"30万円を止めた日" 第5話
さらにファイルの最終シートをいた。
《美咲入院》
そんな名だった。
更は、私が倒れる週。
そこには箇条きでこうあった。
《期入院なら本宅売却査定》
《母を本宅に正式転居》
《母物件は継続賃貸》
《美咲復帰は売却益から居購入を相談》
本宅。
私のマンションのことだ。
自分の妻がまだ倒れてもいない期に、
「美咲入院」
という計画表を作っていた。
私はしばらく画面を見つめ続けた。
偶然ではない。
浩司は私の体調が悪化していることに気づいていた。
確かに倒れるかほどから、私は腹痛や発を何度か訴えていた。それでも仕事を休まず、病院へくのを回しにしていた。
浩司は配する代わりに、
「入院したらどうするか」
を考えていたのだ。
そして私が倒れた翌。
計画表通りにマンション査定を始めた。
田先へファイルを送ると、すぐに話が来た。
「これは保してください。元データは触らず、複製を取ります」
「先」
「はい」
「私、夫に殺されかけたとか、そんなことを言うつもりはありません」
「もちろんです。そこまでの証拠はありません」
「でも……私がけなくなるのを、待っていたんでしょうか」
田先はすぐには答えなかった。
「なくとも、あなたが期療養へ入る能性を利用する計画は、入院から考えていた。そこまでは言えます」
広告
私は目を閉じた。
夫が欲しかったのは、私の回復ではない。
私が働けなくなったも、私のと産をどう使うかだった。
そして、その計画のに私はいなかった。
母を本宅へ入れる。
母の投資物件は貸し続ける。
私のを売る。
売却益で次を考える。
まるで、私自が会社の設備か、になった資産のようだった。
「先」
私は静かに言った。
「万円の送、止めます」
「はい。現点で確認できる事なら、その判断は理です。のため記録を残して続きしましょう」
「今、止めます」
その、もう件メールが届いた。
佳奈からだった。
《社。浩司さんがまた会社へ来ました》
続く文を読んで、私はゆっくり体を起こした。
《今回は、社の印鑑証と会社の登記簿をせと言っています》
だけではない。
夫は私の会社まで、自分の「族財産」だとっていた。
そして私はこの、ようやく理解した。
カードを止めるだけでは終わらない。
万円を止めるだけでも終わらない。
夫は、自分が失うもののきさをった、必ず反撃してくる。
本当の戦いは、ここからだった。
私はまず、順番を決めた。
つ目は会社。
つ目は個資産。
つ目は活費。
ではなく、線を本ずつ切る。
佳奈には、浩司からの問いわせや来訪をすべて記録するよう伝えた。ビル管理会社にも正式に連絡し、私の確な承認がない限り執務エリアへ入れないよう続きをした。
広告
浩司は株主でも役員でもない。
夫だからという理由だけで会社の決定へ関わる権利はない。
それを社内で曖昧にしないため、取締役会でも確認した。
「社、本当に丈夫ですか」
オンライン会議の最に佳奈が聞いた。
「体のこと?」
「それもです。でも……ご族のこと」
私はし考えた。
「今まで族だとって曖昧にしてきたことを、つずつ普通の形に戻してるだけ」
にすと、本当にそうえた。
浩司が会社へ来られなくなる。
私の役員報酬へをせなくなる。
本来、最初から当たりだった。
次に族カード。
すでに止済み。
追加カードも無効化した。
そして静への定期送。
ネットバンキングの画面には、
《次回送 300,000円》
と表示されている。
私は田先と確認したで、定期送を解除した。
画面には、
《登録を削除しました》
とただけだった。
で千百万円。
指本で終わった。
議だった。
今まであれほどきくじていた「嫁としての責任」が、システムではたった件の自送設定にすぎなかった。
解除したも、罪悪はなかった。
あるのは疑問だけだった。
なぜ私は、ここまでく払ったのか。
夕方。
浩司から着信があった。
カードが止まったことに気づいたのだろう。
私は録音を始した。
「もしもし」
「おい、美咲。カードおかしいぞ」
「どうおかしいの」
「使えない。
広告
おすすめ作品
-
完結第15話
離婚した元夫は、私の再婚相手を知らない
離婚が成立した直後、警察官の元夫は私を見下して笑った。 「四十の女医なんか、誰も拾わない。せいぜい他の男を探せばいい」 私はその言葉どおり、裁判所の外で待っていた黒塗りの車へ乗り込んだ。後部座席にいたのは、かつて私が十四時間の手術で命を救った男性――そして元夫が勤める県警の頂点に立つ警察本部長だった。 その翌日、元夫の若い恋人から届いた一枚の写真に、不自然な公費精算の印が写り込んでいた。さらに若手刑事が現れ、二千万円を超える捜査費横領と、県警内部の隠蔽を告発する。 ところが、その夜。緊急手術を要する重傷者が病院へ運び込まれた。 血まみれでストレッチャーに横たわっていたのは、つい数時間前まで私を嘲笑していた、元夫の恋人だった。夫婦|真実|裡の顔|修羅場|不倫2.2万字5 57 -
