みかん小説
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"廃線駅に殘された最後の切符" 第11話

分岐器のポイントには太い鎖が巻かれ、きな京錠が掛けられている。

はヘッドライトの代わりに、修が持参した保線用のカンテラに灯を点けた。 カチ、カチと油煙を噴きの炎が、敷き詰められたバラスト(砕)と、古びた栗のの枕を照らしす。

くぞ、田君」 健は作業の裾を靴に押し込み、迷うことなくレールとレールのを踏み入れた。

廃線跡の軍。 それは、キロに及ぶ、と記憶を遡る旅だった。

の歩幅は、の歩幅よりわずかに狭い。本を刻むように踏みしめながら、は漆黒のあいのへと分け入っていった。 が吹き抜けるたび、線脇の雑林がザワザワと音をてる。 列らなくなった線は、驚くほどたく、に絶えた巨な骨組みのように横たわっていた。

「……いい軌だ」 数キロ歩いたところで、健が突然ち止まり、線に片膝をついた。 カンテラので、レールと継ぎ目板(ジョイント)の隙を指先で丹に探る。

「レールの通り(直線性)も、狂い(差)も、ほとんど狂っちゃいねえ。キロの軌条じゃねえ、昔のキロの細いレールなのに……本の継ぎ目ボルトの緩みすらねえぞ」

の指先が、レールの側面に刻まれた古い刻印に触れた。 【幡製鉄所 1922】

「源吉さんだ」

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が言った。 「駅は、駅の仕事だけじゃなかったんです。利用者が減って保線区の員が削られてからも、毎朝始発のに、自分でスパナを持って線里歩いて点検してたんですよ。『列本になろうが、乗るになろうが、線を狂わせるわけにはいかん』って言って……」

の喉が、引き攣るように鳴った。 「あのは……ずっと、でこのレールを守り続けていたのか」

自分がいつ帰ってきてもいいように。 この細い鉄が、途切れてしまわないように。 乗客のためだけではない。へと送りしてしまった、あのしいの帰を保つために、老駅は老いた体に油を浴び、バラストを突き固め続けていたのだ。

を過ぎた頃、の稜線がみ始め、い朝を埋め尽くした。 杉の向こうに、見覚えのある並みが青黒いシルエットとなって浮かびがる。

「見えた……」 修方を指差した。 の向こうに、切り通しを抜けた先、造のさな塔と、傾いた腕式信号が佇んでいた。

沢駅の内信号だった。

だが、その信号の赤レンズの――。 本来なら気が落とされ、漆黒のに沈んでいるはずのプラットホームの先端に、あり得ない「ひとすじの」が揺らめいていた。

遡ること数

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病院の粒子病棟で、夜勤の護婦がけたたましい鳴をげていた。

「師本さんがいらっしゃいません!」

駆けつけた医師が見たのは、ベッドのに投げ捨てられた点滴のチューブと、血の滲んだ脱脂綿だった。 パイプ子に掛けられていたはずの、源吉の国鉄制と正、そして制靴が消えていた。 サイドテーブルのには、源吉の字できされた処方箋の裏枚だけ残されていた。

『職務に戻ります』

騒ぎになった。 急性全で倒れ、いつ臓が止まってもおかしくない歳の老が、パジャマのから制を羽織り、真夜気のへ消えったのだ。 警察のパトカーが駅通りを捜索したが、は見当たらなかった。

の丸万商主・万吉は、未の午半頃、激しい物音で目を覚ましていた。 ガラガラと引き戸をけると、濃いを、杖代わりのバールを突いて、を引きずりながら駅へ向かう黒いを見たという。

『源吉さん! 源吉さんじゃねえか! 何やってんだ、病院に戻れ!』 万吉が叫んで駆け寄ろうとしたが、老は振り返りもせず、ただだけを見つめて歩き続けた。 その横顔は、幽鬼のように蒼でありながら、現役の鉄員としての異様な気迫に満ち満ちていた。

『万吉……始発が、来るぞ』 すれ違いざま、源吉は掠れた声でそう言ったという。

『何を言ってんだ、線はもう廃止になったんだぞ! 列なんか来るわけねえだろ!』 『来るんだよ。

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