"昭和29年、教室から消えた子どもたち" 第3話
「本当に転することになるかもしれないの」
「何で」
「徳治さんの治療がくなったら、ここをるかもしれないから」
賃。
父親の仕事。
療養費。
活費。
夫のらないの事がいくつも絡んでいた。
信自はまだ元気だという。
ただし族内での染の能性があるため、検査を続けている。
「本にいていい?」
は瞬ためらった。
「病気のことはかないで」
「分かってます」
「学の子にも言わないで」
「でも」
「お願い」
声が切実だった。
夫は頷くしかなかった。
帰宅しても納得できなかった。
結核だから隠す。
隠すために転したことにする。
それでは本当に、信が何か悪いことをしたようではないか。
翌。
夫は最初に消えた森田子のを訪ねた。
は閉まっていた。
隣のの老が庭の掃除をしていたので、何気なく聞いた。
「森田さん、引っ越したんですか」
老は箒を止めた。
「ああ」
「どこへ?」
「さあな」
それ以話したくない様子だった。
だがしれたところで、背に声がんだ。
「お、同じ学か」
「はい」
老は周囲を見てから言った。
「余計なこと聞かない方がいい」
「どうして」
「病気のには、それなりの事がある」
やはり結核。
夫はそうった。
ところが数、
子から別の話を聞いた。
「森田さん本が療養所へったらしいよ」
「本が?」
「うちの母が百で聞いたって」
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信とは違う。
次に、組の坂本正夫について調べた。
同じ野球部だった級に聞くと、
「正夫は病気じゃないらしい」
「じゃあ何で」
「母ちゃんが結核になって、族ごと母親の実にったって」
これも違う。
子は本。
坂本は母親。
信は父親。
共通しているのは、
本が病気かどうかではない。
《族のに結核という言葉が入った》
それだけだった。
そして学は、
全員を同じ言葉で消していた。
《庭の事で転》
夫はますます腹がった。
保健へ直接った。
松永先が机で記録をいている。
「先」
「どうしたの、君」
「林は転してませんよね」
ペンが止まった。
「誰から聞いたの」
「ってます」
「君」
「森田さんも坂本君も、みんな事が違うでしょう」
松永先の表がくなる。
「そういうことを調べて回っているの?」
「だって、先たちが何も言わないから」
「言えないこともあるの」
「どうしてですか」
「本や族を守るためです」
夫はすぐに言い返した。
「隠すから余計に怖くなるんじゃないですか」
松永先は黙った。
「みんな、誰が次に消えるのかってってます」
「……」
「病気だったら病気だって言えばいい」
その瞬。
松永先の顔が変わった。
ったのではない。
しそうだった。
「君」
静かな声。
「言えば済むとう?」
「だって」
「その子が戻ってきた、同じ机に座ってくれる子ばかりだとう?」
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夫は答えられなかった。
「の器を嫌がるはいない?」
「……」
「その子のへ遊びにくなと言う親はいない?」
胸が詰まる。
「病気が治っても?」
「治ったも」
松永先は窓のを見た。
「だって、怖いものを正しく怖がれるばかりじゃないの」
夫はその初めて、
学が何か悪事を隠しているわけではないのかもしれないとった。
けれど同に、
別の疑問がまれた。
守るために隠す。
では、
その嘘はいつまで続くのか。
そして翌。
今度は、
夫自のへ通の封が届いた。
夕。
郵便受けから戻ってきた母・文は、通の封筒をにしていた。
差は青葉学。
「何?」
夫が聞くと、
文はすぐに封筒を裏返した。
「学から」
「僕の?」
「先たちの連絡じゃない?」
その声が自然だった。
母はいつもなら、
「ほら、あんた宛て」
とすぐ渡す。
そのは違った。
台所へ入り、
夫から背を向けて封をけた。
を読んだ瞬。
肩が止まった。
「母ちゃん?」
「何でもない」
「何ていてあるの」
「学のこと」
「見せて」
文はを折った。
「子供には関係ない」
その言い方に夫の胸がざわついた。
信の母も、
同じような顔をした。
「見せてよ」
「だめ」
「僕の学から来たんだろ」
「夫!」
珍しく母が声を荒らげた。
次の瞬。
文はを鉢へ投げ入れた。
夫は目を疑った。
「何してんだよ!」
の端にがつく。
夫は箸をつかんだ。
「触るな!」
「何なんだよ!」
を引きげる。
半分以が黒くなっていた。
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