完結第10話
援助し続けた兄が隠していた二年間
事故で右脚が不自由になった兄・健司を助けるため、直人は二年半にわたり生活費や治療費を送り続けてきた。その総額は、二百十八万円。妻の美咲も家計を切り詰め、兄が立ち直る日を信じていた。 ところがある日、美咲から一本の動画が届く。そこには、杖を持たず、小走りで横断歩道を渡り、パチンコ店の階段を上る健司の姿が映っていた。 直人が収入と支出の確認を求めると、健司が送ってきたのは一年前の給与明細。さらに、すぐ削除された通帳写真には《給与268,430円》の文字があった。 足の回復も、転職も、本当の給料も隠していた兄。では、装具代、リハビリ費、通院費として渡した二百十八万円は、いったい何に消えたのか。 幼い頃、自分を守ってくれた兄への恩と、夫婦の生活を壊し始めた嘘。そのすべてを確かめるため、直人は初めて兄に通帳を開かせる。兄弟姉妹|夫婦|金銭問題1.4万字5 13 -
完結第17話
娘の席を愛人に譲った夫の末路
夫・敬吾が愛人を優先し、6歳の娘・陽菜を飛行機の後方席へ一人で追いやろうとした瞬間、さゆりは離婚を決意する。実は彼女こそ、敬吾の出世を陰で支えてきた一流の法務コンサルタントだった。 さゆりは娘とプライベートジェットで北海道へ向かいながら、夫の不正経費と愛人関係を会社へ告発。敬吾は部長職を失い、北陸の倉庫へ左遷され、慰謝料と養育費の支払いも背負う。 その後、さゆりは自分の名で事務所を開き、娘との生活を再建する。一年後、母娘はあえて普通席の35列目に並んで座り、誰にも奪われない二人だけの旅へ出発した。夫婦|親子関係|不倫2.6万字5 1206 -
完結第16話
大晦日、義実家の60億円計画を知った
大晦日の夜、義実家の二階から母とビデオ通話をしていると、突然その表情が凍りついた。 「南、声を出さないで。お父さんが裏口まで迎えに行くから」 直後、私は義父の書斎から漏れる夫の声を聞いた。二人は私の実印を盗み、私が代表を務める資産管理会社の権限を書き換え、約六十億円の預金を破綻寸前のリゾート事業へ流そうとしていた。 私は結婚指輪も荷物も置いたまま裏口から脱出し、その夜のうちに全口座を凍結。二十三億円の普通預金と三十五億円の定期預金を、夫の手が届かない別銀行へ移す手続きを終えた。 これで資産は守れたはずだった。 ところが銀行担当者は、夫が持参すると告げていた書類の中に、父の署名入り《債務保証承諾書》があったと明かす。その印鑑証明書は偽物ではなく、三か月前に正規発行された本物だった。 夫はいつ、父の印鑑証明を手に入れたのか。そして十三年間の結婚生活の裏で、どこまで周到に黒川家を破滅させる準備を進めていたのか。嫁姑|夫婦|真相|修羅場2.4万字5 77 -
完結第11話
100人宴会を潰した義妹に、店主の私が請求書を出した日
土曜日の午後六時半。海鮮料理店「魚心」の大広間には、百人分の御膳が並んでいた。けれど、開宴時刻を三十分過ぎても客は一人も現れない。 幹事を務める義妹へ電話すると、返ってきたのは笑い声だった。 「魚臭いから、焼肉屋に変更したの。身内なんだから許してよ」 しかも義妹は三日前に別会場を予約しながら、前日まで「百人分を用意して」と念を押していた。損害額は五十三万六千円。店主の菜緒が契約書に基づいて請求すると、夫まで「妹から金を取る気か」と彼女を責め始める。 ところが翌日、同窓会の会計担当者が店を訪れ、菜緒の前に二枚の領収書を並べた。参加者から集めた会費と、焼肉店へ実際に支払われた金額が、二十五万円も食い違っていたのだ。 さらに見つかったのは、「魚心」の印が押された五十万円の助成金申請書。 菜緒が一度も見たことのないその書類は、なぜ義妹の個人口座を振込先にしていたのか。そして店の印鑑を持ち出せた人物は、いったい誰だったのか。兄弟姉妹|裡の顔|真相|修羅場1.6万字5 143 -
完結第16話
義弟嫁の「セレブ家族」に隠された十二年前の秘密
義弟嫁・真澄は、遥の手料理を「貧乏臭い」と罵り、熱々のおでんを床へ投げ捨てる。普段温厚な夫・幸介は激怒し、真澄の両親を呼び出した。 現れた両親の正体は、遥の叔父の会社から三千二百万円を横領し、海外逃亡していた指名手配犯だった。刑事に逮捕され、真澄の偽りのセレブ生活も暴かれる。 金目当ての結婚だったと知った義弟・高志は離婚を宣告。幸介も損害賠償と刑事告訴を突きつけ、真澄を絶縁する。すべてを失った彼女は、反省せず新たな金持ちを探して夜の街へ消えた。兄弟姉妹|夫婦|絶縁|修羅場2.4万字5 1290