みかん小説
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"昭和20年、疎開列車から消えた弟の記録" 第9話

横浜夜学の封筒

横浜の夜学で、昭から毎、匿名の現留が届いていた。用途は戸籍や庭事で昼の学へ通えない青の教科代に限ると指定されていた。 彼女の胸にはりと期待が同に湧いた。それでも探している相のを、自分が望む結末へ押し込めてはいけないと何度も言い聞かせた。

差欄には所がなく、《正》とだけかれていた。封筒の文字は写真の裏きと似ており、同物の能性がかった。 証拠は劇な告ではなく、古いの端と消印、配番号の連なりとして現れた。千代はつずつ照し、推測と確認できた事実を別の頁へ記した。

元用務員は、に度だけ封筒を持参する男を覚えていた。代ほどで、古い作業を着てを隠す癖があり、事務へ入らず伝達箱へ置いて帰った。 正をる々も、自分の沈黙が責められることを恐れていた。千代は責任を軽くする約束をせず、見たことだけを話してほしいと頼んだ。

最の送は昭だった。には《名がなくても学へけるようにしてください》といがあり、その、寄付は途絶えた。 当の子どもには、族や教師の決定へ異議を唱える所がなかった。その均衡を理解しても、選んだの責任まで消えるわけではなかった。

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学周辺の簡易宿泊所を調べても、川昭も川正も登録されていなかった。港湾労働者は雇い名を使い分けることがあり、記録だけで個を追うのは難しかった。 千代は弟をれな子どものまま記憶していたが、資料のの正は自分で誰かを守ろうとしていた。らなかったが、しずつのとして形を持ち始めた。

千代は弟が自分の名をへ渡したあと、名のない者として暮らした能性をった。正は奪われた側でありながら、同じ境遇の若者へ学ぶ会を返そうとしていた。 千代はすぐに結論をさず、その言葉と付を帳へき留めた。戦の混乱を理由にすれば何もかも曖昧にできるからこそ、確かな事実だけを残す必があった。

夜学の帳簿には、寄付で買った鉛本まで記録されていた。匿名のを正に使わないため、教師が領収を封筒へ入れて保管していたのである。正と署名された封筒のには、炭鉱町で使われていた便箋もあり、川昭とのつながりを補した。

元用務員は男を呼び止めたことが度だけあった。謝状を渡そうとすると、男は《名をしたら困るがいる》と受け取らず、を着のポケットへ隠した。その困るがなのか、千代なのか、あるいはしい族なのかは、最まで語られなかった。

寄付の途絶えた昭には、港の規模な員理があった。男が町をったのか、病気になったのか、単に別の方法で支援したのかは分からない。千代は空を劇で埋めず、確認できないと記した。

その事実は居所を示さなかったが、弟のが失踪ので止まっていないことを初めて証した。

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