"廃線の駅で待ち続けた父" 第7話
と叫んで、を抱きかかえての列からびりたのだ。
「から転がり落ちて、増した川の岩に打ちげられた。……俺は、修さんが庇ってくれたおかげで、背の傷と擦り傷だけで済んだ。だけど、修さんは……をく打って、血が止まらなかった」
健の瞳から、粒の涙がポロポロと零れ落ち、鉄で汚れたズボンを濡らした。
「息を引き取る際、修さんは俺に黒革の鞄を押し付けて、こう言ったんだ。『この鞄を、青の駅にいる親父に届けてくれ。……そして、おが俺の代わりに、親父の畑を継いでくれ。親父を……楽にさせてやってくれ』って……」
修の最の願い。 は泣きながら、まみれの鞄を抱えてを彷徨い、警察や黒崎の追っを逃れて、の歳をかけてようやく青駅へと辿り着いた。 それが、昭のことだった。
「だけど……駅の窓で、駅さんにたく追い払われた、俺はに返ったんだ」
健の声が、激しい悔で歪んだ。
「俺は何という浅ましいことを考えていたんだ、と。……息子を奪われた父親のに、その息子の命と引き換えにき残った見ずらずのガキが、のこのこと現れて『息子の代わりに養ってくれ』だなんて言えるはずがない! 俺の顔を見るたびに、源吉さんは修さんのをいして、獄の苦しみをわうに決まっている……!」
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は絶望し、駅の待の隅にあったゴミ箱の裏に、あの黒革鞄を隠し置き、逃げるように町をった。 そして、度と青のは踏むまいとに誓い、名を変え、元を隠し、今までのを歩んできたのだという。
「……健さん」
は静かに、けれどい力を込めて言った。
「あなたは違っている。源吉さんはね、あなたをんでなんかいない。あの鞄のを事に抱えて、あなたが帰ってくるのを、ただそれだけを信じて待ち続けているんだ」
「嘘だ!」健が顔をげた。「信じられるか! 実の息子を殺した元凶を、歓迎する親がどこにいる!」
「なら、なぜ源吉さんはも、のものも駅に通い詰めているんです!?」 はを乗りし、健の胸倉を掴まんばかりの勢いで叫んだ。 「源吉さんが守っているのはね、塊の類なんかじゃない! 息子が命を捨ててまで守り抜いた、あなたの『命』そのものなんだよ!」
健の呼吸が止まった。 その、鉄所の表の引き戸が、乱暴に蹴破られるような音をてていた。
「へえ……な再会劇の邪魔をして悪かったな、青」
煙の煙とともに現れたのは、昨夜青駅に現れたあの男――黒崎と、の屈な若い男たちだった。
「黒崎……!」
健が弾かれたようにちがり、を背に庇うようにして構えた。
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そのには、作業台から素く取った鉄パイプが握られている。
黒崎は元に酷な笑みを浮かべ、両をズボンのポケットに突っ込んだまま、ゆっくりと事務所のへと歩み寄ってきた。ろのの男の懐には、拳銃かドスのような々しい膨らみがある。
「田健君。ずいぶんと探したぜ。……神戸の鉄所で、真面目な旋盤になりすましていたとはな。の悪ガキが、ずいぶんと派な面構えになったもんだ」
「何の用だ、黒崎。俺は塊のことなど何もらんと言ったはずだ!」
「とぼけるなよ」 黒崎は煙の煙を健の顔に吹きかけた。 「あの第〇列に積まれていた陸軍の隠匿塊……価にして現の億円相当だ。その輸送目録と、陸軍野学がに偽装構築した倉庫の鍵――それが入った鞄を、おが持ち逃げしたことは分かっている」
黒崎の目が、ぎらりと血ったを帯びた。
「本等兵がに際におに託した、あの黒牛革の鞄だ。……昨夜、青駅で見張りをさせていた部から報告が入ってな。あのボケ老が肌さず持っている鞄こそが、探していた現物だと確認が取れた」
の背筋が凍りついた。 黒崎たちは、すでに源吉の鞄に狙いを定めていたのだ。
「老いぼれを始末して鞄を奪うのは造作もないことだがね。
あの鞄には、特殊な底と自爆用の硫酸アンプルが仕掛けられている。正しい解錠順をらんで無理にこじければ、の類は瞬で燼に帰す。
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