"死刑執行直前、1匹の犬が見つけた「8年前の嘘」" 第9話
ので待つもの
がく音に、ハルのがいた。
結は赤いリードを持ち直した。浦の隣にって待っていると、さな鞄をげた直が姿を現した。
面会のたびに顔は見ていた。それでも、に隔てるものがなく、同じのを歩いてくる直を見るのは、ひどく久しぶりだった。
直はをたところでを止めた。が通る音に度顔を向け、それから結の元を見た。
「ハル」
名を呼ばれても、ハルはすぐには駆け寄らなかった。をかし、結を見げたあと、くリードを引いた。
結が緒にむと、直は鞄を面へ置いてしゃがんだ。
差ししたを、ハルが嗅いだ。指先から首へを寄せ、の袖を確かめる。直はかず、犬が顔をげるのを待った。
ハルの尻尾が度揺れた。
次の瞬、ハルは直の膝へ胸を押しつけた。首を伸ばして顎をなめ、で着に触れた。ちがろうとして元がふらつくと、直が胸を支えた。
「いいよ。そのままでいい」
直は面に片膝をつき、ハルを腕のへ入れた。
写真で見ていたよりも、背の毛は柔らかかった。の付け根を撫でると、ハルは以と同じようにを傾けた。その仕を見た途端、直は顔をげた。
「ただいま」
首の毛に声が埋もれた。ハルは直の着へを押しつけ、れようとしなかった。
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結はし横へずれ、リードが2のに張らないようにした。直の肩が度だけきくき、あとは撫でるだけがゆっくりき来した。
浦は腕計を見ずに待っていた。
しばらくして直が顔をげると、結は鞄からタオルをした。
「顔、舐められたね」
「昔より、しつこくなった」
直がそう言うと、結もし笑った。ハルは話を聞く気などないように、直の首をもう度嗅いだ。
結はリードの持ちを差しした。
「持つ?」
直は受け取ってに通し、ハルがつまで待った。引いて歩かせるのではなく、自分のほうから半歩づいた。
「今は、どのくらい歩ける?」
「疲れるに休めば丈夫。急な段差だけ、気をつけて」
結が伝えるたび、直はハルの元を見てうなずいた。
までのい距を、3と1匹で歩いた。直がし遅れると、ハルが振り返った。今度は写真の向こうを見ているのではなかった。
直は、支援してくれていたの紹介で、さな部を借りることになっていた。結のからもく、犬を連れて入れることは事に確かめてあった。
そのはまず、そこへ荷物を置いた。
直が鞄をけると、の束と何枚かの写真がてきた。ハルの写真を机に置き、古い便箋をしまおうとしたところで、が止まった。
結には、その文字が見えた。
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『玄関で待っていたら、先に散歩へ連れていってください』
直は便箋を伏せた。
「あの朝に、いた」
結は何も言わなかった。直の元で、ハルがの匂いを確かめている。窓まで歩き、戻ってきて、直の靴にを触れた。
「渡さずに済んだんだね」
「うん」
直は便箋を折り直し、の束のへ入れた。
夕方、結が用した事をべた。直は箸を持ったまま、湯気のつ汁椀を見ていた。べたいものを聞かれたときはいつかなかったのに、目のへ置かれると急に腹が空いた。
「おかわり、してもいい?」
結はちがって、ご飯をよそった。
ハルは机ので眠っていた。直がをかすと、背が触れた。起こさないように子を引き直し、そのまま事を続けた。
帰るになり、結がハルを呼ぶと、直の元でち止まった。
「今夜、ここに置いていってもいい?」
結が尋ねた。
直はハルを見たあと、結へ顔を向けた。
「ハルが落ち着いて眠れるなら」
結はからいつもの敷物と器を持ってきた。事の量をいたも渡し、分からないことがあったら話してほしいと伝えた。
「もう、返事を待たなくていいから。話なら、そので話せる」
直はしく用した携帯をに取り、結の番号を確かめた。
結が帰ったあと、部は静かになった。
廊で扉が閉まる音がすると、直は反射に顔をげた。
ハルも顔をげたが、誰も来ないと分かると、また敷物に顎を置いた。直は玄関の鍵を見た。鍵は、内側にいる自分のでけられた。
机には、浦から渡された次の打ちわせの予定があった。自由に部をられるようになっても、裁判は終わっていない。
直は子へ座り、当夜の見取り図を広げた。自分の名が印刷された類のに、まだ「被告」とかれていた。
その文字を指で隠してみてから、をした。
携帯が鳴った。浦から、遺族側の弁護士を通じて連絡があったというらせだった。
くなった総支配、橘健の娘が、直に会いたいと言っている。
「裁判のことですか」
「お父さんの最について、聞きたいことがあるそうです」
直は見取り図の会議を見つめた。あの部で呼んでも返事がなかったの名を、胸のでもう度呼んだ。
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