みかん小説
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"昭和28年、妻が消える炭鉱町" 第8話

その夜、購買所へ戻ると、帳簿棚の鍵が替えられていた。

森が青い顔でっていた。

「佐伯が来た」

「何か言われました?」

「古帳簿を全部事務所へ移すって」

相もき始めた。

そして棚の番奥に残っていたはずの黒い通帳は、消えていた。

の夜。

炭鉱事務所裏の物置からがた。

幸いきな建物へ燃え移るに消されたが、保管されていた古類の部が焼けた。

翌朝、澄子が勤すると、佐伯が購買所へ来ていた。

「危ないから古い帳面は昨全部物置へ移したんだがな」

そう言いながら、森を見る。

偶然にしては来すぎていた。

黒い通帳も焼けたことになった。

「残ですね」

澄子が言うと、佐伯は初めて彼女を正面から見た。

「何が」

「昔の記録、なくなったんでしょう」

「古い切れだ。仕事には困らん」

その言い方で分かった。

佐伯は、澄子が何かっているとっている。

昼休み。

裏へると、古賀世話役が待っていた。

「澄ちゃん」

「何ですか」

「女で余計なことに首突っ込まん方がいい」

「余計なこと?」

「兄貴のも変なんやろ。仕事なくしたら、子どもどうする」

澄子は背筋がえた。

組へったことが漏れている。

「誰に聞いたんですか」

「何の話や」

古賀は笑った。

「親切で言ってやっとるだけたい」

そのの夕方。

兄の茂は坑内からがると、班から呼び止められた。

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翌週から持ち変更。

採炭ではなく、坑の積み込み補助。

当ががる。

理由は「の古傷を考慮した配置転換」。

誰が見ても警告だった。

「俺のせいで」

澄子が謝ろうとすると、茂は首を振った。

「これで分かった」

「何が」

「俺が黙っとった理由も、向こうは最初から分かっとったんや」

茂はを見た。

「仕事を触れば、俺らは黙る。を触ればもっと黙る。そうやって何も続いたんやろ」

その晩、田辺と松永も呼ばれた。

田辺は残業をされ。

松永は「社宅規則違反がある」と突然注を受けた。

軒ずつなら耐えられない。

しかし軒が同に同じことをされたことで、逆に何かがおかしいと周囲も気づき始めた。

田は言った。

「ここからは隠れてやるより、公にした方が全かもしれません」

「証拠、焼かれたやろ」

茂が言う。

田は澄子を見た。

「全部じゃない」

澄子たちには複写がある。

母の完済証もある。

節子から来た細もある。

さらに森は、事のに今分の与控除表を別の棚へ移していた。

そして焼け跡を片づけていた若い事務員が、田へ声で言った。

「佐伯さん、事ののに箱をつ運びしてましたよ」

焼失は、証拠がなくなったことをしなかった。

むしろ誰かが、何かを消そうとした事実が増えた。

澄子は、母の姉である倉の伯母を訪ねた。

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母が昭に「親戚の伝いへく」と言ってをた、その話をっていたがいるとすれば伯母だけだった。

伯母は最初、何もらないと言った。

だが澄子が完済証を見せると、目を伏せた。

「ハルが黙っとけと言ったんよ」

「何を」

「自分が働きにたこと」

母も選炭へ送られていた。

父が坑内で腕を傷め、か働けなかっただった。

借は千百円。

母はか働いた。

「帰ってきた、がぼろぼろやった」

伯母は言った。

「でも借は返せたってんどったよ」

「じゃあ、なんで黒い帳簿には残っとると」

「黒い帳簿?」

澄子は説した。

伯母は黙り込んだ。

しばらくして、古い茶箪笥から封筒をつした。

「これ、ハルから預かっとった」

には母のがあった。

《徳治には言わないでください。返済した額と、会社から来た残がいません。聞きにったら、計算は会社がするから女はをすなと言われました》

澄子の指が震えた。

続きがある。

《徳治はまた坑内へ戻ったばかりです。騒いで仕事を失ったら困るので、もう聞かないことにします》

母も気づいていた。

でも止めた。

を守るために。

父の仕事を守るために。

節子たちと同じだ。

「母ちゃん、何もしてなかったんじゃない」

澄子が呟くと、伯母は首を振った。

「したよ」

「何を」

「これを取った」

完済証だった。

母は返済が終わった、係員へ頼み込んで証をさせた。

「いつか必になるかもしれんって」

母は声をげなかった。

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