"消えた子猫と、花壇の頑固おじさん" 第12話
目に見えないところへ追いやればそれでスッキリか? そんなのはの都の押し付けいじゃねえか!」
さんはちがり、窓の――々の葉が青々と茂る公園の敷を力く指差した。
「と猫が、どっちも困らねえやり方を、度くらい試してみろって言ってるんだよ」
さんの声が集会所のい壁を震わせた、部にはい沈黙がりた。 荒井会は扇子を握りしめたまま、苦虫を噛み潰したような顔でさんを睨み返していたが、やがて線を落とし、く息を吐いた。
「……具体に、どうする気なんだ。区の通告を撤回させるだけの現実な案があるのかね」
さんは待っていましたとばかりに、作業着の胸ポケットから枚の折りたたまれた方を取りし、机のに広げた。 そこには、きの公園の見取り図と、赤ペンでき込まれた詳細な計画が記されていた。
「まず、壇だ」 さんは太い指先で、側のレンガ壇をトントンと叩いた。 「のに、目の細かい防鳥用のワイヤーネットを敷き詰める。球根の芽がる部分だけ穴をけて、猫がで掘り返せねえようにの表面を完全に固定する。資材は俺が調達して、俺が施する」
「……ネットを張れば、確かに猫のは入らんな」荒井会が鏡の位置を直しながら図面を覗き込む。
広告
「だが、トイレはどうする。砂や通の糞尿被害が解決しなければ、親御さんたちは納得しないぞ」
さんは首を横に振り、公園のの角――公衆トイレの裏にある、の通りから完全にれた鬱蒼としたのを指差した。
「ここに、猫専用の『』を作る」
「専用の……?」みどりさんが顔をげた。
「ああ。ホームセンターで防腐処理した枠を買ってきて、メートル方の囲いを作る。に細かい真砂と消臭用の川砂をブレンドして敷き詰めるんだ。猫は本来、柔らかくて乾いたを好む。壇をネットで塞ぎ、あそこよりも掘りやすい専用の所を作ってやれば、排泄は自然とそっちへ誘導できるはずだ」
みどりさんがを乗りし、震える声で言葉を継いだ。
「清掃は……清掃は私どもボランティアが責任を持って、毎朝と毎夕の回、必ず確認いたします! 固まった砂の回収、周囲のアルコール消毒、脱臭用の酢液の散布を徹底します。砂の定期な入れ替え費用も、すべてボランティア側で負担いたします!」
民たちのから、微かな囁き声が漏れ始めた。 「……そこまでやってくれるなら、砂は汚れなくなるのかしら」 「壇が荒らされないなら、あえて無理やり追いす必もないのかも……」
空気が、確実に変わり始めていた。 だが、荒井会は依然として険しい表を崩さなかった。
広告
「さん、武内さん。理屈は分かった。だが、これは区の緑課が絡んでいる問題だ。あの役どもが、そんな作りの妥協案を簡単に呑むとはえんがね」
さんはニヤリとの端を吊りげた。 「緑課の課はな、昔うちの所にんでた奴だ。さっき話で話したら、『域民の形成が取れていて、苦がゼロになる実証ができるなら、捕獲の代執は止できる』と言質を取ってある」
さんは机のの首輪をポケットへしまい直すと、民全員を見回した。
「週だ。週の試期をくれ。もしそのに、壇が度でも掘り返されたり、砂にしいフンがつでも見つかったりしたら……そのは、俺が自分ので猫を捕まえて、区役所へ連れてってやるよ。文句はねえな?」
荒井会はく息を吸い込み、やがてゆっくりと頷いた。 「……分かった。週だ。さん、あんたの顔に免じて、町内会としても区へ捕獲猶予の申請をそう。だが、度でも破綻したら即座に終わりだぞ」
「ああ、等だ」
さんはそう言い残し、背を向けて集会所をてった。 みどりさんはちがり、民たちに向かって何度も何度も、涙を浮かべながらをげ続けたのだった。
翌朝、公園の空気は慌ただしくいていた。
午。まだが眠りから覚めきらない、軽トラックの荷台から材と具をろす乾いた音が響いていた。
広告
おすすめ作品
-
完結第10話
父の葬儀中「飯を作れ」と怒鳴った夫に、参列者が…
父の葬儀で喪主を務める美穂のもとに、夫・健一から何度も電話がかかってきた。用件は「今すぐ帰って飯を作れ」という身勝手な要求だった。二十年間、夫の暴言と厳しい金銭管理に耐えてきた美穂。父との最後の別れさえ邪魔され、ついに参列者の前で夫の怒声が響き渡る。すると、最後列に座っていた一人の男性が立ち上がった。その人物は亡き父の教え子で、健一とも思いがけないつながりがあった。因果応報|怒り|夫婦|親子関係|修羅場1.6万字5 2553 -
完結第15話
「柿の木だけは切るな」――庭から出た四人の遺骨
2024年、東京・品川の古い屋敷で、樹齢70年の柿の木が引き抜かれた。その根元から見つかったのは、大人一人と子ども三人の遺骨。20年前、この屋敷では住み込みの家政婦と三人の娘が姿を消し、家主である元校長は「金を盗んで夜逃げした」と説明していた。なぜ彼は、柿の木だけは絶対に切るなと家族に言い残していたのか。捜査を進める刑事・渡辺は、町の人々から尊敬されてきた元校長の過去と、20年間隠されてきた母娘の失踪の真相を追い始める。ミステリー|真実|真相1.7万字5 213 -
