"妊娠八ヶ月の私を捨てた夫と義母に、静かな決断を下した日" 第2話
「だからって、げさに騒ぐなよ。術すりゃ助かるんだろ? それよりさ、正の段取りはどうすんだよ。母さんが買いしのリスト作って待ってんだぞ。おがかなかったら、母さんがで分の料理作ることになるんだぞ?」
を疑う、というレベルではなかった。実の親がの境をさまよっているに、この男ののにあるのは「正の段取り」と「義母の嫌」だけなのだ。
「……正志、あなた本気で言ってるの? 私の父がぬかもしれないのよ!? 正の準備なんかより、父の命の方が事に決まってるじゃない!!」
まれて初めて、喉が張り裂けんばかりに鳴った。 しかし、正志はため息をつき、信じられないほど傲な目を向けてこう言い放ったのだ。
「おさ、自分がどこのか忘れてんじゃないの?」
「……え?」
「嫁に来たんだろ? おの実なんて、もう『元族』じゃん。籍を抜いて俺のに入ったんだから、実の親なんて法律にも『もう』みたいなもんだろ。の病気にかまけて、本の正を蔑ろにする気かよ」
――。 、私を無償ので育て、慈しんでくれた両親が、この男にとっては「ただの」なのか。
その瞬、私のので、張り詰めていた本の太い糸が、音をてて千切れんだ。 目のにいる男は、私がして結婚したではない。
広告
血も涙も通わない、ただの怪物の抜け殻だ。
「……くわ。あなたが何を言おうと、私は父の元へく」
「あ、おい! 勝にしろよ! ただしには絶対戻ってこいよ! 母さんをらせたら、おどうなるか分かってんだろうな!!」
背に投げつけられた罵声を無し、私は財布と保険証だけをコートのポケットにねじ込んで、夜のへとびした。
京から幹線にび乗り、関の方都にある学病院へ滑り込んだのは、夜を回った頃だった。
集治療(ICU)ののえ切った待廊。する蛍灯ので、母はパイプ子にくを沈め、さく丸まって震えていた。
「お母さん……!」
「由……来てくれたのね……!」
母は私の顔を見るなり、堰を切ったように泣き崩れた。 父は急性筋梗塞を発症し、本の冠脈のうち本が完全に閉塞。は止に陥ったものの、現、緊急の冠脈バイパス術がだという。
「丈夫だから。お父さんはいだから、絶対に帰ってくるよ」
母の痩せた背をさすりながら、私自も恐怖で奥歯がガタガタと鳴っていた。 術の赤いランプを見つめながら、が鉛のようにく流れていく。 、、……。
計の針が午を指した、ようやく術のい扉がき、疲弊した執刀医が姿を現した。
広告
「……ご族の方ですね。術は無事に成功しました。閉塞していた血管の迂回を確保し、筋の血流は再しています」
母と私は、そのに崩れ落ちるようにして抱きって涙を流した。 しかし、医師の表は決してるいものではなかった。
「ただし、臓にかなりのダメージが残っています。最でもヶの完全な入院加療、そしてそのの期なリハビリテーションが必です。決して無理をさせてはいけません」
ヶの入院。 父の命は繋ぎ止められた。けれど、自営業を営む両親の暮らし、そして退院の介護。母にすべてを任せることなど到底できない。
堵と疲労の、私は正志に報告の話を入れた。朝の。当然、起きて勤の支度をしているのはずだった。
『……あ? なんだよ、朝っぱらから』
受話器の向こうの正志の声は、ひどく嫌だった。
「正志、お父さんの術、成功したわ。なんとか命を取り留めたの。でも……臓のダメージがきくて、最でもヶは入院が必だって言われたわ。お母さんじゃ病院の往復も続きも抱えきれないから、私、しばらく実に残って伝いたいんだけど――」
そこまで言った瞬、正志の声のトーンが、氷点まで急した。
『はあ!? 何言ってんだお。術は成功したんだろ? きてんならもう丈夫じゃねえか。
なんでおがそこに残る必があるんだよ』
