"一着の学生服を分けた双子" 第9話
信夫も笑った。
数。
今度は信夫へ、
隣の械部品から採用通が届いた。
同に、
定制の入学続き案内。
信夫は枚のを机へ並べた。
働く。
学ぶ。
どちらかつではなく、
両方を選ぶだった。
正はい、
を見ていた。
そして、
「俺がのには考えもしなかった」
と呟いた。
信夫が聞く。
「父ちゃんもきたかった?」
正はし笑った。
「学は嫌いだった」
族が笑う。
その笑いのに、
ようやく以とは違う余裕があった。
昭423。
卒業式の朝。
には着の学が並んでいた。
着は、
が交代で着てきた古い学。
もう着は、
学から譲られた学。
「俺、古い方」
信夫が言う。
昭夫がすぐ返した。
「何で」
「最初から俺が着てた」
「半分俺のだろ」
「じゃあ第ボタンやる」
「いらねえ」
が笑う。
澄が襟を直した。
正は黙って靴紐を結んでいた。
駅へ向かう。
今度は枚の定期券。
改札で浦がを見つけた。
「今はそろってるな」
信夫が呆れた。
「先、半くらいずっと緒です」
昭夫も笑う。
「今さら何言ってるんですか」
卒業式。
名が呼ばれる。
「信夫」
「はい」
「昭夫」
「はい」
つの返事。
ただそれだけ。
それだけなのに、
浦には胸がいっぱいになった。
卒業式の夜。
では赤飯が炊かれた。
焼いた魚。
漬物。
噌汁。
豪華な事ではないが、
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澄が朝から準備した祝い膳だった。
、
正が押し入れから古い計簿をした。
最の頁。
赤鉛。
《から 》
正はしばらく文字を見た、
本の線を引いた。
そのへしくいた。
《から 》
信夫が笑った。
「俺、からるよ」
「そういうじゃない」
正は答えた。
「とも、自分のへくってことだ」
しして、
父は双子へをげた。
「悪かった」
が黙る。
「俺の借に、おたちのまで入れた」
信夫が言った。
「返すの伝うよ」
正は首を振った。
「いらん」
「でも」
「自分の飯え」
正はし笑った。
「余ったら母ちゃんに何か買ってやれ」
澄がすぐに言う。
「私は現がいい」
族全員が笑った。
には、
誰もそんなふうに笑えなかった。
。
信夫は町をた。
さな革鞄。
着替え。
母が縫った袋。
父から譲られた古い具。
駅のホームまで、
族全員が見送りに来た。
昭夫が言った。
「嫌になったら帰ってこいよ」
信夫が笑う。
「おも嫌になったら辞めろ」
「俺は辞めない」
「じゃあ俺も帰らない」
「何だそれ」
列が入ってくる。
は握もしなかった。
抱きいもしない。
いつものように言いいながら、
信夫が乗り込んだ。
窓から顔をす。
「昭夫!」
「何!」
「学、取っとけよ!」
「何で!」
「半分おのだから!」
列がきす。
昭夫はホームをしった。
「ボタン個だけでいい!」
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信夫が笑いながらを振る。
のが、
列の向こうへ流れていった。
昭48。
浦は偶然、川駅でと再会した。
歳。
信夫は作業。
昭夫は備のつなぎ。
顔は相変わらずよく似ているが、
もう見違えることはなかった。
で駅の喫茶へ入った。
信夫は械で働きながら定制を卒業し、その、具物を扱う会社へ移っていた。休には所へ通い、しずつ具作りも習っているという。
昭夫は業卒業、自備へ就職していた。
「借は?」
浦が聞く。
信夫が答えた。
「、父ちゃんが全部返しました」
「おたちが伝ったのか」
昭夫が首を振る。
「円も受け取らなかったです」
「ですよ、あれ」
信夫が笑った。
正は阿久津材を辞め、別の製材所で働いた。阿久津とは町で会えば挨拶する程度で、それ以でもそれ以でもないらしい。
「例の学は?」
浦が尋ねると、
が顔を見わせた。
「母ちゃんがまだ取ってます」
「捨てろって言ってるんですけど」
「何で取ってるんだろうな」
信夫が言う。
昭夫がしばらく考えた。
「あの頃、何でも半分にすれば何とかなるとってたからじゃないですか」
制。
定期券。
授業。
仕事。
べ物。
の負担。
信夫が指を折って数える。
「でも」
昭夫はコーヒーカップを置いた。
「未来だけは半分にしなくてよかった」
信夫も頷いた。
「俺は俺でよかったし」
「俺も俺でよかった」
浦は窓のを見た。
駅の。
、
作業着姿の信夫を初めて見つけた所。
あのまで、
が学へ来れば、
もうが働いていた。
着の学を脱げば、
もうがそれを着た。
それで何とかが回っていた。
変わったのは、
誰かがをくれたからではない。
着の古学を探した。
もう枚の定期券を用した。
借を円ずつ計算し直した。
父親の借と息子の就職を切りした。
働きながら学べる所を探した。
受験できるよう補習をした。
父親も、
母親も、
兄弟も、
それぞれが度は自分の考えを変えた。
どれもさなことだった。
けれど、
さなものをつずつ戻していけば、
歳のには、
選べるが増える。
「先、そろそろ帰ります」
信夫がちがった。
「もうか」
「今、母ちゃんの誕なんです」
昭夫が袋を持ちげる。
「で買いました」
浦は笑った。
「半分ずつ?」
双子は顔を見わせた。
「そこは半分です」
のでを見送る。
途までは同じ。
その先で、
それぞれ別の所へ帰っていく。
双子でも、
まで同じである必はない。
分けうことで救われるものもある。
けれど、
最初から分しかないと決めてはいけないものもある。
学ぶ。
選ぶ権利。
そして、
未来。
昭41。
着の学を交代で着ていた双子は、
やがてそのを脱いだ。
それから初めて、
分ずつのを着るようになった。
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