"死刑執行直前、1匹の犬が見つけた「8年前の嘘」" 第3話
ハルがれない扉
「建物の裏を、から見てもいいですか」
結が尋ねると、管理員は戸惑いながらも通の柵をけた。
「は鍵がかかっていますよ。使っていない建物ですから」
浦は警察への説を続けていた。結はその界かられないところまでみ、ハルを止めた。リードを引き返しても、ハルの先は建物のい位置かられなかった。
のに、属の格子が見えた。から延びる換気らしい。ハルは格子に顔をづけて匂いを確かめると、しれたところに座り、2度吠えた。
訓練でを見つけたときと同じ反応だった。
結はしゃがみ、犬の隣から暗い格子の奥を見た。の姿は見えない。を澄ましても、くのをるの音しか聞こえなかった。
「誰か、いますか」
声をかけて待ったが、返事はなかった。
ハルは格子へづき、もう度吠えた。
浦が話を終えて駆け寄ってきた。管理員も、鍵の束を持ってろについてきている。
「このには何がありますか」
結の問いに、管理員は建物の角を指した。
「昔の設備です。階段からりられますが、私はまだ入ったことがありません」
階段のには、い鉄の扉があった。管理員がから鍵束を確かめているあいだに、浦は到着した警察官を呼びに正面へ戻った。
結はハルと換気のに残った。
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のがし滑ると、ハルは踏ん張り直して格子を見つめた。結は胸にを添え、のいい所へがらせた。
「分かってる。ここにいるんだね」
犬の反応だけで断定はできない。けれど、何もない所で気まぐれに吠えていると片づけられる反応でもなかった。
結は掌で格子を3回叩いた。
「聞こえたら、音をしてください」
ハルが吠えるのをやめた。
し待つと、格子の奥から、かすかな音が返ってきた。何かいものがを擦る音だった。
「今、聞こえましたよね」
づいてきた警察官に結が尋ねた。警察官は自分でも格子のに屈み、声をかけた。
今度は、い咳のようなものが聞こえた。
警察官がちがった。1が無線で救急を請し、もう1が管理員と階段をりていった。
鍵を差す属音が続いた。扉を引くと、途で何かに当たって止まった。
「にがいる。しずつけます」
警察官が隙にライトを向け、呼びかけながら扉をかした。結は階段ので待った。ハルはへこうとしたが、リードをく持ち直すと、結の元に座った。
ようやくいた扉の向こうに、片を投げした男性が見えた。首は背側で縛られ、には布が巻かれていた。
警察官が布をすと、男は何度も咳をした。
「名を言えますか」
答えは階段のまで届かなかった。
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しかし、ライトに照らされた横顔を見て、結には分かった。
須藤だった。
髪はくなり、顎の肉も落ちていた。それでも、証席で背筋を伸ばしていた男の顔を違えることはなかった。
「見ました。相沢さんに違いありません」
あのの声が、階段のから聞こえたような気がした。
結はリードを握り直した。ハルが指のにを押しつけてきて、ようやくに力が入りすぎていたことに気づいた。
「見つけてくれたんだね」
胸を撫でると、ハルはしだけ尻尾を振った。褒められるのを待っていた顔だった。
到着した救急隊が階段をり、警察官と交代した。管理員は別の警察官から事を聞かれていた。「帰ったと聞いた」と繰り返しながら、会社の担当者とやり取りした履歴を話で探している。
浦は自分に届いたメッセージと、面会の約束をした経緯を説した。最初は所確認のためだった警察官の問いが、誰が、いつ、この建物へ来たのかという内容に変わっていった。
担架がにがってきた。須藤は毛布をかけられ、片を固定されていた。結がを空けようとすると、須藤の目がこちらを向いた。
「森……さん」
名を呼ばれ、結はを止めた。
「浦先も来ています。今は病院へってください」
声を平らに保とうとした。聞きたいことはあった。
なぜ嘘をついたのか。直が刑を言い渡されたとき、どうしてちがってくれなかったのか。
けれど救急隊員は、処置をしながらへ急いでいた。今、答えを迫って容体が悪くなれば、直へ届くはずの言葉まで失う。
須藤の線が、結の元へ落ちた。
ハルは担架を見ていた。結が名を呼ぶと、座り直し、救急隊員の通る所を空けた。
「この犬が……」
「にいるのを見つけました」
浦が答えた。
須藤はをき、声をしかけてむせた。救急隊員が、話はあとにするよう促した。それでも須藤は、毛布のから指を伸ばして結のほうを指した。
「相沢は、を殺してない」
結は息を吸ったまま止まった。浦が須藤へ歩づいた。
「その話は、病院で改めて聞きます。あなた自の弁護士も配します」
須藤は目を閉じかけ、もう度いた。
「俺は、見てないんだ。あいつがやったところなんて、見てない」
救急の扉がいた。須藤は担架ごと運び込まれながら、結を見ていた。
「あの証言は、嘘だった」
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