"昭和五十一年、消えた父の声を十八年後に聞いた" 第4話
奈津美は帳簿と県資料の複写を取り、元経理担当の吉井へ会った。
吉井は退職、息子ので暮らしていた。彼女は受領の文字を見て、額をいたのは自分だと認めた。ただし孝へ渡してはいない。部が「継所の業者へ直接届ける」と言い、印鑑箱から相沢の印を使わせたという。吉井は司の指示に従い、帰社したら本の署名をもらうつもりだった。その夜に孝が消え、翌朝、から「本が持って逃げたことにする」と告げられた。
「なぜ警察へ言わなかったんですか」
吉井は膝のでを組んだ。局には正社員の女性がほとんどおらず、婚して子を育てる彼女に再就職先はなかった。警察の聴取ではが隣に座り、帳簿どおり相沢へ渡したと答えた。数、局の経営が変わったとき訂正しようとしたが、受領の原本は失われていた。「あなたのお母さんに度会いにった。でもので帰った」と吉井は言った。
奈津美は謝罪を受けるために来たのではないと答えた。今から証言するかは吉井自に決めてほしい。ただし父がを盗んだと記された資料は、閉局も公文の部として残る。吉井は翌週、弁護士に相談して陳述を作ると約束した。奈津美は帳簿の原本を資料館の保管庫へ移し、閲覧記録を残した。
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閉局をに類が処分される能性を、もう無できなかった。
集落では、昭にダムの補償交渉が詰めを迎えていた。移転に同したには補償が入り、反対するは測量への入りを拒んでいる。毛ラジオは県の広報番組を受託し、ダムの必性を伝えていた。はその契約を取った責任者だった。孝は方で『空郵便』に届く民の葉を読み、放送されない見が増えていることを気にしていたという。
番組の葉は放送、半保して焼却する規則だった。だが倉庫には昭の束だけ残っている。奈津美が差を覧にすると、から届いた枚のうち、放送記録に載るのは枚。残りには赤鉛で《》とかれていた。退きへの、墓の移転、補償額の違い。放送にはすぎる内容もあるが、単なる曲の希望までされている。
枚だけ、《千代》の名でされた葉があった。表にはの消印、裏には曲名とい文がある。
《私はにんだことになっています。、娘を迎えにきます》
静は千代の娘を育てるため、戸籍は自分の妹として澄子をへ入れた。学の類には祖父母が父母となり、静はのい姉として振るった。ので呼び方を違えないよう、たちは澄子ので千代の話をしなかった。
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澄子が自分のをったのは、の就職類に必な戸籍謄本を見たときだった。した姉の欄と自分のを比べ、族へ問い詰めた。
孝が事をったのは、澄子が就職面接で局を訪ねただった。戸籍と実際の族関係が違うため、保証欄の説ができずにいた彼女へ、父が別で話を聞いた。放送局が秘密を守る全な所だったわけではない。それでも声だけでとつながる番組なら、母から連絡が来るかもしれない。澄子が臨職員を選んだをり、父はから届く葉を彼女へ渡すようになった。
静のには、砂崩れでくなったの位牌が並び、千代の名もそこにあった。命は災害のだが、実際にはをたともんだとも違う。族は毎そのに供養し、澄子も幼いころ母の位牌へをわせていたという。きているを者として祀ることが、当の族には秘密を守る方法だった。澄子がをったとき、ったのは母に捨てられたことより、自分も供養に参加させられていたことだった。
千代から届く現留には、京、川崎、名古と異なる消印があった。封筒の字は同じでも、差所は寮や旅館で、返事をすころには移っている。静は度だけ《澄子は元気》と返したが、宛先で戻った。
話のないみ込み部を転々とする女性にとって、故郷との連絡はが届く数の所へ限られていた。
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