みかん小説
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"100人宴会を潰した義妹に、店主の私が請求書を出した日" 第1話

曜の午630分。鮮料理「魚(うおしん)」の階広には、底えのする静寂が澱のように沈み込んでいた。

畳の本には、磨き抜かれたの本卓が幾筋も連なり、そのに並べられた朱塗りの御膳は、数えてちょうど百分あった。向付の器には、今朝ので選び抜いた本鮪のとろと、のびらのように引かれた桜鯛が氷のに寄り添っている。椀の蓋をせば、丁寧に昆布と鰹節で引いた清汁から、ゆらゆらとい湯気がちっていた。しかし、その湯気を吸い込む客は、ただのもしなかった。

座敷の隅で、代目主である藤本菜緒は、に当てたスマートフォンのスピーカーから漏れる狂乱のどよめきを聞いていた。

『あはは! ちょっと誰かカルビ追加してー! あ、ビールもうつね!』

勢の笑い声、グラスとジョッキがぶつかりう鈍い属音、そして煙ので肉が爆ぜる激しい脂の音。その喧噪の只から、話の主である義妹・藤本リエの、し酒の入った嫌な声が響いてきた。

「リエさん、今どこにいるの? もう宴を分過ぎているけれど」

菜緒がを押し殺して問いかけると、受話器の向こうでリエは、事も無げにを鳴らして吹きした。

『あ、言ってなかったっけ? 会、駅の焼肉に変更したから!』

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広の空気が、瞬で凍りついた。襖の隙から息を詰めて見守っていた板のと、臨で入ってもらったの仲居たちが、揃って息を呑む気配が背に突き刺さる。

「……焼肉に変更した?」

『そう! だって菜緒さんのお、入った瞬から魚臭いじゃない? 若い連もいし、煙もくもくで肉焼いた方が絶対に盛りがるって幹事グループで決まったのよ。あ、駅の『牛よし』って型、ちょうど百分空いててさー。ラッキーだったわ!』

菜緒は元の畳を凝した。界の端で、お吸い物の表面に張ったい油膜が、えて固まり始めているのが見えた。

「いつ……決めたの?」

『え? くらいかな。アンケート取ったら圧倒に肉派がくてさ』

。その単語が脳幹を鋭く撃ち抜いた。

昨の曜、午6。菜緒は材の最終発注の直に、リエへ確認のメッセージを送っていた。『の同窓会、最終数は98名で確定でいいのね?』。それに対し、リエは『うん! ドタ参加があるかもだから、のため100名分きっちり準備しといて!』と返信してきたのだ。昨の夕方の点で、彼女はこのへ歩たりともを踏み入れる気などなかったのだ。

「に決めていて……昨の夕方、百を用しろと私に言ったの?」

『えー、だってもし焼肉が取れなかったら困るじゃない? 保険よ、保険。

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内のなんだから、それくらい融通利かせてよ。じゃ、乾杯の挨拶あるから切るね!』

ツツッ、ツツッという切断音が、無の広に響き渡った。

「女将さん……」

板暦のが、濡れた布巾を握りしめたまま、肩をらせて踏み込んできた。その顔は気で赤黒く染まり、唇が刻みに震えている。

「あいつら……ふざけやがって! 朝のから仕込んだ本鮪はどうすんですかい! 常連の佐々フーズさんの創業祝いも、田先の退官祝いも、全部断って広を空けたんですよ! それを、魚が臭えだと!?」

「さん、声を落として」

菜緒はスマートフォンを帯のに差し込み、ゆっくりとちがった。声は震えていなかった。震わせるわけにはいかなかった。

「まず、厨のを止めてください。お椀はすべてげます。まだ盛り付けていない柵の魚で、以に全に回せるものは、真空パックにして氷温庫へ。すでに空気に触れて盛り付けた刺と先付は……残ですが、お客様にはせません」

「捨てるんですかい……? こんな見事な鯛を……!」

「法律、そしてうちの簾の基準、度温にしたものを翌に持ち越すことは絶対に許されません」

菜緒はの目を真っ直ぐに見据えた。

「るに、をかしましょう。無駄にできるは、分もありません」

を完全に遮断した菜緒の指示に、職たちは気圧されたように背筋を正し、厨へと散っていった。

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