"廃線の駅で待ち続けた父" 第15話
「さん、もう度回せ! チョークを引くな、アクセルを全だ!!」
が祈りを込めてキーを捻った。
ドガガガガガッ――バリバリバリバリッ!!
爆音とともに、青い排気煙が庫のに充満した。 の眠りから覚したエンジンが、激しい振とともに咆哮をげたのだ。
「捕まってろッ!!」
がクラッチを蹴ばし、レバーを叩き込んだ。 モーターカーは庫の製扉を内側から突き破り、の吹きすさぶ廃線のレールのへと、猛烈な勢いでびした。
バキバキと片を撒き散らしながら、黄いモーターカーがのへと躍りた。 赤錆びたレールのを、つのさな鉄輪がを散らしながら激しく軋む。
「追え! 逃がすなッ!」
背で黒崎の号が響き、拳銃の乾いた発砲音が発、夜空を切り裂いた。 銃弾が発、防ガラスの端を砕いて々にしたが、モーターカーは急激に加速し、駅の構内を脱して裾の暗がりへと突きんでいく。
ガタガタガタッ、ゴオオオオッ!
吹きさらしの荷台で、健は自らの套を脱ぎ、源吉の肩に巻きつけてく抱きしめていた。 「お父さん、丈夫か!?」
「へ、へいきじゃ……! 健、を見い!」
源吉が叫んだ。 方の線のには、分の歳が育てた雑林と、のみで垂れがった枯れ枝が壁のようにち塞がっていた。
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は歯をいしばり、防の割れた運転席でレバーを握りしめ続けた。 「突っ切るぞッ!!」
バキバキバキッ! 枝が体を激しく打ち叩き、の塊がフロントに叩きつけられる。 速キロ。現代の列から見れば亀のような速度だが、いつ脱線してもおかしくない崩壊寸の廃線のでは、それはと隣りわせの暴だった。
方から、ヘッドライトのが追いかけてきた。 黒崎の乗った型トラックが、線に並する旧国を、ガードレールを薙ぎ倒しながら猛追してきているのだ。
「しつこい野郎だ……!」
健が荷台の鉄パイプを構えた。 だが、その、の界の先に、決定な絶望が姿を現した。
第青川梁。 の害で流失した、あの崩落現だった。 桁は完全に抜け落ち、黒々とした渓の底で、激流がを剥いて渦を巻いている。 線は、断崖のメートルで、ぷっつりと途切れていた。
「君、止まれ! 止まるんだ!」 梨駅の叫びが聴のようにをかすめる。
はブレーキレバーを引こうとした。 だが――と錆が噛み込んだブレーキドラムは、甲い鳴をげるだけで、凍結した輪を止めることができなかった。
「ブレーキが効かない……!」
「何だと!?」
速キロのまま、モーターカーは断崖絶壁へと直線に滑っていく。
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あとメートル。メートル。
その、荷台の源吉が、ちがった。 老は吹きすさぶの、壊れた運転台の脇にある、もうつの古びた真鍮のレバー――式の「非常絡制弁」へとを伸ばした。
「源吉さん、危ない!」
「修が……修が教えてくれたんじゃ!」 源吉の皺だらけの顔に、鬼気迫るが宿った。 「このトロッコの止め方は、あの子が……征するに、わしに教えてくれたんじゃあああっ!!」
源吉の骨張った両が、渾の力を込めてレバーを逆回転させた。 輪のに備え付けられていた非常用ブレーキシューが、を夜空く噴きげながら、レールの部を力任せに噛み砕く。
ギャリギャリギャリギャリッ――!!!!
凄まじい属の断末魔が渓に反響した。 モーターカーは激しく体を横滑りさせ、線から脱線しながらも、のに突っ込んで急止した。 輪のわずかセンチ先には、漆黒の虚空と、渦巻く川面がをけていた。
「ハァッ……ハァッ……!」
静まり返ったの、の荒い息遣いだけが響く。 助かったのだ。
だが、堵の暇はなかった。 旧国から斜面を滑りりてきた黒崎が、拳銃を構え、を踏みしめながらいがってきたのだ。
「ここまでだ、ネズミども……」
黒崎の顔は、狂気と憎悪で歪んでいた。 銃が、源吉の胸元へと真っ直ぐに向けられる。
「よくもこずらせてくれたな。……塊の隠し所を吐け。さもなければ、こので全員あの世きだ」
健が源吉のにちはだかろうとした。
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