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"凶悪犯と殺処分寸前の猫" 第8話

そして、普段なら分隔で巡回してくるはずの守の姿が、この分完全に途絶えているという異常事態。

「殺すつもりだったのか……こいつを」

腕ので震えるオレオの体温をじながら、アンソニーの拳がミシミシと音をてて握りしめられた。

かつてのアンソニーなら、今すぐ鉄格子を揺さぶり、警報ブザーを叩き壊し、スローンのへ殴り込んでその喉笛を素で引き裂いていただろう。暴を起こし、守を血祭りにげ、刑期が伸びようがったことではなかった。

だが——。

胸元で、オレオがさく「グルル」と喉を鳴らし、アンソニーの親指の付け根を甘噛みした。

ここで自分が暴力を選べばどうなるか。プログラムは即刻止。猫たちはすべて危険管理名目でシェルターへと送り返され、譲渡能のレッテルを貼られたままガスへ直する。ミラー副所が待ち望んでいるのは、まさにその「凶悪犯の暴発」という絵図だった。

「……乗らねえよ」

アンソニーはく、く息を吐きした。煮えたぎる血の底から、徹な理性を力ずくで引きずり戻す。

彼は清潔なナプキンを取りし、肉片に指を触れぬよう慎に包み込んだ。さらに、さなビニール袋に密閉し、自らの枕のくへと押し込んだ。

翌朝、午。点呼のブザーが鳴り響いた瞬、アンソニーは鉄格子のにった。

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巡回にやってきたのは、昨夜カメラのから姿を消していた当直守のオコナーだった。アンソニーの異様な気迫に気圧され、オコナーは警棒を握り直して歩ずさった。

「な、なんだカーター。点呼はまだだぞ」

「所を呼べ」

アンソニーの声は、く、周波のように廊の空気を震わせた。

「おい、何を言って——」

「所と、マレア医師を今すぐ呼べ。拒否するなら、俺は今からこの扉を蹴り破り、庭の非常ベルをすべて押す。……どちらがいか、試してみるか?」

アンソニーの瞳には、かつて警官隊を相に銃撃戦を繰り広げたの、え切った狂気のが宿っていた。守の顔から血の気が引いた。

午分。ペンドルトン刑務所の会議には、異様な緊張が張り詰めていた。

央のテーブルのには、アンソニーが提した包みと、マレア医師が簡易検査キットで採取した試薬カプセルが置かれていた。試験は鮮やかな赤に染まり、劇薬のをに示していた。

「濃度の殺鼠剤です」マレアの声はりで震えていた。「猫の体なら、欠片で致量に達します。しかも、この薬剤は般の受刑者がに入れられるものではありません。刑務所の備品管理、それも施錠された薬品庫で保管されているものと同じ成分です」

所のリチャードが、鋭い線を副所のミラーに向けた。

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「ミラー副所。昨夜のJブロックの当直責任者は誰だ」

ミラーは腕を組み、眉つかさずに笑を浮かべた。

「オコナー守ですが、何か? 所、これは受刑者同士の内輪揉めですよ。猫のが所内の秩序を乱し、反発をんでいる証拠です。やはり凶悪犯にペットを預けるなどという愚は即刻止すべきだ。原因となったオレオを速やかに処分施設へ移送し、Jブロックのプログラムを凍結することを言します」

「冗談じゃない!」

会議の扉を押しけて入ってきたのは、数名の受刑者を代表するとして特別に同を許されたカルロスとマーカスだった。守たちに両脇を固められながらも、カルロスは叫んだ。

「スローンの仕業だ! あいつらは猫が来てから麻薬が売れなくなって、ずっと腹をててた! 昨の夜、薬品庫の清掃に入ったのはスローンのの受刑者だ!」

「黙れ、受刑者がを挟むな!」ミラーがした。「証拠もない言いがかりで職員やの受刑者を侮辱することは許さん。カーター、おが自分で持ち込んだ毒物で自作自演をした能性すらあるのだぞ」

その瞬、会議の空気が凍りついた。

アンソニーは錠をかけられた両をテーブルのに静かに置いた。暴れす気配は微もなかった。ただ、その双眸がまっすぐにミラーの顔を捉えていた。

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