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