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"炎天下に追い出された新人と、5年ぶりに戻った男" 第2話

「そのボロボロの麦わら子も持っていくんですか? 京の本社の綺麗なオフィスにゃ、似いませんよ」 「にここへばされてきた、畑仕事を伝った元のお袋さんからもらったんだ。苦しいを共にした相棒だからな。置いていく理由がない」

滝川が笑うと、員たちも声をげて笑った。 仙台に残してきた妻には、昨夜のうちに話を入れていた。『今度は京に戻るの? 単赴任も目ねぇ、体だけは壊さないでよ』と呆れ半分に笑っていたが、夫がどのような覚悟で本社へ向かうのか、妻は察しているようだった。

幹線を乗り継ぎ、滝川はぶりに京・品川にある正気本社ビルのった。 見げるガラス張りの巨なオフィスビル。、資材調達部で自然な委託費の横領疑惑を調査し、経営陣の逆鱗に触れて「厄介払い」として潰れかけの遷されたと、建物の威容は何つ変わっていなかった。

だが、滝川は正面玄関の自ドアへは直しなかった。 通用、荷物搬入、そして喫煙所の裏へと、ゆっくりとをかけてを運ぶ。 皿の吸い殻は盛りになり、吸い殻がで散らばっている。社員通用の連絡掲示板には、半の通達が褪せたまま画鋲で留められていた。

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(……やはりな。会社の素顔は、正面玄関ではなく裏る)

叩きげの滝川が、を再建するで骨の髄まで叩き込んできた鉄則だった。 表向きの業績や豪華な社を取り繕っていても、元の規律と社員への配慮が崩壊している組織は、必ず内側から腐っていく。

そして正の植え込みへと戻ってきた、目に入ったのが、あの炎で膝をつき、必に雑を引き抜いていたの姿だったのだ。 彼女の胸元で揺れていた社員証の部署名は「総務部」。 滝川は麦わら子を預けた気でえ切ったエントランスホールを抜け、事から指定されたフロアへと向かった。

エレベーターが階で止まる。 ドアがいた瞬び込んできたのは、無質なキーボードの打鍵音と、号に話応対の声、そして異様に張り詰めた澱んだ空気だった。

総務フロアの空気は、言で言えば「全」だった。

「滝川さんですね。あなたの席はあちらです」 事部から案内されたのは、フロアの番奥、が直撃する窓際の隅に押し込められた、型落ちの古いスチールデスクだった。 机のにはパソコンすら置かれておらず、ただプラスチックの卓名札がつ、ぽつんと置かれている。

【経営企画付 滝川 武】

「経営企画は最階の役員フロアにあるはずだが?」

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滝川が尋ねると、案内した若い事部員は目を泳がせ、声を潜めて言った。 「からのご指示です。『仕事はおいおい指示する。当面のは総務フロアで待していればいい』と……。申し訳ありません、私のではどうにも……」

あからさまな「飼い殺し」の事だった。 て直して実績をげたものの、経営陣にとっては依然として「過正を暴こうとした目障りな煙たい」。本社の最階に席を与えるわけにはいかず、かといって功績があるため平社員に格もできず、「役職なしの付」という宙ぶらりんな肩きで、総務の片隅に放置したのだ。

「構わんよ。の景もよく見えるし、いい席だ」 滝川は静かに微笑み、くたびれたボストンバッグを元に置いた。 席に着くと、フロア全体の様子が実によく見渡せた。誰が誰に怯え、誰が誰に媚びを売っているのか。ほどの社員が働く島ので、異様な力関係が渦を巻いているのがにとるように分かった。

そのに座っているのが、フロアの央、ひときわきな革張りの子にふんぞり返る男だった。 総務部・黒岩歳)。 仕ての良すぎる淡いブルーのストライプシャツの胸元をけ、袖からは級スイス製のダイバーズウォッチが覗いている。恰幅のいい肉付きの顔には常に脂ぎった笑みが浮かんでいたが、その細い目が優しく細められるのは、役員がフロアにりてきただけだった。

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