みかん小説
本棚

"離婚した元夫は、私の再婚相手を知らない" 第2話

宗方さんは何も言わず、私の張ったを、自らのきく温かいのひらでそっと包み込んだ。 そのの甲には、に私が切りいた、脈弓置換術の際のカテーテル穿刺痕が、かすかにく残っていた。

「よく耐えてくれたね。……本来なら、私が直接裁判所へ乗り込んで、あの男の愚をそので叩き潰してやりたいところだったが」

「いいえ、これでよかったんです」 私は首を横に振った。 「あの男は、自分が警察官という特権階級にいて、般民の私を力でねじ伏せたと信じ切っています。途半端な段階で騒げば、警察組織の内庇いと隠蔽体質が働き、トカゲの尻尾切りで逃げられるだけです。……切除するなら、病巣が完全に浮き彫りになり、転移のルートを全て塞いだ瞬でなければ」

宗方さんは、私の言葉に満そうに目を細め、力く頷いた。

「さすがは、私の命をあの世の淵から引き戻してくれた名医だ。判断に切のブレがない」

。宗方さんは、致率パーセントを超える急性解性脈瘤で、私の勤務する帝都学医学部附属病院へ緊急搬送されてきた。 胸郭をけた瞬、膜腔は溢れた血液で満たされ、脈基部は今にも破裂寸だった。の当直医が絶望に息を呑む、私は執刀医として肺を回し、超体温循環止法を用いたにおよぶ術を完遂した。

広告

術のICUで識を取り戻した彼が、酸素マスク越しに私の目を見つめて絞りした言葉を、私は今でも忘れない。 『……私の胸を切りいたのは……君か。……恐ろしく、美しいだった』

退院、リハビリを通じて交流をねるで、宗方さんは私の庭の破綻――達也のモラハラと、若女性との貞為に苦しんでいた事実をることとなった。 そして半、彼は私にこう告げたのだ。

『美央。あの男と完全に縁を切りなさい。君が過のしがらみをすべて清算したその、私と結婚してほしい』

達也は、らない。 自分が「のげのないババアを拾う物好きな男」と嘲笑った相が、今、私のを握りしめているこの物であることを。 そして、その宗方慎郎という男こそが――達也が属する県警察本部の頂点、万の警察職員の殺与奪の権を握る【県警察本部・警監】そのであるという事実を。

「美央。準備はすべてっているよ」 宗方さんは載話の受話器を指先で叩いた。 「だが、君が望むなら、あの男の破滅のシナリオは君自のでめるといい。……私は、君のろで絶対な壁となって控えていよう」

「ありがとうございます、宗方さん。……私の執刀計画に、狂いはありません」

ハイヤーは滑るように発し、夕暮れのオフィスへと消えていった。

広告

翌朝、午半。 帝都学医学部附属病院・第臓血管科医局。

当直けのカンファレンスルームで、私は子カルテの端末に向かい、今予定されている冠脈バイパス術の術データを精査していた。 周囲の若医師や護師たちは、私が昨婚したことなど微もらない。プロの科医として、私活の揺をミリたりとも臨の現に持ち込むことは許されない。

「美央先、おはようございます。温かいブラック、淹れてきました」

そう言ってコップを差ししてくれたのは、専修医の佐田(さだ)医師だった。歳、方国の叩きげで、私の助として最も信頼を置いている若だ。

「ありがとう、佐田先。今の第症例、枝の狭率パーセントの患者さん、内胸脈の採取はあなたに任せるわ。吻の野確保、しっかり予習しておいてね」

「はい! 万全にしてあります!」 佐田医師は目を輝かせた、しだけ配そうに私の顔を覗き込んだ。 「……あの、美央先。余計なことかもしれませんが、し顔が悪くありませんか? 先、ここ数ヶ、ずっと病院の仮眠に泊まり込んでおられましたし……」

「丈夫よ。厄介な膿を、昨きれいに排膿しきったところだから」

私がく微笑むと、佐田医師は何のことか分からず首を傾げながらも、「それなら良かったです」

と爽やかに礼して病棟へ向かった。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: