みかん小説
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"昭和29年、教室から消えた子どもたち" 第4話

指でを払う。

読める部分はわずかだった。

そこに、

《夫》

自分の名。

その。

文字。

《精検》

夫のから音が消えた。

信の机から落ちた。

同じ文字。

母が奪い取ろうとする。

「返しなさい」

「何で燃やしたんだよ!」

「夫」

「僕、結核なの?」

文の顔が崩れた。

「違う」

「じゃあ何だよ」

「まだ何も決まってない」

「信のと同じじゃないか!」

「同じじゃない!」

母の声が震えた。

「じゃあ説してよ」

「……」

「学、僕も転したことにするの?」

文は何も答えない。

その沈黙が、

夫には答えのようにえた。

「母ちゃんも同じなんだ」

「何が」

「信のと」

「夫」

「病気より、にられる方が怖いんだ」

文のががった。

頬を叩かれるとった。

しかしは途で止まった。

そのまま力なくりた。

「怖いよ」

母は言った。

夫は初めて、

母がそんな言い方をするのを聞いた。

「怖いに決まってる」

「どうして」

文は鉢を見た。

「私の姉さん」

「伯母ちゃん?」

夫にはほとんど記憶がない。

母の姉・千代は、夫が幼い頃にくなっていた。

「若い、結核になった」

「ってる」

「らないよ」

文は首を振った。

「おは何もらない」

声がくなる。

「姉さんには、結婚する相がいた」

夫は母を見る。

「相のが、病気のことをった」

文は膝のでを握った。

「治っただった。それでも破談になった」

鉢の炭が赤くっている。

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「『結核のから嫁をもらえない』って」

夫は何も言えなかった。

「姉さんだけじゃない。うちまで言われた。あのは肺病のだって」

「でも、それ昔の話だろ」

「昔?」

文が顔をげた。

「何なら昔になるの」

夫は黙った。

「病気だけでを決められることもあるんだよ」

その夜。

夫は布団に入っても眠れなかった。

自分は結核なのか。

学から消されるのか。

信のように、

誰にも何も言えず、

教科を残したままいなくなるのか。

翌朝。

文は言った。

「学は休みなさい」

「何?」

「検査が済むまで」

「みんなには?」

文は答えなかった。

夫は笑った。

笑うしかなかった。

「庭の事で転?」

その言葉に、

母の顔が歪んだ。

夫は、学を休んだ。

初はがあることにした。

目からは、

「庭の事」

と学側が説したらしい。

信たちと同じだった。

自分がにいる、

教では自分の席だけが空いている。

誰かが、

「も転した」

と聞かされている。

考えるだけで腹がった。

精密検査は保健所でわれた。

母とでに乗る。

文はきも帰りもほとんど話さなかった。

待には、咳をする老もいた。

幼い子供を連れた母親もいた。

夫は自分だけが特別に選ばれたわけではないことを初めてった。

検査を終えた。

結果がるまでがかかると言われた。

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「学にはっていいんですか」

夫が医師へ尋ねると、

文が横から制した。

「先、その辺りは学と相談しますので」

「僕が聞いてるんだよ」

医師はを見た。

「今の点で、すぐに結核と決まったわけではありません」

「じゃあ何で精検なんですか」

「最初の写真で、もう度詳しく調べた方がいいがあったんです」

「染してるんですか」

「それもまだ分かりません」

はっきりした答えはない。

けれど、

「結核です」

とも言われなかった。

それだけでし息ができた。

帰宅すると、

信からが届いていた。

伯父のの所。

《夫へ母ちゃんから聞いた。おも検査だってな。こっちは退屈でにそうだ。川へく約束、まだ忘れてないからな。俺は今のところ何ともない。親父は療養所へ入ることになった。母ちゃんは泣いてばかりだ。学に戻りたい。でも戻ったら、みんなってるのかな。信》

夫は何度も読んだ。

最の。

《みんなってるのかな》

信も怖いのだ。

病気ではないかもしれない。

それでも、

父親が結核だとられることを。

夫は返事をいた。

《誰にも言ってない。でも、学のやり方は変だとう。みんな急に消えるから、もっと怖がってる。俺も今休んでる。戻ったら話そう。》

き終えた。

つ迷った。

《俺も精検だった》

それもいた。

隠したくなかった。

数。

結果は、

「現点では活性の結核を示す所見はない」

というものだった。

ただし経過観察が必。

夫はを完全には理解できなかったが、

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