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"炎天下に追い出された新人と、5年ぶりに戻った男" 第3話

「おい、さん! 頼んでおいた来客用のお茶、まだないのか!?」 黒岩の声がフロアに響き渡る。 からりで駆け寄ってきたのは、でのむしりを終え、着替えたばかりのだった。顔はまだを持ち、赤く気している。

「も、申し訳ありません! ただいま淹れ直しました!」 「ったく、ノロマだな。卒のお嬢ちゃんは、お茶の温度つ満に調節できないのか? これだから最は使い物にならん。……あ、それから昨の昼の弁当、唐揚げじゃなくて幕の内にしろって言ったよな? メモも取れないのか?」

「部、昨の朝は『肉がいたいから唐揚げ弁当』とおっしゃいました……」 さく抗議の声をげた瞬、黒岩はバン、とデスクを平で叩いた。

答えする気か!? の指示にケチをつけるに、自分の無能さを恥じろ! うちの総務は忙しいんだよ。おみたいな何の役にもたないに、仕事をから取り取り教える暇なんてないの! 雑用を完璧にこなして、初めてスタートラインにてるんだよ。分かるな!?」

「……はい」 げた。 フロアのの社員たちは、まるで誰もそこにしないかのように、パソコンの画面を凝し続けていた。隣の席の先輩女性社員が、に同線を瞬だけ向けたが、黒岩の線に気づくと慌てて目を逸らした。

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(なるほどな……) 窓際の席からその景を眺めていた滝川の目が、たく細められた。 パワハラ、雑用の押し付け、名すら呼ばずに「さん」と記号のように扱う精神圧迫。 組織が腐敗するの典型な症状が、この部署には充満していた。

がトレイを片付けて自席に戻る途、窓際の滝川のデスクのを通りかかった。 彼女の両には、丁寧に畳まれたあの麦わら子があった。

「滝川さん……先ほどは本当にありがとうございました。経営企画とお聞きしたので、の階を探してしまって……」 「席の都でね、ここに借りしているだけだ。気にしなくていい」 「お返しします。助かりました」 が両で差し子を、滝川はで押し戻した。

「持っておきなさい。まだでの作業があるんだろう。……それにしても、君の名は?」 「あ……申し訳ありません、名乗りもせずに。総務部に配属されました、潮見です」

「潮見……」 滝川の胸の奥で、カチリと何かが噛みう音がした。 、滝川が入社員として配属された資材部で、厳しく、そして誰よりも温かく仕事を教えてくれた恩師――潮見美代子。 (そうか……美代子さんの……) 滝川は表を変えず、ただ穏やかに頷いた。 「いい名だ。……さん、無理はするなよ。会社のために命を削る必はない」 瞬目を見張り、そして配属されてから初めて、からの柔らかな笑顔を浮かべた。

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そのの午はフロアの隅にある類キャビネットので、古い支払い伝票の理を言いつけられていた。 「過分の総務関連の請求付順に並べ直して、指定の数を超えたものはシュレッダーにかけろ」 黒岩からの、絵に描いたような嫌がらせの単純作業だった。

埃を被ったのファイルを冊ずつき、伝票の束を検分していく。 単調な作業の最の指先がふと、枚の契約のコピーので止まった。

【業務委託契約解除通 対象:グリーン企画株式会社(植栽・環境美化業務)】

付は半。 「会社の敷内の植栽入れを部業者から打ち切り、経費削減を達成した」として、黒岩が経営会議でにアピールした案件だった。この契約解除により、万円の部委託費が浮いたとされ、その代わりに始まったのが、への「毎朝のむしり命令」だったのだ。

しかし――は、その隣に綴じられていた直納伝票を見て、息を呑んだ。

【支払先:グリーン企画株式会社 名目:本社植栽管理委託費 額:万円】 【支払先:グリーン企画株式会社 名目:本社植栽管理委託費 額:万円】 【支払先:グリーン企画株式会社 名目:本社植栽管理委託費 額:万円】

「……え?」

解約されたはずの業者に対して、毎万円の支払いが、今もなお寸分の狂いもなく継続してわれていた。

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