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"大晦日、義実家の60億円計画を知った" 第2話

普段は親戚すらち入りを禁じられているその部のな杉戸が、わずかにセンチほど隙をけていた。 漏れてくるの気と、煙の臭い。 そして――聞き慣れた夫・幸の、く濁った声。

「……親父、け々ってのは、いくらなんでも拙くないか? いきなり『共同代表にしろ』なんて迫ったら、だって警戒するぞ」

私は廊の壁に背をぴったりと貼り付け、息を止めた。 次に聞こえてきたのは、義父・正雄の、尊で傲なバリトンだった。

「だから言っておるだろう。『今の資産管理を伝うため』とでも言いくるめればいい。夫婦なんだから自然じゃないとかなんとか言ってな。あいつは世らずの元お嬢様だ。難しい融の専用語を並べてて、男の甲斐性を見せてやれば、最には判子を押す」

「でも……本当の目を言ったら、は絶対反対するよ。あのは、あいつの親父さんが遺した会社の売却益なんだから」

「言う必などどこにある!」 義父が苛ちを隠さずに舌打ちをした。 「共同代表の登記さえ済ませてしまえば、との話は俺たちだけでめられる。その、黒川アセットからうちへ、つなぎ融資として資を引っ張るんだ」

全の毛穴が逆ち、血の気が引いていくのが分かった。 黒川アセットの資産規模は、普通預、定期預、期の国債運用などをわせて、約億円。

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それは、父がにわたって油にまみれ、何もの従業員の活を守り抜き、会社を無事にへ事業承継させたに残った、がの魂そのものだった。 結婚当初から、私は幸に何度も釘を刺してきたはずだ。この資産は黒川族の防波堤であり、夫婦の活費の財布ではない、と。

「……本当に、融資を通せるのか?」 幸の声に、躊躇いと、それ以に抗いがたい欲望のが滲んでいた。

「当たりだ」 義父がせせら笑う。 「うちが掛けている郊の型リゾートホテル発、資材騰でが追加融資に渋い顔をしとる。だが、億円の預がある。その事実を見せるだけで、どもの態度は変する。最悪の、定期預の部を担保に差し入れれば、億円や億円の枠など即りるわ」

「でも……もし、にバレたら……」

「がいたなら、あいつに何ができる?」

義父の酷な嘲笑が、廊にまで響いてきた。

「登記をき換え、担保契約を結んでしまえば、いくら騒ごうが遅れだ。文句があるなら婚でも何でもすればいい。その頃にはうちのホテルも完成して、莫な利益がる。あいつが泣き寝入りする以にはないんだよ」

「……そうだな。わかった。実印の所はだいたい目がついてる。けの、の営業始と同にこう」

の笑い声がなった。

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私ので、の記憶――優しかった夫の笑顔、病気のに粥を作ってくれたい、婚式にはどこへこうかと語りった夜――そのすべてが、ドロドロとした黒い汚となって崩れ落ちていった。 されていたのではない。 私は最初から、この欲な族の延命のための「億円の庫番」として飼われていただけだったのだ。

私は音もなくを翻し、客へと戻った。 りで界が赤く染まり、歯の根がガチガチと鳴るのを、奥歯を噛み締めて必に抑え込んだ。

スーツケースはけもしない。も、化粧品も、結婚指輪すらして机のに置いた。 必なのは、私の命と、黒川アセットの資産を守るための「物理な鍵」だけだ。

ハンドバッグの底。 私の個実印、マイナンバーカード、そして――内ポケットのファスナーの奥に隠されていた、都信託の法専用のハードウェアトークン(素認証マトリクス成)。 それだけを胸に抱き、私は部のかりを消した。

暗い階段を忍びでり、勝のい鉄のノブにをかける。 へると、氷点のが頬を突き刺した。 の奥、の角に、スモールランプすら消した父の黒いクラウンが、まるで獲物を待つ黒豹のように静かに息を潜めていた。

部座席のドアをけて滑り込むと、バフッというい密閉音とともに、内は完璧な静寂に包まれた。

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