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"私を捨てた元婚約者が、十数年後に知った本当の私" 第3話

は商社の営業とはいえ、定で帰宅できる内勤寄りの部署にいた。にもかかわらず、自分のべたに浸けることすらしない。

ある夜、当直けの真子が猛烈な痛に襲われ、ベッドに倒れ込んで識を失いかけていた、吉は容赦なく真子の肩を揺さぶり起こした。

「おい、の朝イチで事な商談があるんだよ。ワイシャツにアイロンがかかってねえぞ。く起きてやってくれよ」

朦朧とする界ので、満げにを尖らせる婚約者の顔を見げた瞬、真子の胸の奥で何かが決定に音をてて崩れ落ちた。

この男は、自分というを見ていない。

の痛みを像する力が根本に欠落しているのだ。彼がしていたのは、真子というの女性ではなく、「若くして医師になる将来望な妻をに入れた、優秀な俺」という自己陶酔の板に過ぎなかったのだ。

真子のたいが落ち、会話はを追うごとに事務なものへと削ぎ落とされていった。

そんなある、真子は結婚式の招待客リストを巡って、決定な破綻の引きを引くことになる。

「ねえ、吉。あなたのお父様とお母様のお席なんだけど、主賓のテーブルとの距はこの配置でいいかしら」

真子が確認を求めた瞬、吉の表が目に見えて険しく歪んだ。

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「あ? ……おい、親父の名がリストに入ってんじゃねえか。消せよ」

「え……? お父様を結婚式に呼ばないの?」

「当たりだろ! お袋は呼んでもいいが、親父は絶対に呼ぶな。あんな頑固で代遅れのジジイ、せるかよ。恥ずかしいんだよ!」

がテーブルを激しく叩いた。

の父親は、伝統芸の特殊な指物技術を持つ、業界ではらぬ者のない名匠だった。代、吉はその父親をから尊敬し、「いつか親父を超える職になる」と誇らしげに語っていたはずだった。学に通いながらに通い、に豆を作って修していた期もあった。

だが、職の世界は厳しかった。わずか数ミリの狂いも許されない過酷な修に、来の飽きっぽさと根気のなさが災いし、吉はわずからずでから逃げしたのだ。「あんな古臭くて理尽な環境、やってられるか」と捨て台を吐き、父親と喧嘩の末に勘当同然でした。

それ以来、父親のそのものが、挫折した吉にとって最の劣等の象徴となっていたのだ。

真子は静かに、しかし決して譲らない声で返した。

「でも、お父様はあなたのたったの父親よ。お母様から伺ったわ、お父様、あなたがも、あなたが掛けた最初の作品をずっと仕事に飾っていらっしゃるって。

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結婚式という節目くらい、ちゃんと向きって解すべきじゃないの?」

「うるせえ! おに何が分かるんだよ!」

は逆し、子を蹴りばした。

「結婚式の主役は俺だぞ! 俺が呼びたくないって言ってんだから従えよ! 医者だからってから目線で説教すんじゃねえよ、気な女だな!」

は乱暴に財布と鍵を掴むと、玄関のドアを叩きつけるように閉めて夜のへとしていった。

散らかったリビングに残された真子は、く、く息を吐きした。

りは湧かなかった。ただ、底れぬ虚しさと、背筋が凍るような淡な諦が、胸の奥を満たしていた。

、当直を終えた真子は、学代からの親友である理恵と駅のカフェで落ちっていた。

「真子、顔が酷いわよ。目のにクマができてる。本当に丈夫なの?」

運ばれてきたカフェラテの湯気を見つめながら、真子はこれまでの経緯――丸投げされた結婚式の準備、切の事を放棄する吉の態度、そして実の父親を結婚式から排除しようとする理尽な癇癪について、淡々と打ちけた。

理恵は眉を吊りげ、りに刻みに震えていた。

「信じられない……! の頃から調子のいい奴だとはってたけど、そこまでクズだったなんて。真子、そんな男との結婚、本気で見直した方がいいわよ。

結婚したらもっと惨なことになるに決まってる!」

理恵の激しい憤りに、真子は苦笑いを浮かべた。友が自分のためにってくれることだけで、擦り減ったがわずかに救われるいだった。

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