"廃線の駅で待ち続けた父" 第2話
【昭231015 青支線・第14列 青】
(昭……!?)
のので、表が激しく音をてて狂い始めた。 青支線が害で通になり、運輸省から正式に廃止許がりたのは昭のことだ。線そのものが図から消えた翌に、なぜ「青き」の切符が発されているのか。
「あ……返してくれ、さん。わしの……わしの事な切符じゃ」
源吉が奪い取るようにを伸ばし、切符をのからひったくった。その指先は凍える寒さのせいばかりでなく、秘密を暴かれた恐怖のように刻みに震えていた。
「源吉さん、その切符は体どこでに入れたんです? 昭なんて、この線にはもう列はっていなかったはずだ」
源吉は切符を胸ポケットの奥くに押し込み、黒革鞄をさらにく抱きしめた。 鳥打のツバのから覗くその目は、先ほどまでの穏やかな好々爺のものではなかった。く刻まれた皺の奥に、昭という代の残酷な秘密を背負い続けた者特の、昏くいが宿っていた。
「……っとったんじゃ」
源吉は掠れた声で、独り言のように呟いた。
「世の帳面からは消されてもな……線がそこにある限り、らねばならん汽があったんじゃよ。……あの子は、その汽に乗っとる。だから、わしは迎えに来にゃならんのじゃ」
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「あの子って、息子さんの修さんのことですか? でも、修さんは昭の復員列の事故で――」
その瞬、源吉の喉から「ヒッ」とい呼気が漏れた。 老はそれ以何も答えず、杖を突きながら、逃げるような取りで暗い駅通りへと消えていった。
残されたは、え切ったホームのでち尽くしていた。 「世の帳面からは消された汽」――その言葉が、の奥で気に反響していた。
駅事務に戻ったは、油ストーブのに座り込む先輩駅員の柴田(歳)に声をかけた。柴田はこの青駅でく勤務している古株で、戦・戦の鉄事にも精通していた。
「柴田さん。旧線のことで、ちょっとお聞きしたいんですが」
「ん? 旧線だと? あんなむら、今さらどうしたんだ」
柴田は湯呑みの番茶をすすりながら、億劫そうに線を向けた。
「あの線、本当に昭に完全に運を止したんですか? 例えば……公式のダイヤには載らないような、特別な列の運が、以にもあったりしたんでしょうか」
柴田の湯呑みを持つが、ピタリと止まった。 ストーブの赤いに照らされた柴田の顔から、急速に気が引いていくのをは見逃さなかった。
「……。お、誰からそんな話を聞いた」
「さっき、源吉さんが持っていた切符を見たんです。
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昭の付が入っていました。あれは体何なんですか?」
柴田はちがり、事務の引き戸が閉まっていることを確認すると、声を極限まで潜めての元に囁いた。
「あの話には首を突っ込むな。源吉じいさんのことも、放っておけ」
「どうしてですか! 源吉さんはも、来ない列を待っているんですよ!」
「来ないからいいんじゃないか!」 柴田が珍しく声を荒らげた。その瞳には、紛れもない恐怖が張り付いていた。 「あの列が万がにもここへ戻ってきたらな……この町はおろか、国鉄の幹部連の首が何本もぶことになるんだよ。終戦直のはな、おのような若い奴が像できるほど浅くはないんだ」
柴田はそれ以、を割ろうとはしなかった。 しかし、その拒絶こそが、の探究にをつけた。 夜、当直勤務に入ったは、駅舎の裏にある施錠された文倉庫の鍵を、当直誌の束から静かに抜き取っていた。
真夜の文倉庫は、氷庫のようにえ切っていた。 埃と古のカビ臭がち込める暗い内で、は懐灯の細いを頼りに、壁際のスチール棚を漁った。
昭代の段ボール箱は、湿気で底が抜けかけていた。 『昭度 復員輸送関係通達綴』 『昭 配物資輸送実績』 そして、棚の最段、頑丈な麻紐で文字に縛られ、表に赤い文字で「閲覧禁止」
とかれた冊の分いファイルを見つけした。
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