"昭和五十一年、消えた父の声を十八年後に聞いた" 第9話
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完結第16話
廃線駅に殘された最後の切符
昭和43年、廃線となった白沢駅で、老駅長・源吉は毎年3月12日になると、昭和25年の日付が入った東京行きの切符を机に置いていた。若い駅員の修一が調べると、その日は14歳の少年・健一が故郷を離れた日だった。 健一は別の少年を助けるために名前を貸し、故郷では東京へ就職したことになっていた。しかし本人は別の土地で働き、母へ送った手紙も届かないまま、帰る場所を失っていた。源吉は、東京へ行きたくない健一を時代の流れに任せて送り出したことを、長年悔やんでいた。 源吉の死後、白沢駅へ戻った健一に、修一は最後の切符を渡す。それは旅立ちを促すためではなく、「いつでも帰ってきてよい」と伝えるために残された一枚だった。健一は草に覆われた廃線跡を歩き、置き去りにした故郷との時間に向き合う。歴史|昭和|ミステリー2.4万字5 9 -
完結第16話
12人の子を育てた母の墓から蛇が出た――納骨室を開けると、知らない骨壺が重ねられていた
母・澄江が亡くなって3年。65歳の長男・満は、12人のきょうだいと墓参りに集まった。すると1匹の蛇が墓石の隙間へ消え、91歳の父が「この墓は何かおかしい」と告げる。調べると、石板には工具の傷があり、寺の台帳には母以外の納骨記録がない。正式に納骨室を開けると、母の骨壺の上には見知らぬ骨壺が重ねられていた。火葬日は母の納骨から62日後。さらに、38万円の夜間作業伝票と23時43分の写真が見つかる。誰が母の墓を開け、なぜ別人の遺骨を3年間も隠したのか。やがて浮かび上がったのは、母を誰より慕っていたはずの親友だった。真相|遺體発見2.0万字5 437 -
完結第14話
搭乗直前、警察犬が機長に飛びかかった――10時32分、空港全便が止まった理由
瀬戸内空港で爆発物検索犬ハヤテを担当する高瀬直人。9時38分、搭乗口へ向かう黒川機長にハヤテが突然飛びかかり、フライトバッグから爆発物由来成分が検出された。だが、バッグの中には何もない。さらにハヤテは、168人を乗せて10時15分に出発する217号機へ向かい、再び警戒姿勢を取る。全7便が緊急停止する中、操縦席後方の点検パネルから見つかったのは、「10時32分」を示す謎の装置だった。機長は犯人なのか、それとも誰かに罪を着せられたのか。消された午前1時30分の記録と、バッグが視界から消えた47秒が、3年前の検修不正へつながっていく。真相1.7万字5 142 -
完結第19話
廃線の駅で待ち続けた父
昭和37年、源吉は毎週金曜日、15年前に列車が来なくなった青谷駅のベンチで誰かを待っていた。駅員の中村が古い記録を調べると、源吉の息子・修一は終戦後の列車事故で消息を絶っていた。 しかし修一は、事故の直前に戦災孤児の健一を助けるため列車を降りていた。源吉が本当に待っていたのは息子ではなく、「修一さんに助けられた。いつか会いに行く」と手紙を送った健一だった。 中村は30歳になった健一を探し出す。修一の家族を苦しめることを恐れ、15年間会いに行けなかった健一は、最後の金曜日に青谷駅を訪れる。源吉はその顔へ震える手を伸ばし、「修一に似ている」と静かに告げた。歴史|昭和|ミステリー2.9万字5 18 -
完結第11話
帰国した父が「家族を忘れた」と言った日
5年間の海外赴任を終え、昭和47年に帰国した隆夫。しかし家族の思い出を避け、海外での仕事ばかり語る父に、息子の修一は「家族を忘れてしまった」と感じ、親子の距離は広がっていく。 ある日、修一は父の鞄から、家族へ送られなかった大量の手紙を見つける。隆夫は家族を忘れたのではなく、自分が父親として忘れられることを恐れていた。帰国後も、5年間不在だった自分と向き合えず、海外で成功した会社員として振る舞い続けていたのだ。 再び海外赴任と昇進を提示された隆夫は、初めて会社ではなく家族を選ぶ。数年後、社会人になる修一へ「仕事は大事だ。でも、帰る場所をなくすな」と伝える。本当の意味で家族のもとへ帰るまでの、父と子の再生の物語。時代|歴史|昭和1.7万字5 7 -
完結第12話
消えた姉と18年後の手紙
昭和39年、19歳の佐和子は東京の洋裁店へ働きに出るため、柳行李を上野駅へ送った。しかし本人は店に現れず、上野に届いた荷物からは財布、印鑑、戸籍関係の書類だけが消えていた。家族は、佐和子の帰りを待ち続ける。 18年後、弟の浩二は父の遺品から、姉が乗るはずだった夜行列車とは別方向の列車に印を付けた時刻表と、失踪から2か月後に届いた姉の手紙を見つける。父は、佐和子が生きていることも、自ら家を離れたことも知りながら、家族へ隠していた。 横浜で姉を見つけた浩二は、佐和子が家族のために決められた人生から逃れ、自分の道を選んだと知る。やがて佐和子は弟と列車に乗り、母の墓がある故郷へ向かう。今度は誰かに決められた旅ではなく、自分の意思で選んだ帰郷だった。時代|歴史|昭和|ミステリー1.7万字5 9 -
完結第13話
死刑執行直前、1匹の犬が見つけた「8年前の嘘」
ホテルで起きた2人の殺害と放火の罪を着せられ、死刑判決を受けた設備技術者・相沢直人。無実を訴え続けて8年、ついに執行の朝が訪れる。その2日前、元婚約者の結衣と愛犬ハルの前に、かつて直人を犯人だと証言した男から連絡が届いた。「消された9分間を、私は持っています」。だが約束の場所に残されていたのは、男の車と携帯だけ。誰もが彼は帰ったと考える中、10歳になったハルだけが、閉鎖された研修施設の地下扉から離れようとしなかった。扉の奥に隠されていた人物、途切れた防犯映像、そして直人を死刑台へ送った8年前の嘘。1匹の犬が見つけた小さな異変は、止まっていた事件を再び動かし始める。真相2.6万字5 226