"廃線の駅で待ち続けた父" 第10話
チェーンの巻かれたタイヤがを巻きげ、旧ホームのすぐ脇、枯れがい茂る盤ので急する。 ドアがき、黒崎との男がりてきた。 そして、ろの席から乱暴に引きずりされたのは、両をろに縛られ、顔に青あざを作った田健だった。
「源吉さんッ!!」
が叫び、跨線の階段へと駆けそうとした。 しかし、黒崎の連れの男のが懐から黒りするブローニング拳銃を取りし、の元の煙に向けて発、乾いた発砲音を響かせた。
パアンッ!
い銃声がに反響し、ホームのがさくねがった。
「くなよ、国鉄の坊や」黒崎が酷な声で告げた。「これ以騒ぐと、駅ともども蜂の巣にするぞ。俺たちはただ、正当な持ち主の元へ国の財産を回収しに来ただけだ」
のる廃ホームので、銃声を聞いた源吉が、ゆっくりと顔をげた。 積もったが肩からサラサラと落ちる。 老の濁った瞳が、男たちに挟まれてのにたされている健の姿を捉えた。
「……健……なのか……?」
源吉のから、掠れた、震える声が漏れた。
健は顔をげることができなかった。 のに線を落としたまま、肩を刻みに震わせ、血を流す唇を噛み締めている。
「おが……健なんじゃな……」
源吉は杖を捨て、よろめく取りでちがった。
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ベンチから歩、を踏みす。
「来るなッ!」
健が痛な叫びをげた。その絶叫は、静まり返ったの駅に霊した。
「来るな、お父さん! 俺は……俺はあんたの息子を殺した悪魔だ! 修さんをなせて、のうのうとき残った化け物なんだよ! そんな鞄、く奴らに渡して逃げてくれ! 俺のことなんか、見なかったことにしてくれぇぇっ!!」
健の慟哭に、黒崎が嘲笑を漏らした。
「ハッ、美しい親子のだな。おい、じいさん。話がくて助かるぜ。その鞄をこっちへ寄越せ。そうすれば、その息子の代わりの命だけは助けてやる」
黒崎が歩、源吉に向かってを踏みした。 だが、源吉は黒崎など界に入っていないかのように、ただ真っ直ぐに、泣き崩れる健だけを見つめていた。
そして、老は胸の麻紐を解き、黒革鞄を両で捧げ持つようにして、のをみた。
「……修がな」
源吉の静かな声が、シンシンとるの音を切り裂いた。
「ぬ際、おに言ったそうじゃな。『親父を楽にしてやってくれ』と」
源吉のが、健のわずか数歩で止まった。
「健よ。……わしはこの、たりともおをんだことなどありゃせんよ。修が命を懸けて守ったおが、どこかできていてくれること……それだけが、わしがきていく唯の誇りじゃったんじゃ」
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源吉のが、健のにまみれた頬へと伸びようとした。 その――黒崎が横から割り込み、源吉の腕を乱暴に払いのけて、黒革鞄の取っを引に掴み取った。
「能きはあの世で垂れな、老いぼれ!」
黒崎が鞄を力任せに奪い取った瞬、鞄の底からカチリと、さくたい械音が響いた。
カチリ――。
その属音は、あまりにもさく、けれどそのにいた全員の鼓膜に、吉な鳴のように突き刺さった。
黒崎のきが、ピタリと止まった。 にした黒牛革の鞄。その真鍮の留めの隙から、プシューという微かなガスが噴きすような音とともに、ツンとした刺激臭――濃硫酸の匂いがち込めたのだ。
「し、しまっ……!」
黒崎が血相を変えて鞄を投げ捨てようとした、まさにその刹。
「くな、黒崎ッ!」
背から響いたのは、これまで誰も聞いたことのない、田健の号だった。
縛られていたはずの健の両から、縄がハラリと落ちた。 旋盤として鍛えげられた健の指先には、から隠し持ってきた本の鋭利な超バイト(切削刃具)が握られていたのだ。内で密かに縄の繊維を削り落とし、拘束を解いていた健は、黒崎の首めがけての勢いで組み付いた。
「貴様ッ!」
黒崎が拳銃を抜こうとしたが、健の全体をかけたタックルがその腰を砕いた。
はのに激しく転がり、黒革鞄がのホームのを滑っていく。
「撃て! このガキを撃ち殺せ!」
まみれになった黒崎が叫んだ。
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