完結第12話
昭和35年、上野駅に現れた二人の「ハルコ」
昭和35年春。集団就職列車を迎えに上野駅へ来た食堂の主人は、「山本春子」と呼ばれた少女が二人同時に手を挙げたことに戸惑う。一人は店で働くために上京した春子。もう一人の晴子は、三年前に東京へ出た姉を捜していた。姉は故郷へ帰ったことになっているのに、家族は誰も会っていない。不審に思った主人が古い雇用通知書を調べると、晴子の帰郷を証明する書類に、自分の署名が残されていた。誰が少女たちの名前を使い、何を隠していたのか。集団就職の時代を背景に、書類一枚に翻弄された若者たちの人生を描く物語。時代|歴史|昭和|真相2.3万字5 83 -
完結第15話
「このおばあちゃん、危ない」六歳の孫が見たもの
六十八歳の静子は、夫を亡くしてから一人暮らしをしている。近所の蛇田さんは、毎日のようにお菓子を配って歩く親切なおばあさん。ところが、六歳の孫・小春だけは、なぜか彼女を避けていた。 ある日、三人でスーパーへ出かけると、小春が突然、静子の手を引いて言った。 「ばあば、このおばあちゃん、あぶない」 その直後、店員に呼び止められた蛇田さん。小春はいったい何に気づいたのか。お菓子に隠された秘密と、一人暮らしの老人たちが抱える寂しさを描く物語。人生逆転|祖父母と孫|真実|真相1.6万字5 369 -
完結第12話
150万円を払わせたママ友、次は寿司300万円
夫の昇進祝いで家族とレストランを訪れたひまり。楽しい食事の最後に告げられた会計は、なんと150万円。原因は、顔見知り程度のママ友・ぽて子一家が大量の料理を注文し、勝手にひまりへ支払いを押しつけたことだった。仕方なく立て替えたものの、返金を求めると渡されたのは、まさかのポテトチップスの空袋。しかも数日後、ぽて子は高級寿司店で新たな計画を立て始める。「ママ友なんだから払って当然」と言い張る一家に、ひまりが取った行動とは?因果応報|夫婦|真相|親子関係|金銭問題|修羅場1.2万字5 1147 -
完結第12話
毎朝「出ていけ」と怒鳴る隣人、測量の日に顔色が変わった
「引っ越しなさい!」毎朝七時、向かいの家の奥さんに怒鳴られる六十八歳のしず子。生まれ育った家を手放す気はないが、理由のない嫌がらせは日に日にひどくなり、相手の夫まで引っ越しを勧めてくる。しず子は言い返す代わりに、毎日の出来事をノートに書き留めていた。そんなある日、隣人の土地売却をきっかけに境界の測量が行われる。測量士が示した一本の線と、亡き祖父が残した古い封筒。そこには、長年の隣人関係を覆す意外な約束が隠されていた。怒り|真実|修羅場1.3万字5 562 -
完結第12話
新幹線で母娘の席を奪った女、現れた女性を見て絶句
五歳の娘パニミと夏休みの帰省を楽しみにしていた、弁当店を営むシングルマザーのパニコ。新幹線の自由席でようやく親子並んで座れたものの、見知らぬ女性に突然コーヒーをこぼされてしまう。服を拭くため席を外したわずかな間に、その女性は荷物を床へ放り出し、二人の席を奪っていた。娘を守るため、悔しさをこらえてデッキへ向かったパニコ。そこで偶然、日頃から世話になっている立花会長と再会する。事情を聞いた会長が一緒に席へ戻ると、先ほどまで威張っていた女性の顔色が一変して……。怒り|真相|親子関係|修羅場1.2万字5 1512 -
完結第10話
消えた卵の秘密
茜の家では、父の再婚相手・美津江が届けてくれる卵が、なぜか毎回なくなっていた。夜中につまみ食いをする夫の陽斗を疑っていた茜だったが、ある日、卵をこっそり持ち出す小学一年生の娘・凛を目撃する。「急に卵が嫌いになった」と泣く娘。しかし、いつもは素直な凛の様子はどこかおかしかった。そんな中、美津江から再び大量の卵が届く。茜は娘のために手作りプリンを用意するが、それを食べた美津江は、材料を聞いた途端に顔色を変えてしまう。娘が必死に隠していた秘密とは、いったい何だったのか。祖父母と孫|真実|真相|第二の人生1.4万字5 849 -
完結第12話
竹林の向こうの白衣
八歳のティアラは、重い喘息を理由に山奥の療養施設へ預けられた。だが本当の理由は、両親が天才と呼ばれる兄の教育に専念するためだった。家族に忘れられた少女を支えたのは、施設の人々と小児科医の竹之内先生。やがて彼女は自分の名前を変え、医師になる道を選ぶ。努力の末に脳神経外科医となった洋子は、ある冬の深夜、救急搬送された患者と向き合うことに。かつて自分を置き去りにした家族との思いがけない再会が、彼女の人生を大きく揺さぶり始める。兄弟姉妹|真相|絶縁|親子関係1.7万字5 600