みかん小説
本棚

"消えた子猫と、花壇の頑固おじさん" 第10話

本棚の角にスリスリと頬を擦り付け、障子の破れ目を議そうにでチョイチョイと突く。 そして、部の隅に置かれていた、古い麻縄が巻かれた製の爪とぎ柱を見つけた。 にチャロが使っていた、爪痕の残る柱。

バリバリバリッ、バリバリバリッ!

クマは背をぐーんと伸ばし、で爪を研ぎ始めた。 研ぎ終えると、満そうに尻尾をピンとてて「ニャウ」とく鳴いた。 呼吸はもう苦しくない。喉の奥の嫌なゴロゴロした掠れ音も、すっかり消えっていた。

ギシッ、ギシッ……。

音が階段をがってきた。 さんが、さく刻んだ茹でササミの乗った皿を持って部へ入ってきた。

爪とぎ柱の横にいたクマは、瞬だけピクッとを伏せたが、もう逃げそうとはしなかった。 さんは畳のに皿を置き、どっこいしょと腰をろした。

「爪、研いだのか。……あいつの柱で」

さんは目を細め、ササミをがっつくクマのさなを、そっときな掌で撫でた。 クマは撫でられながら、美しそうに喉を鳴らす。 「ふん……欲だけはだな」

べ終えたクマは、元をで丁寧に拭うと、何をったのか、あぐらをかいているさんの膝のへと、ひょいとび乗った。

「うおっ……!?」

さんが慌てて両を浮かせた。 だが、クマは気にすることなく、さんの太もものでくるくると回回り、デニムにすっぽりと体を丸めた。

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そして、さんの腹部に額をぐっと押し当てると、しきったように目を閉じたのだ。

さんは、空で固まっていた両を、どうしていいか分からず震わせていた。 やがて、恐る恐る、壊れ物を扱うようなつきで、クマの背にそっとを乗せた。

トクン、トクン、トクン……。

さな、だが力く脈打つ命の鼓が、掌を通じてさんの全へと染み渡っていく。 猫を取って以来、え切っていたさんの胸の奥底に、消えたはずの温かい炎が、じわりと灯り直した瞬だった。

「……お、名はなんて言うんだ」

さんがさく呟いた。 クマは眠たげに「ミャ……」とく喉を鳴らした。

「クマ、か。……真っ黒な顔に、袋履きやがって。変な名だな」

さんは目尻の皺をくしゃくしゃにして笑った。 だが、その笑顔の奥に、公園の掲示板に貼りされたあの「斉捕獲」の通告のが、く、暗くち込めていた。

公園に残された、あの匹。 こんと、郎。 彼らに残されたは、刻刻と、砂計の砂のように失われようとしていた。

公園の側にある古い造平の自治会集会所。差しを遮る褪せた遮カーテンの隙から、梅の湿った気がじっとりと内に充満していた。

机がロの字型に並べられた部の奥、パイプ子に腰掛けた町内会の荒井が、扇子を激しく仰ぎながら机を叩いた。

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「いいですか、武内さん。々町内会としては、もう猶予はならんと結論をしたんです。砂の糞尿、ゴミ捨ての荒らし、そして何よりさんが丹精込めて入れしていた壇の破壊だ。これ以、あの野良猫どもを野放しにしておくわけにはいかない」

集まった民が、斉に頷く。にはさな子供のを引いた若い母親の姿もあった。

「うちの子、砂で遊んだが真っ赤にかぶれたんです。野良猫の回虫やノミじゃないかって児科の先にも言われて……怖くて公園にかせられません」 「夜に発期の鳴き声で目が覚めるのも耐えられないわ。餌をやっているがいるから居つくんでしょう? だとうなら、全部自分のに引き取ってくださいよ!」

厳しい非難の言葉が、矢継ぎに浴びせられる。 机の端にで座っていたみどりさんは、両膝ので拳を固く握りしめ、げ続けた。

「ご迷惑をおかけして……本当に申し訳ありません。ですが、公園にいる匹は、すべて私どものボランティアで勢・避妊術を済ませております。の先端にある桜のびらのようなカットがその印です。もう発期特きな声で鳴くことも、これ以子猫が増えることも決してございません」

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