"火曜日だけ「受取済」が増える町" 第7話
矢野は代半ばで、配所では番く帳簿を扱っている。いつもいシャツの袖をきちんと折り、窓で揉め事が起きても声を荒らげない男だった。その落ち着いた態度から、町ではむしろ「信用できる」と見られていた。
俊夫は叔父へ言った。
「父ちゃんが矢野の名をいた理由、ってる?」
「度だけ、兄貴と矢野さんが喧嘩しとった」
「何で」
「帳簿の訂正印がすぎるって」
清吉の記憶では、勇作が「者の名義をいつまで残すんだ」と言い、矢野は「役所の理が追いついていないだけだ」と返した。そのは単なる事務の問題に見えた。
俊夫は矢野を見張り始めた。
曜の夕方。
配が終わると矢野は帳簿をで締める。
窓係が帰ったあとも残り、《受取済》の判を理する。
そしてある週、俊夫は裏窓からつの面を見た。
矢野がに何か押している。
正式な受領票ではない。
さな練習。
そこには複数の印が並んでいた。
。
。
松井。
被害に遭ったの姓ばかり。
俊夫は息を呑んだ。
だがその瞬、背から肩を掴まれた。
「何しとる」
藤だった。
俊夫は振りほどこうとしたが、歳のとでは力が違う。藤は腕を締めげ、配所の壁へ押しつけた。
「勇作の息子やったな」
俊夫は黙った。
「親子揃って覗き見が好きやな」
その言葉で分かった。
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父も同じように見つかったことがある。
「父ちゃんに何した」
「何もしてへん」
藤は笑った。
「勝に病気でんだだけや」
俊夫の血がへった。
殴りかかろうとしたところで、清吉がってきた。
「藤!」
藤はをした。
「甥っ子に躾しとけ。の商売を棒扱いするにな」
「商売?」
清吉の声がくなった。
「救済米まで商売にしたんか」
藤の笑みが消えた。
「証拠あるんか」
それだけ言い、っていった。
証拠。
そこがかった。
矢野が偽印を押している面を見たのは俊夫。
藤の荷も、それだけなら救済の運搬と説できる。
父の帳は個メモ。
必なのは、が同じ俵をかしたことを示すものだった。
数、野医院から使いが来た。
「古い帳面を理していたら、勇作さんのものらしいがてきた」
俊夫たちは急いで医院へ向かった。
野が差ししたのは、黄ばんださな片だった。
端がぎざぎざに破れている。
父の帳へわせると、ぴたりと致した。
最のページだった。
俊夫は息を止めて読んだ。
《曜 藤俵》
《矢野 帳簿処理》
《清吉 運搬》
ここまでは予通り。
そのにもうあった。
《芳承》
俊夫は母を見た。
「母ちゃんもってたのか」
芳の顔が張った。
野が言った。
「このは勇作さんが私に預けた」
「じゃあ何で帳から破ったんです」
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「に置けば、誰かに見つかるとったんだろう」
父自が破って、野へ預けていた。
清吉も母もらなかったのは本当だった。
「《芳承》って何」
俊夫の問いに、芳はく黙った。
やがて言った。
「勇作が病院代のために俵使ったこと」
「それだけ?」
「最初はね」
父は俵を藤へ渡す、芳へ相談していた。
しかし翌週も米が消えたことが分かり、勇作は藤を疑った。
その、芳は夫へ言った。
「度自分たちもやったんだから、すぐ騒げばこっちも捕まる」
それで父は表って告発しなかった。
「私が止めた」
芳は認めた。
「勇作の判断じゃない」
俊夫は初めて、母が秘密を抱えていた理由を理解し始めた。
父の名誉を守りたかっただけではない。
自分自も、父を黙らせた側だった。
「じゃあ父ちゃんは、それでぬまで黙ったの?」
「違う」
野が首を振った。
「最は役所へ持っていくつもりだった」
そのために最のページを医院へ預けた。
しかし勇作はその直、病状が急変した。
届けるにくなった。
「誰に渡す予定だったんですか」
野は枚の封筒をした。
宛名には、
《阪府糧担当 監査係》
とある。
は空だった。
勇作が作った申は見つかっていない。
最の証拠がまだつ欠けている。
そしてその申を最に見た物がいるという。
矢野主任だった。
俊夫はすぐ矢野を問い詰めたかった。
しかし清吉が止めた。
「今ったら全部燃やされる」
「じゃあどうする」
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