"一着の学生服を分けた双子" 第1話
昭414、のあいにある川町では、庭の隅にまだ黒ずんだが残っていた。町川学組の担任になった浦圭介は、学期が始まって週ほどで、席簿のに妙な規則性があることに気づいた。
信夫と昭夫。分違いでまれた双子で、丸い目とし尖った顎までよく似ているが、兄の信夫はの眉尻にさな傷があり、弟の昭夫は笑うと頬だけにえくぼができた。そのため浦には見分けることができたが、議なことに、を同に見分ける会そのものがほとんどなかった。
曜に信夫が来れば昭夫が休み、曜には昭夫が現れて信夫の席が空く。曜は々ずれたものの、方が席すると、もう方が必ずと言っていいほど欠席していた。
「昭夫はどうした」
ある朝、浦が尋ねると、信夫は黒板を見たまま答えた。
「弟はし体がいんです」
ところが翌、昭夫は庭を駆け回り、体育の千百メートルでは学でも位に入った。浦が「昨は具が悪かったのか」と聞くと、昭夫は瞬戸惑った、「はい、もう平気です」と答えた。
また別のには、昭夫が「兄ちゃんはの伝いで休みました」と説した。貧しい庭では農作業や業を伝う子供もまだ珍しくない代だったため、つつだけを見れば自然ではない。
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それでも、浦にはもうつ気になることがあった。
学だった。
信夫が着てくる黒い詰襟の袖にはっぽい擦れがあり、第ボタンの縁にはさな傷があった。胸ポケットのには、黒糸で縫い直した跡もある。
翌、昭夫が着てきた学にも、全く同じ傷があった。
最初は同じ仕で作っただから似ているのだろうとった。しかしになってもになっても、補修跡までつ残らず致している。
「、おたち学を取り違えてないか」
冗談めかして尋ねたこともあった。
信夫は笑わなかった。
「違います」
それだけだった。
のある朝、浦はいつもより本い列で川駅へ着いた。駅を学へ向かって歩いていると、《阿久津材》とかれた板ので、の作業着を着たがい板材をのと運んでいるのが目に入った。
信夫だった。
背には細かな屑が張りつき、にはい軍。学へ来るはずのなのに鞄も学も持っていない。
「!」
浦が声をげると、信夫は振り返った。教師の顔を見た瞬、らかに表が張った。
「先……」
「今は学だろう。何をしている」
「父ちゃんに、しだけ頼まれて」
「しだけって、こんなからか」
信夫は答えなかった。材の奥から男に呼ばれると、逃げるように裏へ入っていった。
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浦は追いかけようとしたが、始業刻が迫っていた。まず学へき、事を確認しようと考えた。
組の戸をけた瞬、そのが止まった。
信夫の席にが座っていた。
信夫とほとんど同じ顔。
だが頬にさなえくぼがある。
昭夫だった。
そして昭夫が着ていたのは、昨まで信夫が着ていた学だった。
袖の擦れ。
第ボタンの傷。
胸ポケットの黒い縫い目。
すべて同じ。
昭夫も浦と目がった途端、にしていた鉛をへ落とした。
浦は何も言わず教壇へ向かい、席簿をいた。これまでただの偶然だとおうとしてきた欠席欄が、突然つの形を持って見え始めた。
この兄弟は、
何かを交代している。
そして、それは学だけではないのかもしれなかった。
放課、浦は昭夫を教に残し、職員から阿久津材へ話をかけた。事を説すると、話の男は面倒そうな声をしたが、ほどして作業着姿の信夫が学へ戻ってきた。
の差す教に、浦と双子だけが残った。昭夫が脱いだ学を机のへ置くと、信夫は最初から何もかも分かっていたように俯いた。
「この学は誰のだ」
浦が尋ねてもは答えない。
「信夫のか。それとも昭夫のか」
しばらくして、信夫がさく言った。
「俺のです」
ところが昭夫がすぐに顔をげた。
「俺のでもあります」
浦は鳴るのをやめ、のへ子を引いた。
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