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"消えた子猫と、花壇の頑固おじさん" 第2話

さっきまでの恐怖を瞬で忘れったように、駆けそうとするクマの首筋を、郎が太いでぐっと制した。 「待て、クマ。まだあの男がいるかもしれん」 郎の慎な言葉に、僕もく喉を鳴らして頷いた。僕たちは茂みの縁から、そっと公園の央広を見つめた。

造のベンチの脇に、カゴにきなビニールバッグを積んだのママチャリが滑り込んできた。 自転りたのは、のウインドブレーカーを着た女性、みどりさんだった。 首にはタオルを巻き、腰にはアルコール消毒液のスプレーと黒いビニール袋を提げている。彼女はこの界隈で活するボランティアで、毎朝決まったに僕たちの様子を見に来てくれる、唯の理解者だった。

「こんちゃん、郎ちゃん、くまちゃん、おはよう。今はどこに隠れてるのかな?」

みどりさんがカゴからさなステンレス皿を取りし、ウェットフードのパウチをけた。 魚の芳醇な匂いが、朝に乗って僕たちの腔をくすぐる。 全を確認した郎がまず茂みから姿を現し、続いて僕とクマが駆け寄った。

「ニャーン」 クマが甘えた声をげ、みどりさんのスニーカーにすりすりと体を擦り付ける。

「はいはい、お待たせね。今も元気だった? お腹空いたでしょう」

みどりさんは分の皿に際よくご飯を盛り分け、僕たちががっつく姿を、面にしゃがみ込んでじっと見守った。

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ただご飯を置いてるのではない。の裏にダニはついていないか、目ヤニはていないか、歩き方に自然な引きずりはないか。みどりさんは毎、僕たちの体をその優しい差しで丹に観察していた。

僕たちがべている、みどりさんはベンチの周囲に落ちていたタバコの吸い殻や空き缶をトングで拾い集め、持参したゴミ袋へと回収していく。 それが、彼女が自分に課している「域猫のルール」だった。

だが、皿目のパウチが空になろうとしたその、背から鋭い靴音が迫ってきた。

「おい、あんた!」

みどりさんが驚いてがった。 振り返った先には、作業着の袖をまくりげ、で汚れた軍をはめた柄な男――先ほど僕たちを鳴り散らした、壇の男がっていた。

男の顔には、い眉の皺と、隠しようのない苛ちが刻まれていた。 胸元の名札には『』とかれている。

「あんたが、毎朝ここでこの野良猫共を餌付けしてる張本か?」

「え……はい。この子たちのお世話を担当している、域猫ボランティアの武内と申します。あの、何か……」

「何か、じゃないよ!」

さんはみどりさんの腕を掴まんばかりの剣幕で、レンガ造りの壇の方を指差した。

「ちょっとこっちへ来て、これを見てみろ!」

みどりさんは戸惑いながらも、さんのを追って壇へと歩いていった。

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僕たち匹も、くして植え込みのからそろそろとを追った。

壇のったみどりさんは、息を呑んでち尽くした。 掘り返された黒のあちこちに、無残に抉られた穴が空き、には潰れた球根が何個も転がっていた。の表面には、まぎれもない僕たちの肉球の跡が、くっきりと幾にも刻み込まれていた。

「……これ、今朝あいつらがやったんだよ」

さんの声は、く、りで震えていた。

「来所の子供たちや老ホームの連ぶようにとってな、町内会で予算を組んで、俺が作業で植えたオランダ産のチューリップの球根だ。それを、このザマにしやがって……!」

「申し訳……ございません……!」

みどりさんは々とげた。その背が、見たこともないほどさく縮こまっていた。

「すぐに、を戻して球根を植え直します。傷んだものがあれば、私が弁償させていただきますので……!」

「弁償すりゃ済むってもんじゃないんだよ!」

さんは面を踏み鳴らし、吐き捨てるように言い放った。

「餌をやるくらいなら、自分のへ連れて帰って飼えばいいじゃないか! で餌だけ撒いて、糞尿を垂れ流させて、壇をメチャクチャに荒らさせて……それで『命を切にしてます』なんて、虫が良すぎるとわんのかね!」

「この子たちは……代限りの命として、域で見守る許を……」

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