「丈夫じゃないのよ! まだ集治療だし、母じゃ――」
『病院には医者も護師もいるだろ! おがいたって何もできねえじゃねえか! そんなことより、何度も言わせんなよ。
広告
おすすめ作品
-
完結第14話
私の退職金を奪った家族に、私は何も言わず家を出た
妊娠中の麻衣が13年間勤めた会社を退職すると、夫の竜太は退職金420万円を無断で義母の口座へ送金した。「嫁の金は家のために使うもの」と言う義母。返金を求めた麻衣に、夫は「文句があるなら出ていけ」と告げる。 麻衣は実家へ戻り、保存していた送金記録を持って弁護士に相談する。返還を求められた義母は「預かっただけ」と主張するが、自ら提出した口座明細には、夫の奨学金を返すために動かした60万円の記録が残っていた。 420万円を取り戻しても、麻衣は壊れた信頼まで元に戻ったとは思えなかった。離婚後、娘を産み、かつての職場へ復帰する。誰に許可を求めることもなく、自分で稼いだお金の使い道を、自分の手帳に書き込んでいく。嫁姑|夫婦|金銭問題2.2万字5 350 -
完結第15話
18年間閉ざされた納屋
31歳の美咲は、博士課程を修了したその日、18年間会えずにいた兄・直のことを確かめるため実家へ向かった。両親からはずっと「兄は施設で暮らしている」「会えば不安定になる」と聞かされ、施設名も住所も教えられていなかった。ところが帰り道、近所の女性から思いがけない一言を聞く。「直君、まだ裏の納屋にいるんだと思ってた」。実家へ駆け戻ると、古い納屋の扉には外側から2つの南京錠。窓は布で覆われ、食器と電気コードには最近まで使われた痕跡が残っていた。そして美咲が「お兄ちゃん」と呼びかけると、扉の向こうから2度、確かな音が返ってきた。18年間、両親は何を隠してきたのか――。兄弟姉妹|親子関係2.2万字5 332 -
完結第15話
妊娠中の娘が逃げ帰った夜、大富豪の母が動いた
妊娠8か月の娘・はるかが、顔に傷を負い、母エリコの家へ逃げ帰ってきた。病院では新しい肋骨の骨折に加え、以前の骨折痕も見つかる。夫・匠による暴力は、一度きりではなかった。 匠は巨大企業グループの創業家の一員。だがエリコはその地位にひるまず、娘の安全を確保し、診断書を残す。同時に信頼する会計士へ調査を頼むと、匠一家が関わる財団に巨額の不正な資金移動の疑いが浮かび上がった。 報道を受けても疑惑を否定し続けた匠は、緊急会見の最中、はるかへの傷害容疑で逮捕される。さらにグループの資金問題にも捜査が及び、権力を盾にしてきた一族は追い詰められていく。 母の行動が事態を動かす一方、すべての始まりにあったのは、はるかが自分とお腹の子を守るため、あの家から逃げ出した決断だった。因果応報|人生逆転|嫁姑|絶縁|親子関係|修羅場2.3万字5 1124 -
完結第19話
夫に捨てられた盲目の妻が隠していた秘密
三年前の事故で失明した咲は、夫・拓也から介護を疎まれ、深夜のサービスエリアへ置き去りにされる。しかし車が消えた直後、彼女はサングラスを外した。視力はすでに回復しており、拓也の不倫や財産強奪を知った咲は、義父・吉夫と協力して千日間“盲目の妻”を演じ、証拠を集めていた。 拓也は愛人リカと会社の金を横領し、咲の三億円の遺産まで奪って海外逃亡を企てる。だが口座は凍結され、持ち出した札束は新聞紙にすり替えられていた。さらに、寝たきりだと思っていた吉夫も回復しており、部下だと信じていた健太も内部調査員だったと判明。拓也は懲戒解雇され、横領の刑事告訴と五億円の連帯保証債務を突きつけられる。 すべてを失った拓也が助命を乞うなか、咲は最後の「答え合わせ」を始める。三年前に彼女を失明させたトラック事故は、偶然ではなかったのではないか――その一言を聞いた拓也は顔面を蒼白にする。物語は、事故に隠された拓也最大の罪が明かされる直前で途切れている。裡切られた|夫婦|修羅場2.8万字5 172 -
