"一着の学生服を分けた双子" 第5話
「昭夫!」
呼ばれても逃げなかった。
「先、俺、ここで働きます」
「何を言ってる」
「から。兄ちゃんの代わりに」
阿久津が横からを挟んだ。
「俺はまだ雇うとも言ってないぞ」
「じゃあ雇ってください」
昭夫は阿久津へ向き直った。
「兄ちゃんより俺の方が力あります。いものも運べるし、朝もく起きられます」
「誰が兄弟を比べろと言った」
浦が肩を掴む。
昭夫は唇を噛んだ。
「兄ちゃんはがいいんです」
「だから?」
「学へけばいい」
「おは?」
「俺は働けばいい」
言葉だけは簡単だった。
しかし声は震えていた。
そこへ信夫がってきた。
息を切らし、
昭夫を見るなり胸ぐらを掴んだ。
「ふざけんな!」
「何だよ!」
「俺がくって決めたんだ!」
「勝に決めただろ!」
「兄貴だからだ!」
昭夫の顔が歪んだ。
「双子だろ!」
信夫のが止まった。
「分くまれただけで、何で兄ちゃんだけ全部決めるんだよ」
昭夫の目から涙が落ちた。
「制は半分にした。定期も半分にした。学も仕事も半分。なのにからだけ、兄ちゃんが全部持ってくのはおかしいだろ」
「持ってくんじゃない!」
信夫も泣いていた。
「俺がけば、おはに残れるんだよ!」
「それが嫌なんだよ!」
は殴りわなかった。
ただ互いの胸を押しながら、
泣いていた。
浦はその姿を見て、
自分がこれまで、
「学へ来い」
としか言っていなかったことを恥じた。
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毎学へ通う。
正しい。
だがそれを実した瞬、
の活はどうなる。
借。
父親の収入。
母親の体。
の米。
教師の正論で、
それらが消えるわけではない。
浦は阿久津へ向き直った。
「からの採用、度保留にしてください」
「先が借払うのか」
「払いません」
「ならをすな」
「でも借と子供の就職を緒にするのは違う」
阿久津は目を細めた。
「俺は料を払うんだぞ」
「なら就職は就職として選ばせてください」
「先」
阿久津はく言った。
「この町じゃ、学たら働く子は珍しくない」
「っています」
「じゃあ何が悪い」
「自分で選んで働くことと、の借の続きとして働くことは違います」
阿久津は返事をしなかった。
浦は続けた。
「それから、さっき話で言った借の額。どういうです」
阿久津の顔から表が消えた。
「正さんは残額を把握していません」
「だから?」
「あなたはっている」
しばらくして、
阿久津は煙へをつけた。
「りたいなら帳面を見ればいい」
その言葉が、
しい扉をいた。
の紹介で、町の民委員・佐野清吉がへ来た。歳の元郵便局員で、域の活相談をく担当している男だった。
「まず、いくら借りて、いくら返したかを分けましょう」
佐野は澄が保していた古い領収や薬局の包み、正の料袋を枚ずつ畳のへ並べた。
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最初の万円。
次の千円。
の薪代。
賃。
米。
薬。
確かに何度も借りている。
方で、
毎の料袋には、
《借返済 千円》
《借入返済 千円》
という控除が残っていた。
「これを全部すと」
佐野が鉛をらせる。
正はそうに横から覗き込んだ。
「先、俺はまだ万以あるとってる」
「どうして」
「阿久津さんにそう言われた」
佐野のが止まった。
「万以?」
「はい」
「借りた総額を考えると、しおかしいな」
翌。
佐野と浦は材へった。
阿久津は嫌そうな顔をしたが、
「残額確認だけだ」
と言われると帳面をした。
借入。
返済。
作業着。
薪。
米。
見。
正借り。
細かく記録されている。
佐野はずつ別へ写した。
やがて、
《調 百円》
という項目でが止まった。
翌にもある。
その次は百円。
さらに翌は百円。
「これは何だ」
「端数だ」
阿久津が答えた。
「何の端数」
「細かい入りの調だ」
「利息か?」
「そんなげさなものじゃない」
佐野は何も言わず、さらに頁をめくった。
次にてきたのは、
《具損耗》
《保管費》
《期当相殺》
正の料袋にはない項目だった。
「本に説したか」
佐野が聞く。
阿久津の声がくなる。
「昔からそういう計算だ」
「昔からなら正しいとは限らん」
事務所が静かになった。
。
佐野は帳面を閉じた。
「正確な数字はに持ち帰って計算する」
浦が待ちきれず尋ねた。
「ただ、万円以は残ってないんですか」
佐野は阿久津を度見てから答えた。
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