"火曜日だけ「受取済」が増える町" 第9話
「覚えてるんですか」
「同じ期に、名字だけの文判をまとめて頼まれたことがある」
注文したのは配所のだった。
「誰です」
老は躊躇した。
「昔からの客や。余計な揉め事は嫌や」
俊夫は本物と偽物の印を並べた。
「このせいで米を受け取れなかったがあります」
清吉もをげた。
「名を表にせとは言いません。注文と数だけでも」
老はく考えたあと、古い注文帳をした。
。
《・・松井・野ほか本》
受取、
《矢野》
俊夫の臓がく打った。
ついにに名がた。
だが清吉は浮かれなかった。
「これだけじゃ、配のために使ったとは言い切れん」
必なのは、矢野が作らせた判子を実際に《受取済》へ使った証拠。
俊夫は考えた。
次の曜。
まだ偽印を作られていないを軒、わざと遅いに配へかせる。
そのの印鑑はに別の形へ変えておく。
古い印しからない矢野が先に《受取済》を押せば、偽造がはっきりする。
対象になったのは、戦争未の野トヨだった。
トヨは怖がった。
「本当に米もらえるんやろな」
「もし止められたら、うちの分を渡します」
芳が言った。
曜の朝。
トヨはあえて配所へかなかった。
午。
俊夫たちはから見ていた。
矢野が帳簿をく。
古い受領票を見る。
朱肉をす。
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そして野の欄へ判を押した。
夕方、トヨがしい印鑑を持って窓へった。
「もう受取済です」
予通りの言葉。
トヨは声をした。
「今初めて来たんや!」
清吉と判子の主、町内会の役員が同に入った。
帳簿を確認する。
《受取済》の判。
しかしトヨが持つ現の印鑑とは違う。
判子の老が言った。
「その印、に矢野さんから頼まれて作ったもんです」
矢野の顔が変わった。
初めて、逃げがつ塞がった。
矢野はすぐには認めなかった。
「救済のために必だった」
その言葉に、俊夫はを疑った。
「何が救済なんですか」
「名簿の庭へ米を回すには、帳尻をわせる必がある」
曜にがる。
そのを正式な帳簿どこかで消さなければ、翌週の入荷量がわなくなる。
「だから来なさそうなを受取済にした」
「来てるじゃないですか」
「最初は来ないだけだった」
矢野は疲れたように子へ座った。
終戦直。
者、方者、疎者の名義が量に残っていた頃は、余剰名義だけで救済分を作れた。
しかし経ち、届や帰還届が理されるにつれ、余剰名義は減った。
方、救済が必なはまだい。
「それできてるの分にをした?」
俊夫が聞くと、矢野は黙った。
「藤は」
清吉が言った。
「俵はどこへった」
矢野の顔が張った。
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「らん」
「毎週曜、藤の荷がとる」
「救済分や」
「救済分を引いてもわん」
父の数字。
俊夫の数字。
両方を机へ置く。
隔てた記録なのに、同じ差がていた。
矢野は父の帳を見てきを止めた。
「勇作がまだそんなものを」
「申、見たんでしょう」
矢野の目が揺れた。
「父ちゃんが監査へすつもりだった類」
沈黙。
「どこにやったんですか」
いのあと、矢野は言った。
「破った」
俊夫は拳を握った。
「何で」
「勇作自が米を売った記録があったからや」
「それを脅しに使ったんですか」
「違う!」
矢野が初めて声を荒らげた。
「したら勇作も芳さんも清吉も全部捕まるとった。救済を受けた連まで調べられる。俺は止めたんや」
矢野の説にも理はあった。
なくとも本は、最初はそう信じていたのかもしれない。
「じゃあ藤の俵は」
矢野は答えなかった。
俊夫は確信した。
矢野はすべてのではない。
何かを守るつもりで帳簿をいじり始め、そのみを藤に利用された。
父と同じだった。
度線を越えると、次の線を越えさせられる。
藤を追い詰める決定な証拠は、米ではなくからた。
野医院の古い帳簿を調べていた芳が、藤商から毎同じ頃に「寄付」が入っていることへ気づいた。医院だけではない。共同炊事、引揚者向けの寝具代、町内の救済費にも藤の名がある。
町では「困ったにをす派な商」と評判だった。
俊夫は最初、話が逆ではないかとった。
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