"火曜日だけ「受取済」が増える町" 第8話
「残っとるものを先に固める」
俊夫は苛ちながらも従った。
方で別の問題が起きた。
裏配のを嗅ぎつけた役所の職員が、共同宅を調べ始めたのである。正式な通帳を持たない者が米を受け取っているという噂が広がった。
「配規則違反があるなら止める」
担当者はそう言った。
俊夫は背筋がえた。
藤たちの正を追った結果、本当に米を必としているから先に米が止まる。
芳が言った。
「だから簡単じゃないって言っただろ」
共同宅ではが広がった。
「さんたちが騒いだからだ」
そう言う者もいた。
俊夫は悔しかった。
自分は正しいことをしているつもりだった。
でも今の夕飯がなくなるにとって、「正を正す」はの話だった。
その晩、俊夫は野医院で、引揚げ者の男から鳴られた。
「正しい帳簿ができるまで、子どもにでもわせろ言うんか」
何も言い返せなかった。
芳は帰りで言った。
「勇作も同じところで止まったんだとう」
「父ちゃんも?」
「藤を止めたら、裏配そのものが消える。そうしたら困るがいる」
「じゃあ悪いやつを残すしかないのか」
「だから、別のを作らんといかん」
初めて俊夫は、「告発」だけではりないと理解した。
正な仕組みのに必な能があるなら、悪い部分を切るだけではが落ちる。
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清吉たちは町内会を回り、登録から漏れている庭の覧を作り始めた。
芳は役所へ何度も通い、仮の配証をしてもらえないか交渉した。
野は寝たきり患者の証をく。
俊夫も学帰りに申請の代を伝った。
正規のへ移せるを、ずつ裏配からす。
はかかる。
それでも「藤がいなければ誰もべられない」という状態を崩さなければ、正は永に続く。
父がにできなかったことを、俊夫たちは別の形で始めた。
の終わり、芳が突然配所へ呼ばれた。
矢野主任が、正式な帳簿を机へ置いて待っていた。
「さん、し確認したいことがあります」
俊夫もついていった。
矢野はの過分をいた。
「くなった勇作さんの名義で、継続して米を受け取っていますね」
「はい」
芳は否定しなかった。
「これは規則違反です」
「分かっています」
「によっては、これまで受け取った分を返していただくことになります」
俊夫は腹がった。
「じゃあ勝に《受取済》にされた分はどうなるんですか」
矢野は目を細めた。
「の話にをすな」
「その判子、主任が作ったんじゃないですか」
清吉が止めるもなかった。
内の空気が変わった。
矢野はゆっくり俊夫を見た。
「証拠は」
藤と同じ言葉。
俊夫は答えられなかった。
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矢野はく笑った。
「自分たちがの名義で配を受けておいて、違いをのせいにするのはせんな」
芳の顔が赤くなった。
そのの夕方には、町へ噂が広がった。
《はんだ主の米をも受け取っていた》
曜の《受取済》の話より、そちらの方が面おかしく語られた。
俊夫が学へくと、
「の米っとるんやろ」
と同級に言われた。
殴りかかりそうになったが、やめた。
完全な嘘ではない。
そこが番苦しかった。
へ戻ると、芳が印鑑を見つめていた。
父の名義を使うに押していた判子。
「捨てようか」
母が言った。
俊夫は首を振った。
「まだ」
「何で」
「これが本物だって証できる」
偽印との違いを比べればいい。
の正式な受領印。
矢野が作ったとわれる偽印。
同じようで違う。
俊夫は被害に遭ったを回り、各庭から本物の印をに押してもらった。
老。
未。
疎帰り。
枚ずつ集める。
並べると、偽印にはある共通点があった。
すべて同じ朱肉。
すべて同じ力加減。
そして印の縁が自然にしい。
個別に作ったばかりの判子を使った能性がい。
その夜、清吉が言った。
「判子を当たろう」
俊夫は顔をげた。
誰かが作ったなら、作ったがある。
初めて、帳簿以の証拠へづいた。
町内の判子は軒しかなかった。
最初の軒はらないと言った。
軒目の老主だけが、偽印の写しを見て眉をひそめた。
「これ、うちかもしれんな」
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