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"廃線駅に殘された最後の切符" 第14話

源吉の眉が、微かにいた。

京と阪を結ぶ幹線、そのレールの狂いをミリ単位で修正する技術を、俺が発したんだ。……炭鉱で怪をして、もう体もかないとったしたのは沢駅の線だった。源吉さんが毎朝、油を差して磨いていた、あの美しいレールだったんだよ」

は自らの節くれだった両を、源吉のに差しした。 「俺は、鉄員になったよ。源吉さんの弟子として……本で全な線を造る技術者になったんだ!」

源吉の瞳から、粒の涙がポロポロと零れ落ちた。 老はそのを、自らの袋で包み込んだ。

「そうか……。そうだったのか……。おが……あの幹線を……」

源吉の顔に、これまでに見たこともないような、く、穏やかな堵の笑みが広がった。 その瞬、張り詰めていた命の最の糸が、静かに緩むのを、修は確かに見た。

老駅の体が、ふわりとのめりに傾いた。

「駅……!? 駅ッ!!」 修と健が、同に叫んでその体を支えた。

ホームに差し込む朝の、源吉の目は静かに閉じられ、度とくことはなかった。 その元には、完璧な職務を全うした者だけが浮かべることのできる、清らかな微笑みが残されていた。

源吉の葬儀は、廃線になったばかりの沢駅の待われた。

祭壇は、使われなくなった改札に設えられた。

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町の老たち、かつて沢線を通勤・通学で利用していた々が、々集まり、静かに線げた。 誰もが、源吉のを悼むとともに、この駅が完全に「過の遺物」となったことを肌でじていた。

は、遺族の列の末席に座っていた。 町の々は最初、作業を着た見らぬ男を怪訝そうに見つめていたが、主の万吉が「田の健坊主だ」と打ちすると、誰もが息を呑み、そしてげた。 、町が背負ってきた「逃げた」というろめたさが、今、誇りい国鉄の技術者として帰還した男の姿によって、静かに解けを迎えていた。

葬儀の終盤、修は健を連れて、駅の裏にある共同墓へと向かった。

の野が咲き乱れる斜面の角に、さな苔むした墓があった。 【之墓】。

は墓に膝をつき、桶のを柄杓で静かに墓へかけた。 そして、あの分の仕送りが記された通帳と、改札鋏の入った昭券を、線の煙にかざした。

「母ちゃん……帰ってきたよ」

が吹き抜け、杉の葉を揺らす。 墓に触れる健の指先は、もう震えていなかった。

「俺、派な仕事をしてるよ。母ちゃんが縫ってくれたあのツギハギのはもう着てないけれど……母ちゃんがくれた体で、のみんなが乗る列全を守ってるんだ」

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から、母の優しい笑い声が聞こえたような気がした。 『ってるよ、健。おは昔から、真っ直ぐな子だったからねえ』

は、れた所からその景を見守っていた。 自分の胸ポケットには、盛岡鉄管理局への辞令が入っていた。 から、自分もしい任へと旅つ。代化され、化され、スピードと効率が支配するしい鉄の世界へ。

だが、修には、源吉から受け継いだ「鉄員の魂」が、消えることのないとなって灯っていた。 鉄とは、ただを運ぶための械ではない。 そこには、名もなき々のの別れと再会があり、守るべき約束があり、そして決して裏切ってはならない信頼があるのだと。

墓参りを終えたは、再び沢駅のホームへと戻ってきた。

レールはもう、どこにも繋がっていない。 が芽吹き始めた砂利ので、健ち止まり、修に向き直った。

「田君。この切符は……俺が持っていっていいかい」

「もちろんです」 修は頷いた。 「それは、最初からあなたの切符ですから」

券を切に革の財布へと仕い込み、力く修を握りしめた。 「ありがとう、田君。……俺は、京へ戻るよ。もっとくて、もっと全な線を造るために」

「はい。私も、盛岡で頑張ります。駅の名に恥じない鉄員になります」

は笑顔で頷きい、駅のへと歩きした。 振り返ると、造の駅舎の根のに、の真っ青な空がどこまでもく、果てしなく広がっていた。

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