完結第13話
義母に逆らった妻を閉じ込めた夫が、翌朝失ったもの
義母への仕送りを断った夜、菜緒は夫の浩司にトイレへ閉じ込められた。冷たい床で朝を待ちながら姉に助けを求め、夫の発言を録音する。翌朝、姉たちが迎えに来ると、菜緒は「もうこの家には戻らない」と告げた。 避難先で菜緒が止めたのは、義母と義弟への毎月の送金、そして夫に渡していた家族カード。さらに、夫が口走った「部屋の件」を確かめると、菜緒が独身時代に買ったマンションへ、本人に無断で義弟夫婦を住まわせる話が進んでいた。 すでに置かれた荷物を見つけた菜緒は室内を記録し、玄関の鍵を交換する。義母からの抗議にも、援助と部屋の使用を断る意思を伝えた。閉じ込められた夜に握っていたスマートフォンから、菜緒は自分の暮らしを守るために動き始める。嫁姑|絶縁|親子関係|修羅場2.0万字5 1289 -
完結第15話
300億円の恩返し
結婚式当日、白いタキシードを着て新婦を待っていた琢磨に告げられたのは、「結婚は最初からドッキリだった」という言葉。銀行の創業家である新婦の家族は、彼を笑い者にし、その様子まで動画に撮っていた。 駆けつけた妹の未令は、兄を見下す銀行一家の前で財務担当者に電話をかける。彼女は世界各地で事業を営む企業グループの創業者で、その銀行には約300億円を預けていた。無名だった未令の夢を信じ、借入れの保証人になったのも琢磨だった。人生逆転|兄弟姉妹|真相|修羅場2.2万字5 584 -
完結第14話
臨月の私を追い出し、新居を売ろうとした義母
臨月を迎えた優香は、夫の出張中、義母から「里帰り出産なら、もう戻らなくていい」と実家へ追い出される。しかも自宅には義妹一家が住み着き、子ども部屋は勝手に美容サロンへ改装されようとしていた。 さらに、不動産会社が持参した資料から、共有名義の自宅が4,680万円で売りに出されていることが発覚。義母たちは優香夫妻の署名と印鑑を無断で使い、売却益を義妹夫婦の借金返済へ回そうとしていたのだ。 出張先から急きょ戻った夫・健太は、玄関で《売却物件》の内覧票と偽造された委任状を発見する。妻を守れなかった自分の甘さを認めた健太は、母と妹へ退去を命じ、優香とともに警察や弁護士、不動産会社へ相談。家と財産、そして生まれてくる娘の生活を取り戻していく。 「家族だから」という言葉で他人の人生を支配する義母たちに、明確な境界線を引いた夫婦。家とは、鍵や名義だけではなく、そこに住む人が自分の意思で未来を選べる場所なのだと描く、家族再生の物語。怒り|嫁姑|真相|修羅場2.1万字5 914 -
完結第15話
正月、娘に熱汁を浴びせた義兄へ110番
娘がグラスを1つ割っただけで、義兄は笑いながら熱い汁物を8歳の娘へ浴びせた。 しかも泣き叫ぶ娘を前に、義母も親族も止めるどころか「正月から大げさ」と笑っていた。 夫まで兄を庇い、「今日は丸く収めよう」と私に黙るよう求めてきた。 私は娘の腕を流水で冷やしながら、警察署長を務める実兄へ電話した。 「お兄ちゃん、今度はもう手加減しないで」 だが兄が私に命じたのは、身内の力を使うことではなく、「今すぐ110番して、証拠を全部残せ」ということだった。 その言葉で私は、義実家の天井に防犯カメラがあることを思い出した。 警察が映像を確認した直後、それまで「手が滑っただけ」と笑っていた義兄の顔色が一変する。 そして夫まで知らなかった“決定的な場面”が映っていたことで、あの正月に笑っていた全員の立場がひっくり返り始めた。怒り|嫁姑|親子関係|修羅場2.2万字5 2225