"廃線駅に殘された最後の切符" 第9話
「俺の送っていたは、通も届いていなかった。母ちゃんは俺から見捨てられたとい込み、俺は母ちゃんを飢えさせて殺したんだと……! 俺が……俺の無が、母ちゃんを殺したんだ!!」
健は自責のから、自らの故郷を完全に封印した。 わせる顔がない。どの面をげて、母の墓参りにけというのか。 友を救うために名を捨て、母親を救うために送ったは虚空に消え、自分に残されたのは、レールを敷くための頑丈な肉体だけだった。
「俺は線を敷き続けたよ」 健は窓のの実験線を睨みつけた。 「幹線のレールを敷き、線のを固めながら……いつもっていた。この線は、どこへ繋がっているんだろうってな。本が幹線だ、万国博覧会だと浮かれているけれど、俺の敷いたレールは、度だって俺の故郷へ繋がることはなかった」
修は、シーツのに広げられた枚の切符を、そっと健の元へ押しめた。
「違います、田さん」 修の声は、確信に満ちていた。 「あなたのレールは、繋がっていたんです。駅は、あなたが帰ってくるのをずっと待っていた。……でも、つだけ分からないことがあるんです」
修は、昭の切符の裏を指差した。
「なぜ駅は、この切符を【京き】のまま残したんでしょうか。あなたが沢へ帰ってくるための切符なら、野発の切符でなければおかしいはずです。
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なぜ、沢発の切符だったんですか?」
健は、枚の切符の束を凝した。 昭、、……。 毎、の付で刻まれた、沢から京への片切符。
その裏にかれた『今も待つ』という文字を、健の指先がなぞった瞬――。
男の顔が、激しい衝撃に打たれたように凍りついた。
「……そうか。源吉さん……あんた、そういうことだったのか……!」
「どういうことなんですか、田さん!?」 修が詰め寄る。
健は切符を握りしめ、ちがった。 その瞳には、の悔を焼き尽くすような、激しいが宿っていた。
「田君。源吉さんはな……俺を待っていたんじゃない」
「え……?」
「源吉さんは、俺を『許す』ために待っていたんじゃないんだ。……あのは、自分自を許せなかったんだよ」
健は作業の胸元を乱暴にいた。
「あの……昭の朝。信吉に切符を譲った、俺が貨物列に乗る直、源吉さんは俺にこう言ったんだ。『くな、健。ここに残れ。汽なんかに乗るな、で緒に暮らそう』ってな」
修の息が止まった。
「だが、あの代の空気は違っていた。のたちはみんな言っていた。『若者は京へけ、都会へてを稼いでこい、に残る奴は能無した』ってな。源吉さんも国鉄の駅として、何もの子どもたちを集団就職列に乗せて送りしていた。
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……『若者は都会へくべきだ』という代の巨な奔流に、駅というにあった源吉さんは、逆らえなかったんだ」
源吉はっていたのだ。 健が、本当は故郷をれたくなかったことを。 母親のそばで、好きな沢のと川を見つめながら暮らしたかったことを。
それをりながら、代の正義という名のレールのにを押しし、結果としてを過酷な流転の運命へと突き落としてしまった。
「源吉さんは、俺に【京きの切符】を渡すことで、毎、自分に問いかけ続けていたんだ」 健の声が震えた。
「『おを京へ送りした俺は、正しかったのか』。 『もしおが帰ってきたら、今度こそ俺ので、おが本当にきたかった所への切符を渡してやれるのか』……とな。この切符はな、田君。俺を迎えに来るための切符じゃない。……俺がいつでも、自分ので、自分のを選び直すための切符だったんだよ!」
控の壁掛け計が、午を告げる鈍い音をてた。 健は机のの切符の束を鷲掴みにし、ポケットへ押し込んだ。
「田君。沢駅へくぞ」
「えっ……でも、もう列はっていませんよ! 線も気も止められたんです!」
「線が消えたなら、歩けばいい!」 健は叫んだ。 「俺は軌だ! 本の線を敷いてきた男だぞ! レールが錆びついていようが、枕が腐っていようが、自分ので歩けない線なんてありゃしないんだ!!」
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