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"三日待て――命を懸けて起爆盤を粉砕した現場主任、120人を救い500億の黄金を暴く" 第4話

鉄槌の撃

午分。黒鉱の空は、鉛のいに覆われ始めていた。

本社保推部への緊急送信から半が経過していた。しかし、事務所の端末画面は『受付完・審査待ち』のステータスを示したまま、ピクリともかない。本社の担当者が昼の休憩に入っているのか、あるいは方のさな鉱からの「責任者の異議申して」として処理を回しにされているのか。官僚化した本社の鈍さが、現の秒読みを容赦なく締めげていた。

「装薬作業、全孔完しました!」 作業をだらけにした装薬作業員が、事務所へ駆け込んできた。 「第区画、つの孔に含爆薬計キロ装填完。気管の結線、導通テスト良好です!」

監督はデスクからちがり、元の無線を握りしめた。その目はすでに理性を失い、血った狂気が宿っていた。 「よし! 全員、坑内から退避! 待避所へ入れ! 発破刻は予定通り午ジャストだ!」

「監督!」酒井が詰め寄った。「本社からの返答はまだ来ていません! 受付番号が発されている以、回答があるまで作業は保留するのが全社保規程のはずです!」

「返事が来ないということは、本社も現の判断に任せているということだ!」 は酒井の胸を乱暴に突きばした。 「に撃たなければ、送設備の気代も、待している鉱夫の当も、すべて赤字だ! おのらんい込みに付きって会社を潰されてたまるか!」

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ウーッ、ウーッという気な発破予告サイレンが、え切ったに鳴り響き始めた。 坑内から、最の装薬作業員たちが駆けでいしてくる。その列のに、太田の姿があった。太田は全を脱ぎ、幽鬼のような青ざめた顔で歩いていた。

「太田が……起爆所へ向かいました」藤本が酒井の横へ駆け寄ってきた。 「あいつ、サインしたんですか!?」 「いや、してない! だが、に『かないなら懲戒解雇の続きを今すぐ執る』と脅されて、引きずられるように待避壕へ連れてかれた!」

酒井はりしていた。 全靴のみも、たいの痛さもじなかった。 発破待避所は、坑から頑丈な防護塁を隔てたメートル先、分いコンクリートで固められた半の掩体壕だった。

鉄扉を蹴りけるようにして酒井がび込むと、暗い内の央で、卓に置かれた黄い防爆型子起爆装置が、吉な充完音を『キィィィン』と音で唸らせていた。

太田は起爆盤のにち、両を胸ので固く握りしめたまま、全をガタガタと震わせていた。その横に張り付いたが、太田の部に声を浴びせている。

「何を怯えている! キーをに回して点ボタンを押せ! それだけで終わりだ!」

「で、できません……!」太田が涙声で叫んだ。「音が……元からずっと、鳴りのような音が響いてるんです! 撃ったら崩れる! 俺のでみんなを殺すことなんてできません!」

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「役たずが!」 は太田の襟首を掴み、力任せに横のコンクリート壁へ突きばした。太田がに崩れ落ちる。 「どけ! 署名なんぞから俺が代してやる! 俺が押す! 全責任は現監督のこの俺が取る!」

のが、赤く点滅する『発破点ボタン』へと伸びた。 その指先が、プラスチックのスイッチに触れるまで、あと数センチ。

責任を取る――? 酒井の脳裏に、凄惨な落盤事故の記憶が閃のようにった。巨な岩塊に押し潰され、肉片となって運ばれていく作業員たち。泣き崩れる遺族。が崩れ、がんだで、介の現監督が取れる責任など、この球のどこにもしないのだ。

言葉で止めるは、もう秒も残されていなかった。 酒井の界の端に、壁際の材ラックにてかけられていた量具がび込んできた。 黒りする樫のの柄、先端に据えられたキロの鋼鉄の塊――岩破砕用の角玄能だった。

酒井は無言でハンマーの柄を両で掴み取った。ずしりとした量が掌にい込む。

「酒井……? 貴様、何をする気だ!」 振り返ったの瞳が、恐怖で見かれた。

「だ」 酒井はく、鳴りのような声で言った。 「だけは、絶対に撃たせない」

「や、やめろぉぉぉッ!」 が遮るように両を伸ばしてびかかってきた。 酒井は腰を沈め、の体を肩で激しくねばした。

がの砂利にを取られてよろめく。 その隙に、酒井は全のバネを使い、くハンマーを振りげた。

、を穿ち、岩を砕き続けてきた腕の筋肉が極限まで軋む。

「砕ッ――!」

ドガァァァァァンッ!!

凄まじい衝撃音が待避所のに炸裂した。 キロの鋼鉄の塊が、黄い子起爆装置の央部に正確無比に叩き込まれた。 化プラスチックの殻が々に弾けび、内部の圧コンデンサーが激しい青いスパークを撒き散らす。基板が両断され、焦げたシリコンの異臭とい煙が濛々とち込めた。

「ひぃっ!」太田がを抱えて鳴をげた。 酒井は息をえるもなく、即座にハンマーを再び引き絞った。

撃目。 操作パネルのキーシリンダーと、点回のスイッチ部分へ向けて、渾の力で振りろす。

グシャッ!!

鉄の塊が操作部を完全に圧壊し、千切れた配線と半導体の破片が、面にとともにび散った。 シリンダーは飴細のようにひしゃげ、充音は完全に消え失せていた。

もはや、いかなる気信号もこの械から送りすことはできない。今の午の発破は、物理に消滅した。

待避所のに、苦しい静寂が訪れた。 ち込める子部品の煙ので、酒井はハンマーの柄を握り締めたまま、荒い息を吐いていた。

「さ……酒井……」 にへたり込んでいたが、震える声で呟いた。その顔は気を通り越し、の脈が額に浮きている。 は獣のようにをいがると、酒井の作業の胸倉を両で掴みげ、背のコンクリート壁へ力任せに叩きつけた。

「貴様ァァッ! 自分が何をしでかしたか分かっているのか! 会社の備品を叩き壊したんだぞ! 器物損壊だ! 威力業務妨害だ! 警察に突きして、刑務所からられないようにしてやる!」

酒井は抵抗しなかった。肩にる痛みに耐えながら、元に転がる鉄屑を静かに見ろした。

「分かっています。弁償でも懲戒でも、警察の取り調べでも何でも受けます。――だが、今のこのは、誰にも撃たせません」

待避所のから、異常な破壊音を聞きつけた鉱夫たちの慌ただしい音が、交じりの砂利を踏みしめてづいてきていた。 力ずくで奪い取ったの猶予。 その先に待ち受ける運命が、自らの破滅か、それとも百名の還か、このの酒井にはまだる由もなかった。

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