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"三日待て――命を懸けて起爆盤を粉砕した現場主任、120人を救い500億の黄金を暴く" 第10話

百の退避命令

目の朝が訪れた。、午分。 奥羽脈のは、夜けの底えする濃に包まれていた。プレハブの照だけが、乳ののにぼんやりと浮かびがっている。

酒井は宿舎でもできぬまま、午には現へを踏み入れていた。 坑の監へ駆け込むと、夜勤の保係が青ざめた顔で計器を見つめていた。記録用には、夜からにかけて記録された微振の波形が、まるで図の細のように隙なく刻まれている。

「酒井さん……」保係が震える声で指を差した。 「午過ぎから、排溝ののが黄から黒いヘドロ状に変わりました。それに、坑から吹きすの温度が、気より度以いんです」

酒井は坑へ歩み寄り、たい空気を吸い込んだ。 かいとともに、猛烈なメタンガスと硫化素の臭気が押し寄せてくる。もはや測定器を使うまでもなく、嗅覚だけで致な気体が充満しつつあることが分かった。

バタバタと靴を鳴らしてび込んできたのは野部と藤本班だった。 野は記録を引ったくるようにして目を通すと、切の迷いを捨てった顔で藤本へ命じた。

「藤本班、午の入坑作業は全面止だ。

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現、坑内で夜勤保守と設備点検に入っている作業員、ならびにの掘班、わせて百名――その全員を、直ちに坑へ退避させろ」

「全退避……! 本気ですか、野部!」 宿舎から駆け込んできたが、鳴のような声をげた。 「定発破を止めただけじゃ飽きらず、鉱全体を空っぽにする気か! まだ燃ガスの限界警報はにてない! 本社役員会にどう申しきする気だ!」

野はの胸倉を掴みげんばかりの気迫で詰め寄った。 「警報が鳴り響いてからいたのでは遅れなんだよ! 今ならまだ、自分ので歩いて逃げられるが残されている! 命よりい期など、が社には分たりともせん!」

野はマイクを掴むと、所内斉非常放送のスイッチを叩き込んだ。 事業所全体に、けたたましい非常サイレンが鳴り渡る。

『全坑内作業員に通達! 本社保推部命令により、ただちに全作業を断し、指定の非常退避ルートよりへ脱せよ! 具はすべてそのに放棄しろ! 繰り返す、直ちに全退避せよ!』

午分、坑内百名の脱劇が始まった。 酒井は藤本とともに、坑の点呼台に仁王ちになり、退避名簿を広げた。 「斉にらせるな!」酒井が無線に向かって叫ぶ。 「狭い連絡斜坑でが将倒しになれば次災害になる! 第区画にい危険区域の班から順に隔を空けて脱させろ!」

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坑から、まみれになった作業員たちが、荒い息を吐きながら次々と吐きされてきた。 「第掘班、名全員脱!」 「第保守班、名確認!」

藤本がひとりの顔を睨みつけるように確認し、名簿に赤ペンで太い線を引いていく。、また。だが、午を回った頃、無線から切迫したノイズがび込んできた。

『――こちら第保全班! 主連絡が没してます! 井からが滝のように落ちてきて、元が腰のさまで埋まりかけてます!』

「第退避斜坑へ迂回しろ!」藤本が叫んだ。 「回りになるが、あそこなら盤がまだ保っている! 焦るな、のの背だけを見てめ!」

「分を惜しんで、悔するような真似は絶対にさせるな!」 野の声がに響き渡る。若の班たちが歯をいしばり、流に逆らいながら仲を誘導していく。

午分。退避完の数字は百を超えた。 だが、名簿の最を突きわせていた藤本の顔が、突如として蒼になった。

「……りん」 「誰だ!」酒井がを乗りす。

「第掘班の、佐藤だ! 歳の見習いだ! 具の片付けで第ポンプへ寄ると言ったきり、本隊と流しとらん!」

に絶望な空気が充満した。その、坑の奥から、今までで最も激しい落盤の爆音が轟いた。 『ドガガガガァァン!』 がきく縦に揺れ、坑から煙が噴きす。

取り残されたがいれば、もはや還は絶望とわれた。

「戻って探すな!」野が無線を握りしめ、叫んだ。 「誰か、現位置が分かる者はいないか!」

『――こちら太田!』無線から太田の必の絶叫がび込んできた。 『佐藤を見つけました! を挫いて倒れてました! 今、俺が背負って主坑をがってます!』

「太田!」酒井はマイクへびついた。「るな! 壁かられ、央の軌敷をれ!」

数分、暗の坑から、だらけの太田が若を背負い、よろめきながら朝のへ転がりてきた。が倒れ込むと同に、作業員たちが駆け寄り、を抱き起こした。

「百……百!」 藤本が名簿のに最の本の赤線を叩きつけ、絞りすように叫んだ。 「坑内作業員百名、全員の退避を確認! 誰残っておらん!」

の広から、歓声とすすり泣きが爆発した。 だが、その歓の真っ只で、だけ逆方向へ狂ったように駆けすがあった。

だった。

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