みかん小説
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"入院中、母が勝手に老人ホームへ送られていた" 第1話

井を見つめながら息を吸い込むたび、の胸から脇腹にかけて鋭い軋みがった。

ひびの入った肋骨と、打撲で赤黒く腫れがった。医師からは骨折には至っていないと説されたものの、ベッドから自力で起きがることすらままならず、元には頑丈な固定具がたくっていた。

買い物帰りの夕暮れ、青信号の横断歩を渡り始めた直のことだった。折してきた乗用界の端で急激に膨らみ、激しい属音と衝撃が全を貫いた。救急のサイレンの音を途切れ途切れに聞いたのを最に記憶は途切れ、気がついたときにはこの清潔で無質な病のベッドのだった。

幸い命に別状はなく、全治から程度で退院できる見込みだという。だが、元にあるはずのスマートフォンは事故の衝撃で画面が蜘蛛の巣状に砕け散り、いくら源ボタンを押しても黒い液晶はを返さなかった。

「お母さんに、事故のことだけでも伝えてくれる?」

ベッド脇の丸子に腰をろした夫の健太に向かって、菜緒は掠れた声で頼み込んだ。

「今週末、病院の定期通院に付き添う約束をしてたの。連絡がつかないと、絶対に配してから探し回っちゃうから」

母のは69歳。に父をくして以来、古い造の平暮らしを続けている。

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患っている変形性膝関節症のせいでい荷物を持つことやの歩は難しいが、々の炊事や洗濯、庭の引きなどは「自分でできるうちは自分でやるの」と笑い、凛として暮らしていた。菜緒は週に回は仕事帰りに顔をし、灯油や米などのい買い物を届け、回の科への通院には必ず自していた。

母の自宅の固定話の番号は暗記していたが、病からナースステーションの公衆話へ歩くことすら今の菜緒には許されていない。頼れるのは、駆けつけてくれた夫だけだった。

「……ああ、分かった。着替えを取りにに戻るから、その途で俺から話しておくよ」

健太は元の壊れたスマートフォンを瞥すると、く頷いた。

その瞬、健太の線がわずかに宙を泳ぎ、菜緒の顔から自然に逸れた。結婚して、夫が面倒な問題から逃げようとするや都の悪い事実を隠そうとするに見せる、癖のような仕だった。

だが、事故の衝撃と痛み止めで鈍っていた菜緒のは、その微かな違く追及することができなかった。何より、病院へ駆けつけてくれた夫の堵し、任せておけば丈夫だとい込んでしまったのだ。

夕方、健太は入院続きに必類と着替えの入った袋を提げて病へ戻ってきた。

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「お母さん、た? 何て言ってた?」

菜緒がを乗りすように尋ねると、健太は荷物を棚へ詰め込みながら、背を向けたまま答えた。

「ああ、たよ。丈夫だってさ」

「びっくりしてなかった? 私の怪のこと、どこまで話したの?」

「別に普通だったよ。配はしてたけど、命に別状がないならしたってさ。それより菜緒、おは自分の体のことだけ考えろよ」

その答えに、菜緒の胸の奥でさな棘がちくりと刺さった。

母の性格なら、娘が交通事故に遭ったと聞けば、痛む膝を引きずってでもタクシーにび乗り、病院へ駆けつけようとするはずだった。怪の程度や入院期、担当医の名まで細かく問い質さずにはいられない質のはずだ。「丈夫だってさ」の言で済ませるなど、およそ考えられなかった。

「……、もう話してみてくれる? 私の声を聞かせたいから、病院の話を病まで引けないか護師さんに聞いてみる」

げさにするなって。怪が騒ぐと護師さんにも迷惑だろ。俺がちゃんと連絡取ってるんだから任せとけよ」

健太はそう言って、病のテレビの源を入れた。夕方のニュース番組のけたたましいアナウンスが、自然な沈黙を塗り潰していった。

入院目の朝、菜緒は護師の肩を借りて点滴スタンドを引きながら、デイルームに設置された緑の公衆話へと向かった。

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