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"給料袋を取り上げる姑と、娘の進学" 第5話

「私の料です! 私がで、をボロボロにして稼いできたおです! あの千円を、恵子に使ってください!」

タツは振り返り、ややかに言い放った。

「このの敷居を跨いだは、すべてこのだよ。嫌なら、ておき」

バタン、と奥のの引き戸が閉ざされた。 静まり返った縁側で、典子は爪が掌にい込むほど拳を握りしめていた。

(……分かった)

典子の胸ので、何かが完全に砕け散り、代わりにたい鋼のような決まれ落ちた。

このに頼んでも無駄だ。 夫に泣きついても無駄だ。 このは、最初から恵子の未来を「正のための肥料」としてしか見ていない。 ならば――私が奪い返すしかない。 誰の許もいらない。私ので、娘の未来を買い戻すのだ。

そのの午の仕事を終えた典子は、いつもなら直帰する商の角を曲がらず、駅通りへと自転らせた。

目指したのは、赤く丸い郵便ポストがつ、町のさな郵便特定局だった。 ガラガラと引き戸をけると、ストーブの灯油の匂いと、インクの混ざったの匂いがをついた。窓の奥では、そろばんを弾く音が響いている。

「すみません。普通為替の貯座を作りたいのですが」

典子はカウンターにをつき、擦れそうな声で申した。 応対にた若い局員が、怪訝そうに典子の顔を見つめた。

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、主婦が夫やに無断で、自分単独の名義で預座を設することは、決してではなかったからだ。

「ご本様の名義ですね? ご印鑑と、ご所を確認できるものはございますか」

典子はバッグの底から、嫁入り具の裁縫箱の隅に隠し持ってきた、自分の旧姓が彫られていないさな文判と、の従業員証を差しした。 所定の用に、震える所と氏名を記入する。

【預者氏名:井 典子】

井」の文字を、胸の奥が激しく脈打った。 夫の姓である「井」を名乗りながら、この座は、夫にも姑にもられてはならない、絶対の秘密の聖域なのだ。

「初回のお預け入れは、おいくらにされますか」 「……千円で、お願いします」

典子は、今の昼休みにの同僚から「先週て替えてもらった買いしの分」として返してもらった、くしゃくしゃの千円札を枚、窓のトレイに置いた。 局員が慣れたつきで械に数字を打ち込み、インクの匂いが残るさな青い通帳が渡された。

く。

『昭 預入 千円 残 千円』

たった千円。の入学には、分のにも満たない雀の涙のような額だった。 だが、その通帳のみは、典子にとって千の価値があった。 まれて初めて、の誰にもげず、誰の許も取らず、自分と娘のためだけに確保した「陣

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だった。

典子は通帳を胸ポケットの奥くにしまい込み、郵便局をた。 晩たいが頬を打ったが、議と寒さはじなかった。

(来からは、料袋をそのまま渡さない)

の事務主任には、あらかじめ頼み込んでおいた。 、支額からあらかじめ千円を別の袋に分けてもらい、残りの額だけを本式の料袋に入れてもらうように根回しを済ませていたのだ。 「し、実の母親に仕送りをしたくて」と嘘をついた。胸が痛んだが、背に腹は代えられなかった。

に戻ると、玄関にはすでにタツが待ち構えていた。 「遅かったじゃないかい。油を売ってたのかい」 「すみません、の片付けが引きまして」

典子は平静を装い、がった。 タツの目は、典子の元とポケットを鋭く見つめていたが、ではない今のところは、それ以追及してこなかった。

その夜、典子は族が寝静まった、押し入れの奥にある古い李の底、自分が嫁入り具として持ってきた着物の裏さな切れ込みを入れ、そこに青い通帳を滑り込ませた。 暗で、臓が鐘のように鳴り響く。 棒になったようなろめたさと、戦いに打ってた兵士のような昂揚が、典子の全を支配していた。

母の胸に吹き荒れる嵐を、歳の恵子が気づかないはずはなかった。

に入ると、恵子のらかな変化が現れ始めた。

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