みかん小説
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"炎天下に追い出された新人と、5年ぶりに戻った男" 第1話

むしりな。本社の敷の周り、全部終わるまで絶対に戻ってくるなよw」

。すでに照りつける太陽は容赦を失い、アスファルトからはる陽炎が界を歪ませていた。 気象庁が「症警戒アラート・急のを控えてください」と厳に警告を発する、気温度を超える猛暑の効いた涼しいオフィスから、せせら笑いと共に放りされたのは、今気に入社したばかりの入社員・潮見(しおみ・ちなつ、歳)だった。

誰ひとり、助け舟をす先輩はいなかった。 皆、画面に目を落としたままを見ないふりをし、総務部・黒岩の嫌を損ねることを恐れて息を潜めていた。 焼けたコンクリートのに、のベージュの軍をはめたは両膝をついた。照り返しがから顔を容赦なく炙る。いブラウスの背はすでに汗で肌に張り付き、胸元で揺れるプラスチックの社員証が、カチカチと乾いた音をてていた。

彼女が、この正気の創業者にして代表取締役社・正郎の「たったの実の娘」であることなど、社内の誰としてる由もなかった。

「……っ、ふぅ……」

額から滴る汗が目に入り、い痛みがる。ちくらみに襲われ、ふらりと体が傾いたそのだった。

「おい。

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こんな炎に素むしりなんてしてたら、命を落とすぞ。に入りなさい」

く、しかし驚くほどよく通る静かな声がからってきた。 差しされたのは、滴がついたたいスポーツドリンクのペットボトル。 がおそるおそる顔をげると、そこにはに焼けた浅黒い肌に、髪が混じる髪の男がっていた。グレーの半袖襟シャツにくたびれたボストンバッグを肩からげている。その腕には、で作業をしてきた者特の、腕計の跡だけがく残る逞しい筋肉がついていた。

「あ……ありがとうございます。でも、これ……私の仕事なので」

は唇を噛み締め、を張るように微笑んでみせた。 男はそんなをじっと見つめ、ため息をつくと、ボストンバッグの持ちに結びつけられていた古い麦わら子を器用に解いた。唾の縁がしほつれた、使い込まれた子だった。

差しとで勝負して、勝てるはいない。貸してやるから、これを被りなさい」 「え、でも……これ、切なものなんじゃ……」 「今から本社で働くことになった滝川という者だ。経営企画にいる。返すのはいつでもいい」

男――滝川武(たきがわ・たけし、歳)は、の顔を覗き込んだ瞬、そのをわずかに止めた。 汗に濡れた髪の奥にある、きな瞳の丸み。

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志のそうな眉の形。 (……誰かに、似ている) 誰なのかはせなかったが、胸の奥に微かな棘が刺さるのをじた。

滝川は静かに頷くと、階建ての本社ビルを見げた。 「ぶりか……」 自ドアがくと同に吹き気のへ、男は静かに吸い込まれていった。 渡された麦わら子の温もりを胸に抱きしめながら、っていく男の広い背を見つめていた。その会いが、会社を牛る腐敗した権力者たちへの「終わりの始まり」になるとは、このはまだらなかった。

しだけ巻き戻す。 その。正気の方子会社・製作所のあいのは、まだ始業だった。 それでも、敷全体には油とせられた属の独特な匂いが濃密に漂っていた。滝川武がこの、毎朝番に吸い込んできた匂いだった。

の正には、作業着を着たの若い員たちが集まっていた。 「滝川さん、本当にっちゃうんですね……」 「体、気をつけてくださいよ。京はいし、息が詰まりますから」

々に別れを惜しむ員たちに、滝川はに焼けた顔をほころばせた。 「ああ。このはもう丈夫だ。赤字の垂れ流しは止まったし、何よりおたちが自分の腕に誇りを持って働くようになった。……俺がいなくても、派にやっていける」

員のが、滝川のボストンバッグに括り付けられた麦わら子を指差して笑った。

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