"昭和天皇がマッカーサーに告げた「責任」" 第9話
法廷の検事席の央に座る連国軍首席検察官、ジョセフ・キーナンは、分い起訴状の束をに、連を抱えていた。 ワシントンからの圧力は、依然として凄まじかった。 特にソ連代表のノーソフ検事、ならびにオーストラリア代表のウェッブ裁判は、面でキーナンを執拗に追い詰めていた。
「キーナン首席検事、なぜヒロヒトの召喚状にサインしないのだ!」 裁判控で、ウェッブは机を叩いて迫った。 「本帝国憲法第条および第条を見ろ! 皇は統帥権を総攬し、陸軍を統帥する元帥だ! 真珠湾の攻撃も、條以の軍たちが勝に始めたのではない! 皇の勅許がなければ発の銃声すら鳴らせなかったはずだ! 彼を起訴しないのは、法正義に対するな裏切りだ!」
キーナンはたいで喉を潤し、眉を指で揉んだ。 「ウェッブ裁判、法律論だけでは国の統治はできない。……貴方は、本各の巡幸の映像を見たか? 国民は、彼が戦犯として処刑されることを決して望んでいない。もし彼を絞首刑の台にたせれば、この国で何が起きるか像できるかね?」
「司法は政治の具ではない!」
法廷のでは、さらに卑劣な謀がしていた。 ソ連の作員たちが、巣鴨プリズンに収監されている條英ら軍部首脳に対し、「法廷で『全ての戦責任は皇にあった』と証言すれば、刑を免除し、終刑への減刑を連国に働きかける」
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という裏取引を持ちかけていたのだ。
旬の夜、キーナンは単、第命館のマッカーサー執務を訪れた。
「元帥、限界です」 キーナンは辞表を胸ポケットに忍ばせながら、沈痛な面持ちで切りした。 「オーストラリアとソ連が、最終判決のに皇の戦争責任に関する『補起訴状』を提する構えを見せています。條のから言でも『皇の命令でした』という証言がびせば、もはや法務に庇いきることは能です」
マッカーサーはパイプをくわえたまま、ちがらなかった。 窓の、初の夜に揺れる皇居の濠を見つめ、静かに告げた。
「キーナン。君は、巣鴨の條と直接対決したかね?」 「……いえ、まだ正式な尋問は終わっておりません」 「なら、ってこい。本の軍というものが、自らの保のために主君を売るような男たちかどうか、君自の目で確かめてくるがいい」
マッカーサーの差しは、あのの会見の朝と同じ、揺るぎない確信に満ちていた。
昭、夜。 たい鉄格子の苦しい臭気がち込める、巣鴨プリズンの特別接見。
机を挟んで、首席検事キーナンと、かつての本帝国首相・條英が対峙していた。 自殺未遂の傷跡が痛々しく残る條は、粗末な囚を着ていたが、そのは剃刀のように鋭く研ぎ澄まされていた。
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キーナンは、あらかじめ用していた英文の取引文を机のに滑らせた。
「條被告。率直に言おう。連国のには、貴方の命を救おうと考えている勢力がある」 通訳を介して、キーナンの言葉が伝えられる。
「この調に署名し、戦決定における皇の主導役割について証言したまえ。『自分は軍部を抑えきれず、皇陛の最終決断に従っただけに過ぎない』と。そう証言すれば、貴方の絞首刑は回避される能性が極めてい。……取引だ」
條は類に瞥もくれなかった。 ただ、く笑い、背筋をピンと伸ばして座り直した。
「キーナン検事。貴方は、武士という言葉をごじか」
「……何?」
「々臣が、自らの命を惜しんで、陛に罪をお着せすることなど、が裂けても絶対にあり得ん」 條の声は、く、鋼のように固かった。
「戦の責任は、すべて私にあります。統帥部、陸軍省、内閣の輔弼(補佐)の任にあった私が、無能のゆえに事態を戦争へと導いてしまった。陛は、最の最まで平を望まれ、戦夜の御会議におかれましても、治帝の御製をお引きになり、『方のみなはらからとふ世になど波のちさわぐらむ』と詠まれ、戦争を回避しようと涙を流されたのだ」
條はを乗りし、キーナンの青い瞳を真っ直ぐに射抜いた。
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