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"昭和29年、教室から消えた子どもたち" 第9話

「恥ずかしい」

「何で」

「戻る方が怖いとかいたから」

夫は笑った。

「分かるよ」

「君も休んでたんだってね」

「しだけ」

「怖かった?」

「すごく」

子も笑った。

そのの放課。

教には空席がなかった。

何か特別なことが起きたわけではない。

でも夫には、

からずっと欠けていたものが、

ようやく戻ったように見えた。

がづいた頃。

信の父・徳治が療養所から帰宅できることになった。

完全退院ではない。

経過を見ながら自宅療養へ移る準備だった。

信は嬉しそうだった。

「親父、帰ってくる」

「よかったな」

「でも母ちゃん、まだ所に言わないって」

夫はし考えた。

「信はどうしたい」

「俺?」

「うん」

信は庭を見る。

「別に全部言わなくていいとう」

夫はだった。

以の自分なら、

隠すのは違いだとったかもしれない。

「ただ」

信が続ける。

「嘘は嫌だ」

「うん」

「聞かれたら、親父は病気だったけど良くなってるって言う」

「それでいいんじゃない」

「お、より適当になったな」

「おも」

で笑った。

徳治が戻った。

所の何かは距を取った。

挨拶だけしてで通り過ぎる。

骨に窓を閉める。

それでも、

以とは違うこともあった。

仕しの主がを訪ねてきた。

「仕事、戻らないか」

が驚く。

「お客さんが」

「文句言うもいるだろう」

主は答えた。

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「でも保健所にも聞いた。さん本が病気じゃないのに、ずっと休ませる理由はない」

すべての偏見が消えたわけではない。

それでも、

誰かが「怖いから」と言った、

別の誰かが「本当にそうか」と考えるようになっていた。

翌の。

再び検診が庭へ入ってきた。

同じい。

同じ械。

同じように徒が列を作る。

夫はになっていた。

信が隣にいる。

「、ここから全部始まったんだよな」

「ああ」

「今は誰も消えないといいな」

夫は言った。

「消えるんじゃなくて、休むだけならいい」

信が笑う。

「言うようになったな」

検診を終える。

夫はほど怖くなかった。

検査は病気を見つけるもの。

を消すものではない。

それをったからだ。

週。

のが期欠席になった。

内に噂が流れた。

「結核らしい」

「族らしい」

「療養所へった」

誰も本当のことをらない。

だが担任はこう説した。

「本と族の事でしばらく休みます。病名などを勝に推測して言いふらさないこと」

とは違う。

「転した」

とは言わない。

空いた席には、

教科もそのまま置かれていた。

戻る所が残されている。

夫はその机を見て、

さな違いだとった。

でも、

の信にはなかったものだ。

卒業がづいた頃。

夫は希望票をにしていた。

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へきたい。

母は、

「けるならきなさい」

と言った。

計は楽ではない。

それでも文は仕事を増やした。

ある夜。

夫が勉していると、

母が茶を持ってきた。

「また胸の検査あるんだって?」

「入るに」

「怖い?」

「ほどじゃない」

文は笑った。

「くなったね」

「母ちゃんも」

「私は昔からい」

「嘘」

で笑う。

夫はふとった。

伯母の千代。

森田子。

坂本正夫。

林信。

父親の徳治。

自分。

結核というつの病名の周りに、

全く違うがあった。

病。

族。

疑われただけの。

治った。

隠したい。

話したい。

誰も同じではない。

それなのに、

「結核の」

という言で全部同じにされる。

怖いのは病気だけではない。

をつの言葉へ押し込めることだった。

夫は母へ言った。

「伯母ちゃん、病気じゃなかったら結婚してたかな」

文はし考えた。

「分からない」

「そうか」

「病気じゃなくても別れたかもしれない」

「何だよそれ」

「なんてそんなもんよ」

母は笑った。

「だからこそ、病気だけで全部決められたくなかったんだとう」

夫は頷いた。

そのが、

ようやくし分かる気がした。

昭303。

卒業式。

体育館の窓からのが入っていた。

の話。

卒業証。

。

涙。

なら、

ただ退屈だとったかもしれない。

でも夫は、

隣に信がいることを何度も確認した。

の列には子。

しれた所に子。

あの消えたはずのたちが、

また同じ体育館にいる。

式が終わる。

。

信が言った。

「川くか」

夫は笑った。

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