"昭和28年、妻が消える炭鉱町" 第11話
調べる側として戻ってきた。
そして翌から購買所の奥では、女たち自がずつ自分の記録を確認し始めた。
「このは休んだ」
「この費はすぎる」
「この送はに届いてない」
今まで会社と夫しか触れてこなかった「族の」の話へ、妻たち本が座るようになった。
それがこの町で起きた、番きな変化だった。
調査の途、澄子の父・徳治の記録も正式に確認された。
母がか働いて返したは、購買所の控えでは全額入っている。
会社の正規帳簿でも、実際には完済処理されていた。
黒い《族貸付》通帳だけが、未完済として残されていた。
「じゃあ、父ちゃんの借は本当は終わっとった」
澄子が言うと、田は頷いた。
「黒い方は、佐伯が別に作っていた管理帳だった能性がい」
さらに奇妙なことが分かった。
父がくなった翌。
別のの欄に、《本旧残より振替》という記載がある。
しない借を、のしい貸付の根拠に利用していた。
実際のがかなくても、帳簿のでは「残」が材料になる。
過の借が、しい借を作る。
「の名までにしとったんや」
森が吐き捨てた。
澄子は母のを改めて読んだ。
母が審にったことは正しかった。
でも証できなかった。
当は庭ごとの数字が孤していた。
今は違う。
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何軒分を並べられる。
「母ちゃんに見せたかった」
澄子が言うと、節子が隣から答えた。
「見とるよ」
「何が」
「その証残しとったやろ」
節子は母の完済証を指した。
「見つけてほしかったんやない?」
そうかもしれない。
ただの切れではなかった。
母が未来へ残した、「私は返した」という声だった。
澄子は完済証を封筒へ戻した。
もう仏壇の奥へしまい込むつもりはなかった。
調査資料の番へ置いた。
佐伯は週、自ら警察へしたと町へ伝わった。
を持って逃げたわけではなかった。
親戚宅へを寄せ、会社の方を見ていたという。
会社は佐伯の正として処理したがった。
しかし資料を追ううち、組側の管理者もにわたり差額処理へ関わっていたことが分かった。
「悪者にして終わらせたら、また同じことになる」
田は組の集会で言った。
問題は佐伯の性格だけではない。
借を抱えた庭が会社へ逆らえないこと。
社宅と仕事が体になっていること。
夫が妻の労働内容を把握せず、妻本も自分の残を見られなかったこと。
「確認できない仕組み」そのものが、正をく隠していた。
しい取り決めが作られた。
貸付を受けるは本と配偶者双方へ細を渡す。
与から控除した額を毎示する。
族が部で働く、その賃細を本へ直接渡す。
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紹介業者への数料を族の借へ乗せしない。
古い貸付残については全戸へ確認をす。
完済が確認された分は消す。
けば当たりのことばかりだった。
けれど、今までその当たりがなかった。
未払い分の精算も始まった。
全額がすぐ戻ったわけではない。
組側の記録が欠けているもある。
証できない差額もある。
それでもくの庭で残が幅に訂正された。
田辺は千円以とされていた借が、実際には千円を切った。
松永はすでに完済していた。
川崎には逆に払い過ぎがあり、返対象になった。
兄のも、節子が戻った点で本当の残りは百円だった。
千円を超えていたはずの数字が、百円。
茂はを見つめたまま言った。
「これのために、節子は子どもとれたんか」
節子が答えた。
「百円のためじゃない」
茂が顔をげる。
「あんたが数字を確かめんかったからでもない。私もかならって信じた。みんな、信じるしかなかったんよ」
そしてしを置いた。
「でも次からは、自分のは自分で見る」
夫婦はそのすぐ以のようにはならなかった。
それでも茂は毎、料袋をけると節子のへ全部した。
で数字を確かめた。
そこからやり直した。
の料。
購買所には朝からがかった。
米を買う者。
子どもの駄を選ぶ者。
煙をまとめて買う坑夫。
いつもの料だった。
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