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"消えた子猫と、花壇の頑固おじさん" 第5話

突如、突が吹き荒れた。 ビュオッという轟音とともに、駐輪していたみどりさんの自転がガシャリと倒れた。 カゴからしたビニール袋が面に叩きつけられ、予備のフードパウチやタオル、消毒液が、へと散らばっていく。

「ああっ……!」

みどりさんが慌ててがろうとした瞬さんが傘を放りし、へと踏みした。

くな! 猫に傘を差してろ!」

さんは作業着をだらけにしながら、濁流と化した面からパウチをつひとつ素く拾い集めた。タオルを拾い、を払い、際よく自転を起こして荷台へ戻していく。

「……次の所にも、くのか」

さんが、に塗れたを見つめながらく尋ねた。

「はい。の倉庫に、待っている子が匹います」

さんはいため息をつき、拾いげた荷物を自転のカゴにしっかりと押し込んだ。 そして、自分のきな黒い傘を広げ直すと、みどりさんのへと差しした。

「……途まで、荷台を押してやる。さっさとわせて、くぞ」

みどりさんは驚きに目を見張り、それから泣きそうな笑顔でげた。 「……ありがとうございます!」

が、並んで嵐の向こうへと消えていく。 その背を見送りながら、僕の元で、郎がぽつりと呟いた。

「……ってのは、議なき物だな」

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だが、この嵐がった翌朝、僕たち匹の絆を引き裂く、本当の劇が訪れることを、このの僕たちはまだる由もなかった。

翌朝、嘘のようにれ渡った青空が広がっていた。 昨の嵐が洗い流した空気は澄み渡り、濡れたの葉が朝に照らされてキラキラと眩しく輝いている。

分。 くから、いつもの軽やかな自転のブレーキ音が響いてきた。

僕と郎は、寝のクスノキの根元からし、尻尾をピンとてて広へと駆けした。 昨を耐え抜いた達成と、空腹を満たしてくれるご飯への期待。 の自転からりたみどりさんは、いつもの温かい笑顔で僕たちを迎えてくれた。

「おはよう、こんちゃん、郎ちゃん! 昨はよく頑張ったわねえ!」

みどりさんはくステンレス皿をつ並べ、ばしいチキンのパウチをけた。 僕と郎は斉にを突っ込み、べ始めた。 だが、みどりさんのが、つ目の皿を取りしたところで止まった。

「……あれ? くまちゃんは?」

みどりさんががり、首を傾げてあたりを見回した。

「くまちゃーん? ご飯よー!」

いつもなら、みどりさんの声がした瞬に、を必に回転させて「ミャウ! ミャウ!」と鳴きながら真っ先にしてくるはずだった。いしん坊で、甘えん坊で、誰よりもご飯を楽しみにしていたクマ。

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郎が皿から顔をげ、をひくひくさせた。 僕もべるのをやめ、を澄ませた。 の音、くのの音。けれど、あの鈴を転がすようない鳴き声は、どこからも聞こえてこない。

「寝坊……かしら?」

みどりさんはそうに眉を寄せ、僕たちの皿の横にもうつの皿を置いた。 僕と郎は顔を見わせ、同に踵を返した。 昨夜、を避けるためにクマが潜り込んでいた、壇の裏にあるコンクリートブロックの隙。あそこへ戻らなければならない。

ツツジの茂みを掻き分け、狭い隙へと先を突っ込んだ。

暗いコンクリートの奥。 古びた段ボールの切れ端のに、さな黒との毛玉が、自然なほどさく丸まっていた。

「……クマ?」

僕が声をかけると、毛玉がピクッと微かに痙攣した。 ゆっくりと持ちがったクマの顔を見て、僕は息を呑んだ。

いつもの澄んだ琥珀の瞳は、黄く濁った目ヤニで固まり、半分しかいていなかった。さなの周りには乾いたがこびりつき、呼吸をするたびに「ヒュー、ヒュー」と苦しげな掠れ音が漏れている。

郎が体を潜り込ませ、クマのえ切ったを舐めた。 「クマ、ご飯が来たぞ。起きろ」 だが、クマは起きがることができなかった。肢を踏ん張ろうとしても、がプルプルと震えて崩れてしまう。

僕がクマの脇腹に自分の体を擦り付けると、湯のような異様な気が伝わってきた。

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