"消えた姉と18年後の手紙" 第8話
千円の現をに送り続けるための、壊れない集械として野へ売りばそうとしていたのよ。私が歳になっても、になっても、浩がをて学を卒業するまで、私はの暗いでアイロンをかけ続け、円の貯も許されずに使い潰される。……その未来が、目のに枚の狂いもない設計図として見えてしまったの」
「父さんが……そんな約束を……」
「お父さんは悪じゃないわ」佐子は静かに微笑んだ。その笑みは、劇を乗り越えた者だけが湛えることのできる、い諦を含んでいた。「お父さんはただ、貧しかったのよ。男の跡取りをの学歴にして世にすことが、あの代の父親にとっての絶対な正義だった。そのためには、女のくらい質に入れても構わないと、本気で信じ込んでいたのよ」
佐子は窓辺へ歩み寄り、元町の坂を見ろした。からのたいが、ガラス窓をかすかに震わせている。
「発の、私は台所で根を刻みながら、お父さんに度だけ聞いたの。『もし私が京へかずに、岡の女子へって、自分で裁の勉をしたいと言ったらどうする?』って。お父さんは煙管のを叩き落として、私の顔も見ずに言ったわ。『浩と分の学費なんてせるわけがない。
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女に学問をさせて何になる。おがを支える番だ』……その背を見た瞬、私ので、何かが完全に音をててえ切ったの」
浩の喉の奥から、乾いた呻きが漏れた。
自分の学。自分がの制を着て、誇らしげに町を歩いていた。
その輝かしい青のには、姉が暗の底で圧殺されるはずだった贄の祭壇が、酷なまでに用されていたのだ。
「だから……荷物だけを、野へ送ったのか」
浩の声は、かすかに震えていた。
佐子は振り返り、静かに頷いた。
「あの柳李にはね、お母さんが縫ってくれたも、族の写真も、全部詰め込んだわ。あれは、お父さんとお母さんが望んでいた『都のいい佐子』の抜け殻よ。あの抜け殻だけを京へらせて、野駅の荷物扱所に置きりにしたの。佐子という娘は、あの李と緒に野で度んだのよ」
昭39410、越湯沢駅のホーム。
族が見送る夜普通列のデッキにった佐子は、汽笛が鳴り響き、輪が軋み始めた瞬、父親が改札へ向けて背を向けた秒の隙を見逃さなかった。
反対側のドアをそっとけ、暗い貨物側線のバラスのにびりた。
たいのが、品のスカーフを容赦なく濡らした。佐子はリヤカーの残骸や錆びたドラム缶のにを潜め、息を殺してのにうずくまっていた。
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改札の向こう、カンテラのかりに照らされた父と母、そしてまだ幼さの残る浩の背が、駅通りののへとさく消えていくのを、の匂いを吸い込みながら見つめていた。
「怖くなかったのかよ……」浩が呟いた。「持ちのおだって、ほとんどなかったんだろ」
「ぬほど怖かったわ」
佐子の瞳の奥に、のの夜の暗が蘇っていた。
「がまのには、お母さんが持たせてくれた千円と、自分で内職をして密かに貯めていた千百円。それだけよ。見つかれば連れ戻され、今度こそ逃げのない所へ監付きで送られる。臓が鐘を打って、吐きそうだった。……でもね、浩。あの貨物置きのたいので、分じっと待っているに、私、まれて初めて自分の肺で息を吸った気がしたの」
誰かの姉でもなく。
の女でもなく。
弟の学費を稼ぐための具でもない。
ただの、名もないのとして、自分のでたい面を踏みしめているという、震いするような恐怖と自由。
午842分発のり列が、い鳴りとともにホームへ滑り込んできた、佐子はだらけの靴を拭いもせず、最尾の両のデッキへとび乗った。
野とは真逆の、岡へ向かう列。
窓ガラスに映る自分の顔は、恐怖で蒼だったが、その唇の端には、これまでに度も浮かべたことのないさな笑みが宿っていた。
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