"廃線の駅で待ち続けた父" 第4話
戦争というものが、から何を奪い、国が敗戦の瞬に何を隠蔽しようとしたのか、肌でらない世代だ」
梨は壁際のパイプ子を引き寄せ、そうに腰をろした。
「あの昭、本が飢えと混乱の極みにあった。引き揚げが港に着くたび、コレラや発疹チフスといった悪性伝染病の噂がび交い、復員兵は消毒液を浴びせられ、まるで汚物のように扱われた。……だが、あの第〇列に乗っていたのは、単なる病みがりの兵隊だけではなかったんだ」
「……何が乗っていたんですか」
「軍の密物資だ。そして、その物資を内へ極秘裏に運ぶための『きた鍵』を持たされた子供だよ」
梨が語った真相は、の像を絶するものだった。 満州の陸軍病院から引き揚げてきたその列には、ある研究の資料と、莫な額の軍用資(無記名の塊および軍用票)が積まれていた。そして、その庫の保管番号と暗号を託されていたのが、現で空襲により両親をくした軍属の孤児――当歳の、田健(たむら・けんいち)だった。
「本修等兵は、その護任務に就いていた。だが、敗戦によって軍が解体され、層部の将たちはその塊を自分たちの戦資として着しようと企んだ。邪魔になった健を、どこかので『病』として始末する計画だったらしい。
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……それに気づいた修君は、砂崩れの直、を連れて列から脱したんだ」
「じゃあ、修さんはを守るために……!」
「そうだ。だが、脱の際に修君はを打し、青川の支流の岩でき倒れになった。……はき延びたが、追っを恐れて逃げ隠れ、方をくらました。修君の遺体は、軍の残党のによってからへと処分されたと言われている。公式にきていては、塊の横領計画がるみにてしまうからな」
の喉がカラカラに乾いていた。 の。国の敗との欲がみした、あまりにも惨たらしい劇。
「なら、源吉さんは……父親である源吉さんは、そのことをっているんですか?」
「……っているさ」 梨は目を伏せた。 「――昭のにな。のが、この駅にふらりと現れたんだ。着たきり雀のボロボロの姿でな。そのが持っていたのが、君が見たあの『昭』の切符だ」
「えっ……!?」
「は、切符売りの窓にいた私に、震えるであの切符を差しした。『修さんに貰った切符です。これで、修さんのにけますか』とな。……だが、その、駅の周辺にはまだ軍の残党と結託したヤクザ者が張り付いていた。私は……恐ろしくなって、そのを追い返してしまったんだ。『ここには本というはない、度と来るな』と嘘をついてな……!」
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梨の拳が、自責ので激しく震えていた。 駅自もまた、、その罪を背負い続けていたのだ。
「は泣きながら逃げていった。そして、その部始終を……くの改札のから、源吉さんが見ていたんだよ」
は息を呑んだ。 源吉が待っているのは、んだ息子ではない。 息子が命を懸けて守り、そしてこの駅に度だけ辿り着きながら、の保によって追い払われてしまった、あのの「歳の」だったのだ。
「源吉さんは、を受け取っていたんだよ」梨が掠れた声で言った。「が逃げた、差のい葉が本に届いた。『いつか必ず、謝りにきます。曜に、あの駅へきます』と。……それ以来、源吉さんは毎週曜、あのホームに通い続けている。もう線が途切れていようが、関係ないんだ。あの子が戻ってくる所は、あそこしかないとい詰めているんだ」
点と点が、本の血塗られた線となって繋がった。 しかし、の胸にはたな、そして決定な疑問が湧きがっていた。
「待ってください。その――田健は、今どこで何をしているんです? なぜ、も経つのに、度も源吉さんのに姿を現さないんですか!?」
梨はゆっくりと首を横に振った。
「分からん。……だが、つだけ言える。もし彼が今もきているなら、彼は自分が『本修をに追いやった元凶』だと、自分を責め続けているはずだ。
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